最弱テイマーは魔物の王と無双する

ゆる弥

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60.来週まで鍛錬

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 来週に抽選会を控え、昨日まだまだ自分が未熟だと知った。
 今日から1週間、自分を鍛える。
 もちろん、蘇芳には手伝ってもらう。
 という事で、湖のほとりに3人で来ていた。

「蘇芳、組手やってくれ。俺は人魔一体を閉じてやる。俺が死なない程度に痛めつけてくれ」

『ドMってことだね! オッケー!』

「いやいや、まぁ、間違っちゃいないけどその一言はいらなくない?」

『わかったよ。やろ?』

 まず、人魔一体を閉じる。
 身体がズシッと重くなったように感じる。

『フッ!』

 蘇芳の右ストレートを咄嗟に右にかわすが、頬をかする。少しかすった所に赤みが差す。

 今度は左フックが来る。
 バックステップで避けると、前蹴りを放ってきた。
 死角からの攻撃により、反応が遅れる。
 咄嗟に手を交差させて受け止める。

ドスゥッッッッ

 踏ん張りが効かずに後ろに追いやられる。

 いってぇ!
 両腕がジンジン痛む。
 両手をブラブラさせて痛みを和らげる。

『結構強い一撃だったけど、耐えたね? もっと吹っ飛ばす気だったんだけど』

「舐めんな!」

 その言葉と同時に駆ける。
 意表をついて足払い!

 すると、意表をついたつもりがピョンッと避けられる。

 あれ?
 これヤバ────

ズドォォォンッ

 ヤバいと思った瞬間に身体を回転させておいてよかった。
 すぐ横に蘇芳の足がある。
 跳躍して真下に来た瞬間に踏み付けたのだ。

 これ避けてなかったら死んでたぞ!?
 こっちは頼んだ身だ。なにも言えない。

 転がって距離を取り立ち上がり、こちらも回し蹴りを放つ。
 ガシッと掴まれてぶん投げられる。

「うおっ!」

 何とか体制を建て直して着地する。
 逃げてちゃ鍛錬の意味が無い。

「うぉぉぉぉぉぉ!」

 突っ込んでいく。
 大きく右拳を振りかぶり駆ける。
 蘇芳は受ける準備をしている。

 ふっ。
 これはフェイントだぁぁぁぁ!

 振りかぶった拳はそのままに飛び膝蹴りをお見舞する。
 横から来ると思っていた蘇芳は反応に遅れ、膝蹴りをくらってしまう。
 が、無傷であった。

 こういうところでステータス差が出るのだ。
 やはり、ステータスは馬鹿にできない。高いことで恩恵を受けることの方が多いのだ。

『やったなぁぁぁぁ』

 ここから白熱した組手が休憩を挟んでだが、6時間程行われた。
 流石の蘇芳も疲れたようだ。

『うがぁぁぁ。素のステータスの翔馬にこんなに翻弄されると思わなかった!』

「いや、蘇芳が手ぇ抜いて─────」

『僕はね、途中から手は抜いてないよ? 真剣に組手してたもん。翔馬の上達が凄まじいんだよ。やっぱり一皮剥けるってこういう事を言うのかな?』

「そうかな? 俺にはイマイチ分かんねぇんだよなぁ」

『明日は一斗とでしょ?』

「そうだな。どういう鍛錬にするか考えてるとこ」

『じゃあさ、ひたすら魔法を切るってどう? 魔力の消費を抑える事にも繋がるし、魔法を回避する練習にもなる』

「うん。いいかも」

◇◆◇

 次の日

「翔馬さん、ホントにいいんですか?」

「あぁ。ひたすら魔法を俺に打ってくれ」

「まぁ、翔馬さんがいいなら……」

『ここに、魔力回復薬沢山あるから!』

「どんだけ魔法打たせる気なんですか?」

 そう言いながらも杖を構える顔は真剣だ。

「行きますよ? 雷撃!」

「フッ!」

 魔法を切り裂く。

「雷雨」

バリバリバリバリバリッ

「ほっ! ふっ! はぁ!」

 落ちてくる雷を避けたり切り裂いたりしながらなんとか避ける。
 目の前に一斗がいた。

「せいっ!」

 咄嗟に腕を交差させて防御する。

『あーー。惜しかったね。一斗?』

「ですねぇ。まさか、これに反応されるとは。ヤバいですね? 翔馬さん」

「仕組んだの蘇芳か?」

『実践的でしょ? 魔法にかまけてると目の前がおざなりになるからね』

「上等だ! かかってこいや!」

 この日も休憩を挟みながらだが、6時間鍛錬した。

「はぁぁぁぁぁ。これ、自分もしんどいんですけど……」

『一斗にも良い鍛錬になっていいねぇ?』

「そうだぞ! 俺ばっかりやられてちゃ意味ないからな!」

「でも! 途中から攻めてくるとか酷くないですか!? 翔馬さんが言ったんですよ? 打って来いって!」

「でも、俺が攻撃しないなんて言ったか? 言ってねぇよなぁ?」

 一斗が両手と両膝をついて愕然とする。

「この人たち酷い……」

「お前の為だ。諦めろ……」

『そうだよ? 一斗。諦めて翔馬の鍛錬人形と化すんだ』

「いやです!」

「冗談だって……飯食おう」

 適当に屋台で食べるのが最近の日課になっていた。店で食べてもいいのだが、汗臭いし砂だらけだしで申し訳がないのだ。

◇◆◇

 次の日。

 この日は基礎体力をつける。
 やることは単純だ。
 この広い湖を一周する。
 当然、人魔一体を閉めた状態でだ。

 これ、1日かかった。
 逆に言うと一日でよく終わったなと思う。
 それだけ広い湖なのだ。

 ここ最近ずっと人魔一体のスキルを閉じている為か段々この状態にも感覚が慣れてきた。
 力が強くなっている気がする。
 自分のやっていることは無駄じゃない。そう言い聞かせてやっているのだ。

◇◆◇

 この日も蘇芳との鍛錬にしようと思ったのだが、蘇芳の提案でさらに過酷になった。

『一斗! 離れたらタイミング合わせて魔法打って!』

「わかりました!」

 そう。2対1であった。たしかにこれは効果があるだろう。
 ずっと攻められるのだから。
 でも、俺だってやられっぱなしではいられねぇ。

 ドンッという音と共にすぐ側に蘇芳がいた。
 咄嗟に後ろに下がるが、更に踏み込んでくる。
 上から放たれる打ち下ろしのストレート。

 よく見てすんでのところで首を逸らして躱す。

 おかえしじゃぁぁぁ!

 アッパーカットを放つ。
 手応えがない。
 いつの間にか蘇芳が下がっていた。

「雷雨」

 ここで面の攻撃かよ!
 鬼かよ。

「うらぁぁぁぁ!」

 拳に魔力を纏わせて魔法を打ち砕く。
 この技は拳闘士の職業なら容易いはずだが、他の職業の者がやるとなると話が違くなるだろう。
 落ちてくる雷全てを打ち砕いている。

『えぇ? 翔馬がデタラメなことしてる』

「なんか翔真さん、異常な事になってません?」

『もしかしたら素の状態を鍛えたことで人魔一体を使っている相乗効果でステータスがあがっていふのかもしれない』

「そんな事ってあるんですか?」

『うーん。分かんないんだよね。テイマーの職業って研究もされてないし、誰もそこまで極めた人っていないから。いうなれば、翔馬が第一人者みたいな感じだよね……』

 そんな事を言われているとはつゆ知らず、アドレナリンの出が出ているためイケイケ状態だ。

「どうした一斗! もっと打ってきてみろ! かかって来い! 蘇芳!」

「雷撃!」

「オラァ!」

 魔力を込めた拳で打ち砕く。
 蘇芳が目の前にいるが足に魔力を纏わせ、上段蹴りを放つ。

『ぐっ!』

 畳み掛ける。
 足を引いた勢いを利用して回し蹴りを放つ。

バギッ!

『ぐっ! 今の効いたよ? お返しだぁ!』

 同じように上段蹴りを放ってくるが読んでいた。
 咄嗟にしゃがんで躱し、足払いをする。
 ドデンと転ぶ蘇芳。

 トドメだ!
 拳を振り下ろ─────

「雷撃!」

 このままだと当たる。
 咄嗟に体を捻って離脱する。

 少し距離をとる。
 焦っていたのは蘇芳であった。

 こんなに人間に追い詰められるなんて……
 翔馬、一体どうなったわけ?
 人間ってこんなに成長するものなの?

 少し止まった蘇芳を見て今だ!とばかりに肉薄する。
 しかし直立のまま突撃した。
 意表をついた、頭突きだ!

ゴスッ!

 蘇芳に頭突きをかましてやった!
 なんか調子いいな。
 からだが全然軽い。
 能力閉じてるはずなのに不思議なもんだ。

 実は人魔一体を使っていない状態で鍛えたりしていた為、素の筋力が上がり、それに付随してステータスがあがったのだが。
 その状態でダンジョンにアタックしたことで人魔一体を使った状態も経験した肉体がその動きに合わせて成長したのであった。
 今この時、肉体スペックが人魔一体のステータスに追いつきつつあった。

現在のステータス
――――――――――――
NAME:真仲翔真
LV:38
ATK:952
VIT:912
DEF:936
MND:999

テイム中
NAME:蘇芳
ATK:9999
VIT:9999
DEF:9865
MND:3569
――――――――――――
 
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