最弱テイマーは魔物の王と無双する

ゆる弥

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55.父の行方

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 そのグローブを発見してからというもの、何も考えられなくなった。
 帰路に着いた時もほぼ何にも覚えていない。

 宿をとるなり部屋に籠りグローブを抱えてベッドに入って蹲っていた。
 部屋は自分で三部屋とってみんなバラバラの部屋にした。

 誰にも関わって欲しくなかった。
 このグローブは確かに父さんのグローブだ。
 あそこのダンジョンにあったってことは……。

 何があったんだろう。
 あそこは確かに物量に物をいわせていて普通の解放者には辛いだろう。
 俺達は蘇芳がいたから助かったようなものだ。

ドンッドンッ

「翔真さん? 朝ご飯たべませんかー?」

 グルグルといろんな事を考えていて、知らない間に朝になってしまっていたようだ。
 今はご飯は食べたくない。
 俺の事は放っておいてくれ。

「自分達ギルドに行って換金してきますからねー!」

 金の亡者め。
 金が欲しいから換金して来るんだろう。
 こっちはそれどころじゃないんだよ!
 父さんがあそこで死んだ痕跡があるんだ!
 落ち込んでるんだよ!

 ドタドタと去っていく音がする。
 このままだと旅の目的はもう終わった。
 ここで一斗ともお別れだな。
 蘇芳ともパートナー解消した方がいいんだろうな。

 蘇芳とのパートナーを解消するという事は、俺のステータスはまたゴミに逆戻り。
 こりゃまたバイト三昧だなぁ。
 しかし、磐当領に戻るには遠いしここらへんで良いバイト先があればいいけどなぁ。

 でも、父さんのグローブはあったけど、母さんの衣類とかは何もなかったなぁ。
 母さんは生きているんだろうか。
 父さんだけ犠牲にして逃げたりするかな?

 父さんが囮になった可能性もある。
 だとすると母さんは生きているかもしれない。
 でも……希望を持つとそれだけ今回みたいに遺留品を見つけると気持ち的に落ち込んじまうしなぁ。

ドンッドンッ

「翔真さーん! ちょっと話しませんかー?」

 話し掛けてくれるのはありがたいが、お前達には俺の気持ちはわかんないだろ?
 しばらく無視していると。

「このまま話しますよー?」

 返事をしないがまだそこにいるような気配はする。

「ギルドであのダンジョンに潜った人の記録を調べて貰ったんですよー。そしたら、空翔ける翼というパーティは潜っていませんでしたー。で、潜ったパーティの中に、翔真さんと同じくらいのCランクパーティが調査依頼で潜ったみたいで、帰ってこなかったそうなんですよー。詳しく聞いてみたら、空翔ける翼というパーティから面倒見てもらってたようです。お下がりのような感じで装備を貰って活動していたそうですよー?」

 ガバッと起き上がって扉に歩いていく。
 バッと開くとそこには一斗と蘇芳が立っていた。

『ようやく出て来たね。ギルドで聞いてみてよかったよ』

「その話は本当なのか?」

「はい。ギルドマスターと受付嬢の二人の上限ですから、まず間違いはないでしょう」

「そうなのか。じゃあ、このグローブは……」

「はい。お下がりをもらったという若いパーティのものでしょう」

「若いのに死んじまったんだな」

「そうなりますね。よかったと大きな声では言えないでしょう。しかし、自分の父親ではないことがわかったんです。気持ちが軽くなったのではないですか?」

「蘇芳、一斗、すまなかった。ありがとう」

 深々と頭を下げて礼を言う。
 俺はいいパーティに巡り会えた。
 俺が腐ってちゃダメだな。

『お昼だし、ご飯食べない? 食べながら話をしよう』

「おう!」

 急に元気になってしまった。
 現金なやつだと思われるだろうが隠してもしょうがない。
 これが俺なのだ。

 1階の食堂でご飯を食べることにした。
 3人で日替わりランチを頼み話を進める。

「まず、情報として確実なのが、あのダンジョンにはRランクは潜っていないということ。翔真さんのお父さんはRランクでしたよね?」

「あぁ。聞いた話によるとそうだな」

『それに、あそこは物量で押すタイプ。個々は弱いからRランクがやられるはずはない』

「そう思って情報を集めてみたわけですよ」

「そうだったんだな。ありがとな。2人とも」

「いいんですよ。あんなに落ち込んだ翔真さんはもう見たくありませんからね」

「あぁ。あれは俺が悪かった。突然のことで心の整理がついていなかったんだ」

『でも、お父さんが訪れていた、という手がかりを得られた。やっぱり塔狂領に行ったみたいだね。ギルドマスターが塔狂領に向かうという話を聞いていたみたいだよ?』

「そうか。父さん達が通った所を通って南下しているんだな」

「そうですね。ここの後は湖を見に行くと言ってたようですよ?」

「湖?」

『そう。南西に向かうと否和城湖っていう所があるみたいなんだ。そこを見に行ったんだって』

「じゃあ、俺達もそこを見に行ってみよう。何かわかるかもしれない」

「そうですね!」

 料理が運ばれてきたところで会話を終えて食べる。
 宿の昼の日替わり定食は生姜焼き定食であった。
 ショウガとニンニクの香りが食欲を誘う。
 昨夜と朝ご飯を食べていなかった為、三杯もご飯をおかわりしてしまった。

「あぁぁー。腹一杯食ったなぁ」

『翔真も元気になった事だし、出発する?』

「そうですね! 翔真さん、どうですか?」

「そうだな。出発しよう!」

 宿を引き払って西に進むことにした。
 ギルドに挨拶に行く。

「俺達、これから旅立つことにしました」

「そうなんですね! この度は、大規模ダンジョンを攻略して頂いき、ありがとうございました! おかげで支出を少なくできたので、なんとか経営が続けられそうです!」

「おぉう。そんなに、不味かったのか?」

「そうなんですよ……まぁ、大規模ダンジョンのコアの支払いしましたけど、売るのはそれ以上で売れそうなのでなんとかなりそうです!」

「なら、よかったな? じゃあな!」

「はい! ありがとうございました!」

 行こうとすると奥からギルドマスターが出てきた。

「声が聞こえたから来てみれば、もう出るのか?」

「はい! 湖に行ってみたいので!」

「おぉ。そういえば、あの空翔ける翼のリーダーの息子なんだって? あのパーティーを探してるらしいな? たしか何年か前に……」

「はい。死亡したと通達がありました」

「だよな? もしかして、何か生きてるかもしれないという確証があったのか?」

「いえ……ただ、何となく生きてるような気がして……」

「そうか……見つかるといいな。アイツらは良い奴だった。お前も良い奴だが、アイツらもこの町を助けてくれたことがあったんだ」

「そうなんですか……」

「そうだ! もし、アイツらに会えたら、連れてきてくれないか? ちゃんと礼を伝えたいんだ」

「分かりました! 見つけた時には必ず、連れてきます!」

「あぁ。頼んだぞ? 気をつけてな? 最近ミミズみたいな刺青をしたヤツらが変な動きをしてる様だ」

「俺もそいつらには遭遇しました」

「話に聞く限り、異常な行動が多い。命を落とすなよ?」

「分かってますよ! じゃ!」

 手を振ってギルドを出る。

『翔真、やっぱりあの刺青のヤツらはヤバそうだね?』

「だな。遭遇したら殲滅しねぇとな?」

 これからの旅路に不穏な空気が流れていた。
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