最弱テイマーは魔物の王と無双する

ゆる弥

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52.ナイスタイミング

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 いつも聞き流していた世界の声が聞こえた。

――――――――――――
レベルアップ確認。
ステータスが上昇します。
レベル20に到達。
新たな能力を付与。
――――――――――――

『翔真! 少し魔力が戻った! いけるよ!』

 俺は体力が限界だ……。
 新能力は?

――――――――――――
テイマー能力
・人魔一体
・感覚共有
・魔力共有
――――――――――――

「蘇芳! あと頼むわ……」

 ありったけの魔力を蘇芳に流し込む。
 体力の限界で倒れ込む。
 視界にりんごの木トレントがユッサユッサと揺れて小型トレントを解き放っている。

『翔真、流石は僕のパートナーだね! その根性見せてもらったよ! あとは任せて!』

 大太刀の先端をりんごの木トレントに向け、大太刀を引き絞る。
 全身に魔力を巡らせ最大の出力を出す準備をする。
 足に力を溜め、一気に解き放つ。

 一瞬蘇芳を見失った。
 瞬きした時には50メートルほどあった距離がゼロになっていた。

『終わりだ! 【曼珠沙華(まんじゅしゃげ)】』

 全ての集約された魔力と運動エネルギーとステータスによる力が一点に突き刺さる。

ドバァァァァァンッ

 突き刺さった瞬間、放射状に斬撃が広がっていく。
 まるで曼珠沙華の花を思わせる斬撃であった。
 りんごの木トレントは灰となって消えていった。

 周りにまだ小型トレントがいた。
 しかし、蘇芳は落ち着いている。

『フンッ』

 魔力の斬撃が小型トレントを一掃していく。

「流石……蘇芳。一瞬だったな」

『翔真立てる?』

 手を差し伸べてくれる蘇芳。
 手を掴み何とか立ち上がる。

「何とか歩けるかな」

「あーよかったですぅ。自分も魔力無くなっちゃってどうしたらいいかと思ってました」

『一斗は歩けるね?』

「はい! 体力はまだあります!」

『じゃあ、行こうか』

 蘇芳の手を借りながら歩く。
 奥の部屋に行くとダンジョンコアがあったが、今までより大きいコアであった。
 バランスボールくらいあるだろうか。
 この大きさは持って帰るのも大変である。

「蘇芳、異空間に入れてくれるか?」

『うん。嵩張るもんね』

 ズズッと異空間に入れる。
 すると、地上に転移した。
 辺りはもう暗くなっていた。

「ふぅ。なんとかなったな」

『ホントに危なかったのと、油断は禁物だって事が改めて認識できたね?』

「あぁ。すまない。ダンジョンはそんなに気軽に潜れる所ではないって事を再認識した」

「そうですね。次はちゃんと準備して潜りましょう!」

「あぁ。とりあえず近くの町に戻ろう」

『オッケー!』

 トボトボと戻っていく。
 走れなかった為、来た時の3倍の時間がかかってしまった。

 町に着いた時にはほぼ店が閉まっていた。
 宿をとり、ご飯が食べれるところを探す。
 飲み屋しか開いていなかった。
 適当に食事を済ませて宿に帰る。

 泥のように眠るのであった。

◇◆◇

 目が覚めると窓から差し込む日が高い気がする。
 昼になっていた。
 今日はギルドに報告に行かなければならない。
 準備してギルドに向かう。

 ギルドに入るとガランとしていた。
 昼は皆が活動している時間なのであまり解放者はいない。

「ダンジョン攻略の報告に来ました。あと、そのダンジョンの中で遺留品と思われるものを取得したので提出したいです」

「はい! 解放者の方ですね? 遺留品と言うことですが、何処のダンジョンで発見したのでしょうか?」

「この町から南西に行ったところにあるツルが絡みつくような森にあったダンジョンです」

「えっ!? 中に入ると下から攻撃されるっていう謎のダンジョンですか!?」

「あぁー。たぶん合ってると思います。正確には木の幹で攻撃されていたんですけどね」

「本当に攻略されたんですね。大規模ダンジョンだと言われていたんですが……コアはありますか?」

「ここに出していいですか?」

「あっ、はい。どこにありますか?」

 受付嬢は少し疑っているようだ。

「蘇芳、ここに出してくれ」

『オッケー』

 ズズッとダンジョンコアと遺留品を出す。

「これ、コアでこっちは遺留品です」

「ホ、ホントに攻略してる! だれかー! 大規模ダンジョンの攻略された方が遺留品とコアをお持ちです! 手伝ってくださーい!」

 ゾロゾロとギルド職員がやってくる。

「大規模ダンジョンってホントか?……うおっ! でけぇ! こりゃ確実に大規模ダンジョンだな!」

「凄いな。この町の解放者達は諦めかけていたはずだが?」

「他の領から来た方のようです。しかし、実はランクが……」

「ん? 何か問題があるのか?」

「Dランクなんですよ」

「なに? 何故潜るのを許可した!?」

 受付嬢に上司らしき人が怒鳴っているのを見て割って入る。

「あっ! すみません! 実はギルドに寄って情報を集めないでダンジョンに潜ってしまったんです。こちらの落ち度です。すみませんでした!」

「そうだったのか。今回は無事に攻略できたから良かったものの、全滅してたら行方不明者になっているところだよ?」

「はい。反省してます」

「ギルドマスター、その辺でいいんじゃないですか?」

 受付嬢が間に入ってくれた。
 この上司らしき人はギルドマスターだったらしい。

「うむ。そうだな……よし。この方達はCランクにしよう。大規模ダンジョンを攻略したんだ。実力的には問題がない。更に、Cランクであれば大規模ダンジョンに潜ってもなんら問題は無い」

「俺達が悪いのにいいんですか?」

「私達は大規模ダンジョンを確実に攻略してもらう為にAランク以上の解放者に攻略してもらうよう要請していたんだ。それがなくなるから予算も浮いたし、こぅちは大助かりなのだよ」

「なら良かったです。この遺留品はお預けしますので、遺族の方にお返しください」

「あぁ。すまないな。助かるよ。危険なダンジョンだっただろうに良くそこまで気が回ったな?」

「実は宝箱とかがまとまった所にありまして、その中に遺留品も……」

「なるほど……ありがとう。宝箱の中身だけ持ってくればよかっただろうに、遺留品まで持ち帰ってきてくれただけでありがたい。遺族に代わって礼を言うよ。ありがとう」

「いえ。解放者の無念を少しでも晴らせたらいいなと思ったので」

「うむ。では、手続きの方を進めよう。頼む」

「はい! ギルドカードもう一度借りていいですか?」

 受付嬢が再びカウンターの中に戻る。
 ギルドカードを渡すと手続きをし始めた。

「あっ、もう一方パーティーメンバーの方もギルドカード出してください!」

「はい! お願いします!」

 少し待つと、手続きを終えた。

「はい。これで、神代の鞘はCランクパーティーとなりました! えー、相模一斗さんもCランクになりました! これは、大規模ダンジョンをクリアした為、特例の措置となります!」

 目を見開いている一斗。

「自分が……まさか、Cランクになるなんて」

「よかったな一斗」

「あと、遺留品をお持ち頂いたので、特別手当をお付けします! まず、大規模ダンジョンコアですが、これはカードに直接になりますので分配を決めてください!」

「一斗と半分だ」

「翔真さん! それはダメですよ! 蘇芳さんのおかげて勝てたようなもんですよ?」

「いや、俺と蘇芳は2人で1人だ」

「でも!」

「いいんだ」

「……わかりました」

 一斗が食い下がった。

「では、コアは1億2000万です! そして、遺留品の報酬額が1000万です! 分配はどうしますか?」

「はんぶ──────」

「コアは半分でいいですけど、遺留品は翔真さんに入れてください!」

「一斗……」

「これは、譲りません!」

「わかったよ……サンキューな」

「では、そのようにギルドカードに入れておきます」

 手続きが終わると、ギルドマスターが遺留品とコアの検査を終わるとやってきた。

「折り入って相談があるんだが……」
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