最弱テイマーは魔物の王と無双する

ゆる弥

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43.若女将のおもてなし

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「お帰りなさいませ! お待ちしておりました! 夕飯の準備が出来ておりますので、大広間へどうぞ!」

 なんとか夕飯に間に合ったようだ。

「有難う御座います! 着替えたら行きます!」

「はい! お待ちしております!」

 急いで着替えて大広間に行くと。

 なんと豪華な食事が用意されていた。

「おぉー! すげぇ豪華! こんなに豪華なのいいんですか!?」

「はい! 皆さんのおかげで私達助かりましたので、少しばかりのお礼です!」

「自分、こんなに豪華なご飯食べたことないです!」

『メッチャ美味しそうだね! 僕もアイツらを痛めつけたかいがあった!』

 席に着くと早速食べる。

「「『いただきます!』」」

 色んな種類の刺身の舟盛り。
 しゃぶしゃぶ。
 すき焼き。
 小鉢が数種類。
 酒も用意されている。

「かんぱーい!」
「かんばいです!」
『かんぱーい!』

 グビッグビッと半分くらい飲み干す。

「っかぁぁぁっ! 美味い! やっぱり一仕事した後のビールは美味いわ!」

『翔真、おっさん臭いよ?』

「翔真さん飲みなれてますよね? 成人して1年位しかたってないのに」

「これまで色んな飲み会に参加したからさ。テイマーで下っ端扱いが多かったからバイト先の幹事やったりさ、酒飲んで酔っ払って盛り上げたりさ。結構やってたからそりゃ飲み慣れるわ」

「翔真さん、苦労したんですね……」

 涙目になっている一斗。

「なんか変な空気になってんじゃねぇか! やめろよ! 楽しく飲むぞ!」

 肉にはサシが入っていて美味しそうだ。

 しゃぶしゃぶから手をつける。
 だし汁に肉を潜らせ、ポン酢を付けて口に運ぶ。

 口の中に肉の旨味が広がり、出汁の風味とポン酢の酸味が絶妙なバランス。

「はぁぁぁ。これは美味いわ」

「良かったです! いっぱい食べてくださいね!」

 いつの間にか横に来ていた若女将。
 グラスにビールを注いでくれる。

「あっ。すみません。注いで貰って……」

「いいんですよ! ウチの宿の英雄なんですから!」

「英雄?」

 凄く大きな話になっている気がする。
 アイツらボコボコにしただけなのに。

「聞きましたよ? あの人達の親玉捕まえてくれて、更にギルドがダメだったからちゃんとした人を派遣するように千大町に掛け合ってくれたんですよね!?」

「はい。よく知ってますね……」

「その噂でもちきりなんですよ!?」

「そうなんですね。知らなかった」

「昨日助けられた給仕の子も張り切っちゃって! さっきから飲みのもとか持ってきたくてウズウズしてるみたいですよ? 何が頼んであげてください」

 若女将がそう言ったのを聞いていて真っ先に隣で手をあげたやつがいる。

『ガウガガーウ! ガウ、ガウガウガ!(すみませーん! 僕、日本酒で!)』

 若女将が困惑している。

「あのっ、すみません。なんて仰ったんでしょうか?」

「ですよね! すみません! 日本酒が欲しいらしいです」

「畏まりました! 少しお待ちくださいね?」

 蘇芳に向かってちゃんと話してくれている。

 やっぱり優しい。
 この宿の人は良い人ばかりだ。

『あの人、凄い良い人だね! ちゃんと僕に話してくれたよ!?』

「あぁ! 良かったな! おっ! 来た来た!」

 升とグラスに一升瓶を持ってきてくれた。

「お待たせしました! どうぞ!」

 そういうとグラスに日本酒を注ぎ、溢れてもそのまま升一杯になるまで注ぐ。

『えっ!? グラスから溢れてるけどこんなに注いで大丈夫なの!?』

 給仕の女の子が不思議そうにこちらを見る。

「驚かせてすみません。これで合ってるのかどうか心配になったみたいで……」

「うちはこのやり方なんです! 沢山飲んでくださいね!」

 コクコク頷く蘇芳。
 グビッとグラスを煽る。

『うーん! 美味しい! これは辛口だね!』

「これ辛口なんですか?」

「そうです! でも飲みやすい方だと思います! よくお分かりになりましたね!」

 蘇芳に向けて言う給仕の女の子。
 蘇芳は徐にサムズアップする。

「気に入ってもらえて嬉しいです!」

 そういうと下がっていく。

「可愛い子だな? 蘇芳に話しかけてくれてさ」

 こちらを向いてサムズアップする。

「俺には喋れよ!」

 何も言わずグビグビ飲んでいる。

 ったく。
 気に入ったからか、めっちゃ飲むじゃん。
 どういう体してんのかわかんないけど、蘇芳は酔ってるとこ見た事ないから大丈夫だと思うけど。
 前になんか言ってたかな。
 忘れたわ。

「これ! 美味しいですよ!」

 一斗が興奮しているのは刺身だ。
 相当うまいみたい。

 パクッとマグロを一切れ食べる。
 口の中でとろける。

「これ、良いやつだよな!? すげぇとろけた!」

『行儀悪いよ! 良いやつとか言わない!』

「俺の母ちゃんか!?」

「ブフッ!」

 横を見るとビールを吐き出す。

「一斗汚ぇよ!」

「変なコントみたいなやり取りしないで下さいよ! 笑っちゃうじゃないですか!」

「お前、さっきのサムズアップのクダリ見て笑わなかったじゃねぇかよ?」

「なんですかそれ? 見てませんでした」

「『はぁぁ』」

「ちょっと2人して何なんですか!? 酷いですよ!」

 横目で宿の従業員さんを見ると笑いを堪えている様子であった。

 楽しんでもらえてよかったわ。
 少しでも笑顔になってくれてよかった。
 狙ってたわけじゃないけど。

「一斗! 良いからまず拭けよ!」

「プッ! あっ! おしぼりどうぞ!」

 給仕さんがおしぼり持ってきてくれた。

「あっ! 有難う御座います!」

 そうこうしているうちに、煮立ってきた。
 すき焼きがいい感じになってる!

 卵を皿に割ってかき混ぜる。
 肉とネギを一緒に掬って、卵に潜す。

 パクッと一口で食べる。

 口の中に汁の甘みと卵の甘みが合わさる。
 噛むほど出てくる肉の旨味。

「あぁ。これ美味しい。久しぶりに食べなぁ。すき焼き……こんなに美味かったかなぁ」

 ふっと昔久しぶりに帰ってきた両親が作ってくれたことを思い出す。
 懐かしい。
 ヤバいわ。
 涙でそう。

『翔真大丈夫?』

「あぁ。大丈夫だ。ちょっと昔を思い出しちまった」

『何昔ヤンチャしてたオジサンみたいなこと言ってんの? 早く食べないと肉固くなるよ?』

「おぉ。だな!」

 柔らかい肉を口に入れ、ご飯をかきこむ。
 あっという間にご飯が無くなる。

「ご飯おかわりくださーい」

「はい! どうぞ!」

 即座にご飯を持ってきてくれる。

「はやっ!」

「そろそろかなぁ? と思ってました!」

 斜め下から見上げるように見つめてくる若女将。

 か、かわいい。
 なんて破壊力なんだ……。

『翔真!』

「翔真さん! 自重してください!」

 あっ! 感覚共有ずっとやってるからか。
 もう慣れてきたんだよな。
 まぁ、良いか。
 コイツらにしか聞こえないんだし。

 いやぁ、ホントに可愛いんだよなぁ。
 助けてよかったわホントに。

「蘇芳さん、この人開き直りました!」

『諦めよう』

「これ、ホントに美味しいです!」

「お口にあってよかったです!」

 にこやかな笑顔。
 着物姿が似合ってる。

 あっという間に食べ終わってしまった。

「ご馳走様でした」

 他の2人も食べ終わっていた。

『はぁぁ。おなかいっぱい!』

「美味しかったですねぇ」

 幸福な顔をして大広間を出る。

「若女将、美味しかったです! 美味しいご馳走を有難う御座いました!」

「どういたしまして!」

 胸の前で手を合わせながらニコニコとお礼をしてくれる。

 か、可愛い。

「『ダメだこりゃ』」

 蘇芳と一斗に呆れられるのであった。
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