最弱テイマーは魔物の王と無双する

ゆる弥

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38.調意思町へ

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 お別れ会の次の日、準備を終えて3人はギルドに来ていた。

「茜。俺達は行く。また来たら顔出すから」

「うん。もう泣かない。いってらっしゃい!」

「おう!」

「また来た時は自分が翔真さんにちゃんと来るようにいいますから!」

「ふふふっ。ありがとう一斗さん」

 蘇芳も手を振って別れを告げる。

 振り返らないようにしながらギルドを出る。

 凄く寂しいが、ここで止まるわけにはいかない。
 必ずまた来るぜ。
 その時には、また飲もう。

 千大町を後にし、次の大きい町を探しに行く。

「翔真さん、本当に茜ちゃん連れてこなくて良かったんですか? あんなにいい子、他の男に取られますよ?」

「それでいいんだ。俺といるよりは幸せだろう」

「うーん。まぁ、たしかに今は目的があっての旅ですからねぇ。目的が無くなったら戻ってあげてくださいよ?」

「あぁ。ちゃんと顔は出すよ」

『他にも良い感じになった子がいるもんね? 一人には絞れないか……』

「ちょっ! お前!」

 ジィッと見られている。

「一斗、おれは別に各地で女を作ってるとかじゃないぞ! たまたまいい感じになったってだけで……」

「翔真さん……見損ないました」

「えぇ!? そんな事言うなよ! 俺は……まぁ、ちょっとモテてるなって思うけど」

「ハッハッハッ! そこまでいくといっそ清々しいですね!」

「そ、そうか?」

『翔真、褒めてないよ!』

「わかってるよ……」

「まぁ、翔真さん良い人ですし、顔も普通よりは良いですし? しょうがないですよね」

「おい。なんだ? その上から目線は!? コノヤロー!」

 一斗の首を絞めに行く。
 ヒョイッと笑いながら避けられる。

「魔法職のくせに身のこなしが素早いんだよ! コノヤロー!」

「はははっ! 最近の鍛錬のおかげじゃないですか?」

 笑いながら避け続ける。

『ほら、早く行かないと日が暮れちゃうよ? 人魔一体閉じて? 走るよ!』

「わぁったよぉ」

 能力を閉じて走り出す。
 それでもアスリート並の速さなんだが、能力発揮した時とは雲泥の差である。
 何せ高速道路を走る自動車並みの速さで走るのだから。

 3時間くらい走ると見えてきたのは大きめな町。
 何やら町全体から湯気が上がっている。

「なぁ、あそこの町湯気が出てないか?」

「本当ですね。何でなんでしょう?」

『行ってみないと分かんないね』

「行ってみよう!」

 走っていく。
 これだけ走ってたから体力付いたかな?
 あまり疲労感がないな。

 入口に門番の人が立っている。

「こんにちは。ここの町湯気が上がっているようですけど、大丈夫なんですか?」

「これはこれは、初めての方ですか? ここは温泉が湧いている街で、調意思町といいます。宿には温泉が付いていますので、是非ご堪能ください!」

「温泉?」

 疑問符が頭に浮かんでしまう。
 盛丘町から出たことがないから全然わかんねぇな。

「お風呂のことですよね? 聞いたことあります。お湯が地面なら湧いてくる地域があると」

「そうです! 気持ちいいですよ! 疲れも取れますよ!」

「一斗流石だな! よく知ってる!」

「いえ。ちょっと聞いたことがあっただけです。早速入りに行きませんか?」

「おう! 行こう!」

 町の中に入っていく。
 すると、着物のようなものを着ている人がチラホラ見える。

「一斗、あれはなんだ? 着物なのか?」

「あれは、浴衣っていうんですよ。地域柄、着る所があるらしくて」

 横を通った女の子達が湿らせた髪を上げて結い、浴衣で歩いていく。

 思わず目線が首筋にいってしまう。

「浴衣……いいなぁ」

「いいですよねぇ。浴衣」

『一斗もそういう事言うんだ?』

「言いますよ! 僕だって女の子好きですもん!」

『意外』

 だんだん早足になる。

「おい! 早く温泉入ろう!」

 慌ててついてくる一斗と蘇芳。

 どこもいい雰囲気で迷う。

「なぁ、どういう所が良い宿とかあるか?」

「そうですねぇ。こういうのは、古い感じのところの方が趣きがあっていいんじゃないですか? 部屋から見える日本庭園とか、外にあるお風呂から見る庭園とか池とか、鯉とか」

 頭に想像してみる。

 うん。いい。
 そこに女の子達が裸で……

『翔真! 自重しなさい!』

「あっ! 感覚共有繋いでたんだった!」

「翔真さん、ホントにしょうがない人ですね。でも、気持ちは分かりますよ?」

 サムズアップしてくる。
 お返しをする。

『ホントにこの人達は……』

「えっ、蘇芳さんて、なんて言うかそういうのってあるんですか? 異性的なの」

 顎に手を当てながら蘇芳に質問する。

『僕はないよ? 人間は人間。魔物はまぁ、同種っていう感じ? 子孫っていう概念が無いんだよね。僕が何故存在するのか、それは謎なんだ。突然生み出されたのか、誰かに生み出されたのか、それは分からない。気づいたら魔物の王だった』

「ふぅーん。不思議ですね」

『まぁ、そうやって生きてきたからよく分かんない。ただ、翔真とか一斗の反応を見ると面白いよ』

 そんな話を2人でしているのを聞きながら宿を探す。

 古い感じの宿を見つけた。
 昔からある老舗の雰囲気を感じさせながらも汚くない。
 ボロボロっていうこともない。
 綺麗な宿であった。

「なぁ、あそこどうだ?」

「おっ! いい感じですねぇ。あそこにしましょう! 空いてると良いですね」

 見つけた宿に行く。
 中に入るとエントランスが広い。
 休憩所のような所がある。

 カウンターを見つけてそこに向かう。

「いらっしゃいませ! 3名様ですか?」

 足音を聞いて出てきてくれたのは。
 目鼻立ちのクッキリとしいて、髪をお団子にした着物を着た若女将であった。

 わぁお!
 すげぇ綺麗な人。
 ここ当たりだな。

 蘇芳の視線が痛い。

 わかってるって、平静を装って対応するからそんなに睨むなよ。

「はい! 部屋は1つで良いんですけど、空いてますか?」

「はい! 空いております。和室になりますけど、宜しいですか?」

「はい! 大丈夫です!」

「では、これが鍵になります。温泉は夜中の0時から朝5時までは入れません。それ以外はご自由にご利用ください。タオルはお部屋にあります。浴衣はあちらにありますので、サイズを選んでお持ちになってください」

「わかりました! 有難うございます」

「あっ、そちらの方は浴衣着られますか?」

『えっ!? 僕が着れるようなのあるの!?』

「着たいみたいなんですけど、着れるのあるんですか?」

「はい! たまーに大きいからが居るので1着だけあるんです」

『着たい!』

「着たいそうなんでお借りしてもいいですか?」

「はい! 少々お待ちください!」

 奥に消えていく若女将。

『ねぇ、翔真さぁ、なんかセンサーとか付いてんの? 会う人会う人綺麗な人とか可愛い人ばっかり』

「いやー。日本って綺麗な人と可愛い人しか居ねぇんだな。旅してみて驚いたわ」

「まぁ、確かにみんなお綺麗だし可愛いですもんね。捨てたもんじゃない。日本」

 2人でサムズアップしていると、若女将がやって来た。

「これです。どうぞ!」

 巨大な浴衣であった。
 確かにこれなら蘇芳も入るかも。

「有難うございます!」

「お部屋は2階になります。温泉は1階に降りて来てもらって奥になります。女風呂と男風呂と暖簾が掛かってますので」

『僕性別ないから……』

「お前まさか許されると思うか?」

「蘇芳さんそういう感情無いのに性別ないから女風呂でもいいよねみたいな、そういうこと言うんですか?」

『冗談だよ。翔真達が言いそうじゃん? ノリだよノリ』

「お前が言うと冗談に聞こえない」

「しかも最強だから力ずくでは止めれないっていう」

『いや、行かないよ? 翔真達と入るよ』

「当たりめぇだ!」

 そのやり取りをニコニコ笑ってみている若女将。

「あっ、すみません! さっさと部屋に行きます!」

「ふふふっ。仲がいいんですね!」

「はい! パーティーメンバーなんで!」

 恥ずかしがりながら部屋に向かう。
 階段で2階に上がる。

 上がると長い廊下であった。
 歩きながら部屋番号をみる。

「あっ、ここだ」

 扉の鍵を開けて入る。
 入口横にトイレ。
 その先に和室がある。

 奥に行ってみる。
 すると、見えた外の景色に息を飲む。

「これは……すげぇな」

 想像してた以上に綺麗な日本庭園が広がっていた。
 池があり、鯉が泳いでいる。
 石が並んだ通路。
 りっぱな紅葉が何本もある。
 苔の生えた石達。

 一体何年の手入れでこの景色になったんだろう。
 素晴らしい景色だった。

「ホントに当たりだったな。一斗の言ってたことは正しかった」

「ですね。浴衣着て温泉入りに行きましょう?」

「おう! 行こう!」

 良い宿に泊まれた翔真達。
 温泉で疲れを癒す?
 トラブルの予感もするが……
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