最弱テイマーは魔物の王と無双する

ゆる弥

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25.大府等町へ

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宿を出ると、再び南下する為に準備する。

食料を買い、消耗品を買い。

「よぉし。行きまーす!」

『おぉー!』

 町を出ると歩きながら向かう。

 南の町へレッツゴー。

 少し歩くと走り出す。

『走るの?』

「次の町でちょっと休憩しよう」

『了解』

 結構な速さで走る。
 この速さだと1時間かからないかも。

 道中魔物が少し出てくるが、直ぐに倒して走り出す。

◇◆◇

 次の町に着いた。
 海の近くの町だった。

「飯食べよう!? 俺海鮮丼好き!」

 勢いよく町に入っていく。

 凄く賑やかな様子だった。

『今日なんかやってんのかな?』

「そうかもな! あっ! あそこに書いてる! 収穫祭だってさぁ!」

『収穫祭? ってなに?』

「んー? 知らん!」

ガクッ

『知らんのかい!』

「だってよぉ、俺のいた町にはそんなん無かったもん」

 様々な屋台が並んでいる。

「なぁ、屋台で買い食いしようぜ?」

『いいねぇ!』

 焼きそば、たこ焼き、からあげ、焼き鳥等など色々ある。

「あっ! あそこにマグロ丼の店がある! 買ってこよう!」

『えっ!? 待って! 僕も食べてみたい!』

 ピューッと走って行くと、後を追ってきた蘇芳。

「おっちゃん、2つ頂戴!」

「あいよ!」

 袋に2つ入れてくれる。
 一つ1000円だった。

「はい! 2000円!」

「はいよ! どうもね!」

 次の屋台に行く。
 何がいいなぁと考えながら見ていると、見つけたのだ。

「美味しそうな串焼き屋だ! いい香りがする!」

 香ばしいタレの匂いがそこらじゅうに漂っている。

「おっちゃん、いいっすか?」

「はいよ! 何にする?」

「えーっと、ネギまと、ももと、皮と、レバーと、砂肝を2つずつタレで下さい」

「はいよぉ! 少しおまちぃ!」

 焼いてくれている間、祭りについて聞いてみる。

「今日ってなんの祭りなんですか?」

「今日はねぇ、年に一度の豊作を願うためのお祭りってとこかな! 一週間祭りやるからねぇ。お兄さんは、初めて来たのかい?」

「はい! この町に初めて来たんです。そしたら、たまたまお祭りやってて」

「そりゃ、ラッキーだったな! 一年で一番活気がある日だから楽しんでいきな? ……はいよ! 串焼きお待ち」

「楽しみです。有難う御座います」

 串焼きを貰うと再び歩き出した。

「蘇芳はなんか気になるのあるか?」

『んーっとねぇ、あの白いフワフワのやつ食べてみたい!』

「あー。綿菓子か。一個買ってみるか?」

『うん!』

 謎の絵が描いてある袋に入った綿菓子を買う。

 蘇芳が綿菓子を持っている姿は、中々にシュールである。

「あっ。あそこに食べる用のブースがあるじゃん。座って食べよう」

 空いてる席を見つけて座る。

「よーし。マグロ丼食べよう」

『僕も僕も!』

「おう。待て待て。ほら」

 マグロ丼を一つ袋から出して蘇芳の前に置く。
 その上に醤油とワサビと割り箸を置く。

『この黒いのと緑の何?』

「黒いのは醤油って言ってしょっぱいタレみたいなやつ。緑のはワサビって言ってツーンと辛いやつ。少しつけて食べてみ? 慣れると、付けて食べた方が美味しいって感じるんだよなぁ」

『付けてみる!』

 マグロにワサビを少しつけてその上から少し醤油をかける。

『いただきます!』

 ご飯と一緒に掬って、パクッと一口食べる。

『!?……あー! くる! けど美味しい!』

 残りのワサビをマグロにちょっとずつ付けて残りの醤油を全部上からかける。

「うん。その食べ方がいいと思うよ。俺もそうするし」

 同じようにワサビをつけて醤油をかける。

「いただきます!」

 大きめにすくって食べる。

 ツーンとくる辛さを感じながら目をつぶる。

 マグロの旨みが口で広がり、醤油とワサビがマグロの美味しさを更に美味しくしている。
 マグロが少し口の中でトロッと溶ける。
 
 あー!
 美味い!
 これ美味いやつだ!

 新鮮なマグロなのだろう。
 旨みが半端ない。

『ねぇ! お刺身って初めて食べたけど美味しいね!』

「あれ? 飲み屋で食べてなかったっけ?」

『いや、僕、なま物だからと思って食べてなかったんだよね……』

「あっ、そうなの? 美味いでしょ?」

『僕、クセになりそう』

「ハッハッハッ! いいじゃん。俺も刺身大好きだしさ、まだまだ日本を巡るんだから美味いのいっぱい食えるよ?」

『楽しみだなぁ! ねぇ、ここには何時までいる?』

「別に急ぐ旅じゃないから、祭りの間は居ようか?」

『やったね! 美味しいもの沢山食べようっと!』

「だな!」

 あっという間にマグロ丼は無くなり、串焼きに手を出す。

『これは、お肉だよね? これとこれ初めてなんだけど?』

 レバーと砂肝を指差して言う。

「だよなぁ。品に書いてあったから頼んだけど、どの部位だったかは忘れちゃったんだよな。レバーは少しモサッとするけどクセがある味が美味い。砂肝はコリコリした食感があって美味い。まぁ、美味いのさ! 食べてみ?」

 そう言われると食べて見たくなる。

 レバーを手に取って一口、口に入れる。

『あーーー。これ、ビールに合いそう』

「はははっ! その通り! これはめちゃめちゃ合うのだよ蘇芳くん!」

 今度は砂肝を一口食べる。

『うわぁーー。これも……』

 屋台に目をやり、何かを探している。

 少し遠くに何かを見つけたようだ。

 指を差しながら。

『ねぇねぇ、あそこにビール売ってる!』

「何処に?」

 指さした方向を見ると、たしかに奥にビールののぼりが見える。

「おっ! ホントだ! 待ってろ! 買ってくる!」

 店へダッシュする。
 席には蘇芳だけが、座っている状態になっている。

 すると、小さな女の子が近づいてきた。

「ねぇ、大きいお兄ちゃん? この椅子貰っていい?」

 椅子が四つあった為、いらない椅子があったのだ。

 コクコク頷く。

「ありがとう!」

 椅子を持っていく女の子を見てホッコリした気持ちになる蘇芳。

 何故、こういうタイミングで迷惑なやつはやって来るんだろうか。

 2人組の解放者風の男がやって来て席を探している様子であった。
 賑わっていて満席なようだったのだ。

 すると、蘇芳の席を見て笑ったのだ。

「おい! 魔物が席で飯食ってるぞ?」

ガシャーンッ

 テーブルが蹴り飛ばされて串焼きが散乱する。

 その場は騒然となった。

「魔物は地べたで食えば良いんじゃねえか?」

「だよなぁ? ハッハッハッ!」

「このテーブルは俺達が使ってやるよ」

「おら! 椅子もよこせよ!」

 蘇芳の座っている椅子も奪おうとする。

 すると、小さな影が前に出てきた。

「このお兄ちゃんは優しいんだよ? どうして意地悪するの?」

 両手を広げて蘇芳の前に立ちはだかった。

「あぁん? 何だこのガキ!?」

「どけよ! 痛い目見てぇのか?」

「意地悪しないで」

 その子の目は弱いものいじめは許さないと言わんばかりに強い意思が宿っていた。

「クソガキがどけよ!」

 足を振りかぶって蹴ろうとする。

 蘇芳が咄嗟に庇おうとするが間に合わない。

 女の子は衝撃を想像し、目をつぶった。

バギッ

 衝撃が来ないことに不思議に思い、目を開けると見たことない男が立っていた。

「お嬢さん、俺の相棒を助けてくれて有難う。勇敢な心を持っていて素晴らしい」

 なんか揉めているのが遠目から見えたのでビールを近くの人に持っててもらい、全速で駆けつけたのだ。

 ただ、蹴られた状態で放ったセリフだった為にちょっと締まらなかったが。

「なんだテメェ!? 邪魔すんじゃねぇ!?」

「痛い目見てぇのか!?」

「おかしな事を言うな? ここは俺が座ってた席だし、ここに居るのは俺の相棒だ。しかも、こんな小さい女の子を蹴ろうとするか? お前達それでも、命張って世界を救おうとする解放者か? 強さを履き違えてねぇか? お前達なんかより! この女の子の方がよっぽど強い!」

「う、うるせぇ!」

 顔に拳が叩きつけられる。

バキッ

「弱ぇ。痛くも痒くもねぇ」

ボゴッ

 もう1人のやつが前蹴りを放ってくるが、ビクともしない。

「効かねぇなぁ。弱い。弱すぎる。俺は、弱いものいじめはしない。立ち去れ」

「なんで効かねぇ!?」

「コイツ化け物だ! 行くぞ!」

 慌てて逃げていく男達。

 見えなくなると、女の子に向き直る。

「ありがとな。俺の相棒がおかげで助かった。あ、なぁ。パパとママは何処にいるかな?」

「あっち!」

 親のいるところに一緒に向かう。

「パパ! ママ!」

 先程の騒動を途中から見ていたようで焦っていた。

「菜々! なんて無茶なことするの!」

 母親が女の子に向かって叱る。

「怒らないで上げてください。おかげで俺の相棒が救われました。お子さん、弱いものいじめは許さないと果敢に庇ってくれました。勇敢な心をお持ちですね。御両親が素晴らしいからだと思います。本当に有難うございました」

『有難うございました』

 蘇芳も後ろで一緒に頭を下げている。

「いえいえ。逆に助けて頂いて有難う御座います! それより、大丈夫ですか!? 殴られていたり蹴られたように見えましたけど!?」

 父親が慌てたように心配してくれる。

「はははっ! 俺はピンピンしてます! あれくらいどうってことありません!」

「お強いんですね」

 にこやかに父親が言う。

「身体が丈夫なだけです。娘さんの方が強い。素晴らしい子に育つでしょうね」

「いやー。お転婆で。困ったものです」

「しかし、芯のある心を持っている。その心は御両親の教えあってこそだと思います」

「有難う御座います。この子を誇りに思います」

「では、俺達はこれで」

 着いてそうそう騒動に巻き込まれた2人。
 先行きが不安である。
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