最弱テイマーは魔物の王と無双する

ゆる弥

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23.華牧町の洗礼

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 赤い点の元へ向かうと。
 扉が佇んでいた。

「これ、割と深い感じのやつじゃない?」

『うーん。そうだねぇ。まぁ、チャチャッと攻略して次の町に行こうよ』

「へいへい」

ギィィィィ

 扉を開けて中に入る。
 太刀を前に構えながら進む。

「グゲゲッ」

「なんだ。ゴブリンか」

「「「「ゲゲゲッ」」」」

「おう。数で勝負ってかぁ?」

 それぞれ武器を持っている。
 一斉に襲いかかってくる。

「数が多くても知恵がねぇなぁ! フンッ!」

 太刀を横にして全ての武器を受け止める。

「オラオラ! かりぃぞ!」

 受け止めた武器を一気に弾き返す。
 一斉によろめくゴブリン達。

「シッッ!」

ズバババババァーンッ

 一気に切り裂く。

「はい! いっちょ上がりー!」

 先に進むと道の先が、ゴブリンで埋め尽くされていた。

「グゲゲッ」
「ゲゲッ」
「ググゲゲッ」

「数だけは一丁前に多いなぁ」

 愚痴をこぼしながら、進む。
 肩に太刀を担ぎながら突っ込む。

「ウオラァァァ!」

 一太刀で数匹のゴブリンを薙ぎ払い。
 返す刃でまた数匹のゴブリンを切り裂く。
 奥に奥に徐々に進んでいく。

「ふぅぅ。階段か」

 ゴブリンが途切れたと思ったら階段であった。
 降りると、見たことがある光景が。

「グゲゲゲッ」
「ゲゲッ」
「ゲゲグフッ」

「はははっ! 笑える。もしかしてずっとこれか? 数で圧倒できると思ったら大間違いだぞ?」

 ゆっくりと歩く。

「かかってこいやぁぁぁ!」

 突進していく。

 これを繰り返すこと40層。 
 ガーディアンの扉にきていた。

「ホンットにゴブリンしかいなくて飽きたわ。弱いし」

 扉の中に入ると。

「ゴガガガッ」
「グゲゲッ」

 ゴブリンキングと取り巻きのゴブリンであった。

「だよなぁ。最後はそうだと思った」

 ゴブリンキングをゴブリンが囲んでいる。

ダンッ

 一気に加速する。
 左に回り込み、ゴブリンを横に切り裂いていく。
 これで、ゴブリンはいなくなった。

「よぉ。取り巻きいなくなったぞ?」

「グガガガガッ」

 大きな斧を振り下ろしてくる。

ガシッ

 左手で受け止める。

「あぁ。なんか何処かで同じことやった気がする。よっ!」

スパンッ

 ゴブリンキングは動かなくなる。
 横を通り過ぎる。

「蘇芳行くぞぉ」

『うん』

 奥に行った頃に。
 ズズズッと頭がズレ、ゴトッと落ちた。
 翔真の戦闘技術が確実に上がってきている。

 ボーリングのボール程の大きさのダンジョンコアを取ると、地上に転送される。

「よしっ! 土産はとった。町に行こう!」

『近い?』

「あぁ、すぐ近くだ」

◇◆◇

 町に入ると、活気に溢れていた。

 フリーマーケットのようにそこかしこで色々な物を売っているようだ。

「なんか面白いな!?」

『凄いね! 見て! こんなの売ってる!』

 蘇芳が見ていたのは不思議な形のオブジェ?

「何だこれ?」

「これの素晴らしさが分からんか? 見よ。このフォルム。女性の身体を彷彿とさせるだろう」

 禿げたおじさんが熱弁している。

 言ってる意味がわからん。

「蘇芳。見ちゃダメだ。行くぞ」

 いそいそと通り過ぎる。

 奥を見ながら進んでいると、太陽を模した看板が見えた。

「おっ! ギルドあそこだ!」

 ギルドに入ると、ここも活気があった。

 隣の酒場では今日の仕事を終えた風の解放者が酒を飲んでいた。

 カウンターにも報告であろう解放者達が順番待ちをしていた。

「混んでるな?」

『そうだね。時間帯のせいかな?』

「かもな。夕方だもんな」

 大人しく並んで待つことにする。

 後ろから声を掛けられる。

「おう。あんた何もんだ?」

 俺が声かけられたと思ったら蘇芳に話しかけてたみたいだ。

「すみません。俺のテイムした魔物なんです」

「魔物? はぁぁ。すげぇのが居たもんだな」

 感心したように見上げる。

「はははっ。ども」

 しばらくすると自分の番が来た。

「初めての方ですよね? ご用件は?」

 ギルドカードとダンジョンコアを出しながら、攻略の報告をする。

「ここに来る途中でダンジョン攻略したんで、換金をお願いしたいんです」

「これは、中規模のダンジョンコア!? この辺あんまり中規模のダンジョンないはず……もしかして、ゴブリンが大量にいるダンジョンを攻略したんですか?」

「あぁ。そうだ」

 周りがザワついた。

「おい。あそこって……」
「多すぎて撤退……」
「誰も奥に……」
「無理だろ……」

 その反応に不安になってしまう。

「あのー? なんか不味いことしました?」

「いえ。そのダンジョンはゴブリンの数が多いことで有名で中々攻略者が現れなかったもので……」

 黒い長い髪を後ろで結び、キリッとした雰囲気のメガネをかけた女の人に怪訝な表情をされるとビビってしまう。

「そうですか。で、報酬は?」

「そうですね。これまで攻略されてなかったので、少し多いです。1000万でどうでしょう?」

「あっ、そんなにくれるんですか? 有難うございます。100万ほどギルドカードから現金化してもらっていいですか?」

 ペコッと礼をすると。

「そんなに解放者で畏まる人は珍しいですよ? みんな粗暴なので。はい、現金です」

「そうなんですか? でも、みんなちゃんと並んでるじゃないですか? これって、凄いことだと思いますよ? 他ではこうはいかない」

「見ない顔だと思いましたが、他の領から来たんですか?」

「いや、北の森丘町から来たんです」

「あの激戦区の? 凄い」

「俺はまだまだですよ。これからもっと南下して旅をするんです」

「素晴らしいですね。頑張ってください」

 一つも笑いはしないが、応援してくれているようだ。

「有難うございます。では」

 後ろの人をまたせても悪いのでさっと窓口をあける。

 混んでいるのですぐにギルドを出る。

「ふぅ。なんか混みあってて落ち着かなかったな?」

『そうだね。しょうがないよ』

 するとギルドから出てきた解放者2人に声をかけられた。

「なぁ、お兄さんダンジョン攻略のアドバイスくれないか?」

「ん? 俺が?」

「そうそう! その魔物は怖いからそこに居てもらって、あっちでゆっくり座って教えてくれないか? ギルドは混んでるし」

「あぁ。良いけど。蘇芳、ちょっとまってて」

『オッケー』

 路地に入ると、ベンチに腰掛ける。

「で? ホントの用件は?」

 座った翔真を囲むように2人で取り囲む。

「あんちゃんさあ、金持ってんだろ? 俺らにもくれよぉ」

「自分で稼げば? あっ、バイト紹介しようか?」

「てめぇ、舐めてんなよ? 魔物が居なきゃなんにも出来ねぇテイマー風情が」

「まぁ、そうなるよねぇ」

「あぁ!? 何余裕こいてんだよ! 痛い目見ねぇとわかんねぇのか!?」

「めんどくせぇな。殴れよ?」

 手をクイッとして、挑発する。

「コノヤロー! 舐めやがって!」

「シバく!」

 男2人が殴りかかってくる。

ドスッドスッドッドッドスッ

「大人しく渡してれば痛い目見ないですんだのになぁ?」

 そう言いながら見下ろしてくる。

「気が済んだか?」

 スクッと立って2人を見る。

「なんで効いてねぇ!?」

「俺は、本気で殴ったぞ!?」

 フンッと笑いながら答える。

「弱いからじゃない?」

 その言葉に激昂する2人。

「テイマー風情がうるせぇ!」

「最弱ヤローが!」

 再び殴りかかってくる。

ガシガシッ

 2人の手を両手で止める。

「何しやがる!? 離せ!」

「くそっ! 離れねぇ」

ミシミシミシッ

 聞こえてはいけない音が聞こえる。

「やめろ!」

「はなせ!」

パッ

 2人が転げる。

「気は済んだ?」

 ニコッと笑いかける。

「くそっ! 化け物が!」

「なんなんだコイツ!」

 逃げていく男達。

『終わった?』

「あぁ。何処にでもいるよな? あぁいった輩は」

『仕方ないねぇ。しかし、よく絡まれるね?』

「蘇芳、お前、笑って送り出しただろ?」

『だってさ、誘い方面白くなかった? ……クスッ……ダンジョン攻略について教えて欲しいだっけ?……くくっ』

「だから、変だってすぐ分かったよ」

『だよね……魔物は怖いからとかいってさ……ククククッ』

「テイマーの方は弱いってのが共通の認識なんだろうな。それが覆ってくれればいいな」

 この世界の常識が自分の強さで覆ってくれることを願うのだった。
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