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19.祝勝会
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「お前のおかげで本当に助かったぜぇ!」
バシッバシッ
「痛いっす……」
皆がいい感じに酔っ払い始めた頃。
左隣にはギルドマスターが座っていた。
蘇芳が気をきかせて席をあけたのだ。
「ちょっと! マスター! 翔真くんが痛がってますよ!」
抗議するのはいいが。
右側からこちらに身を乗り出している為、柔らかいものが腕に当たるのだ。
いいんだよ。
とっても嬉しい。
「何だと!? 英雄を労ってるだろうが!」
「だから、叩かないでくださいってば!」
頬を膨らましながら怒っている。
ふ
「まぁまぁ。風香さん大丈夫ですよ」
「ハッハッハッ! そうだぞ!? コイツのステータスは4桁なんだから俺がいくら叩いても痛くも痒くも無いだろうが!」
シンッッッ
あれだけ騒がしかった酒場が沈黙した。
しばしの沈黙の後、1人が口を開いた。
「ん? 聞き間違えか?」
誰かが言った。
「翔真のステータスが4桁あるって?」
「そんな訳ねぇよなぁ」
「人間の限界って3桁なんだろ?」
「だよなぁ」
「酔っ払い過ぎて変なの聞こえたぜ!」
喧騒が戻ってくる。
バツの悪い顔をしているギルドマスター。
「ちょっ! ギルドマスター! あんまり言いたくないって言ったじゃないですか!? バラさないで下さいよ」
「す、すまん。大人しくしてよう」
流石に焦ったのだろう。
離れたところに座って再び飲み始めた。
『気の所為で済んで良かったね?』
蘇芳が戻ってきた。
「あぁ。危なかった……」
『流石にバケモノ扱いされちゃうもんね?』
「皆に知られちまったそうなるだろうからな……」
「私は、バケモノだと思わないよ?」
横から上目遣いで訴えてくる風香さん。
「ありがとうございます」
「強い人好きだよ?」
再びの上目遣い。
あのー。
これは勘違いしてしまいます……。
勘違いなのか?
葛藤して固まっていると。
柔らかいものが身体に乗りかかる。
えっ!?
ちょっ。
皆いるよ?
慌てて固まっていると。
「グゥゥゥゥ…………グゥゥゥゥ…………」
ん?
横を見る。
こちらに寄りかかって寝ている。
口から少しヨダレが垂れている。
サッとお手拭きで拭いてあげる。
「蘇芳! 女のギルド職員さん連れてきてくれ!」
『了解』
スっと立つとギルドのカウンターの方に行く。
まだ仕事をしていた職員さんに声をかけている。
すると呆れたような顔をしながらこちらに歩いてきた。
「あー。風香、寝ちゃったんですね?」
「そうなんですよ。家知ってます?」
「今日は、私の家に連れていきますよ。風香は飲むといっつも寝ちゃうんですよねぇ」
「あっ、じゃあ、帰る時に声掛けてください。お宅まで運んでいきますので」
「そうですか? それは、助かります!」
そう言うと再びカウンターにの奥に行った。
残りの仕事を片付けに行ったのだろう。
腕に感じる幸せな感触を感じないように。
煩悩退散。煩悩退散。
変なことを考えないようにしながら酒を飲む。
俺まで酔っ払ったら不味いな。
変な気分になっちまう。
『翔真!』
煩悩退散。煩悩退散。
『翔真!?』
ハッとして左を向く。
『幸せな時間にすみませんね? さっきの職員さん帰るみたいよ?』
「なっ! そうか! よしっ! じゃあ、送っていこうではないか!」
変な言葉遣いになっている。
『僕が背負った方が良くない? なんか……世間的に?』
「そうだな! 頼む!」
『オッケー』
俺の腕から幸せな感覚が消える。
蘇芳が背中に背負ったとこであった。
立ち上がって外に出る。
涼しい風が火照った熱を冷ましていく。
「楽しんでたとこだったのにすみません。付いてきてもらって」
「た、楽しんでなんてないですよ!? 決して腕の感触幸せだなぁとか思ってないですよ!?」
「い、いえ……祝勝会の話です」
「あっ! あぁ! 祝勝会楽しいんでましたけどね! ハッハッハッ! いいんですよ! 風香さんの為ですから!」
「ふふふっ。真仲さんって面白い人なんですね?」
「い、いえ……あっ、お名前は?」
「美晴です。桃野 美晴(ももの みはる)。」
「桃野さんですか。綺麗な色の髪ですよね?」
「ありがとうございます。風香は名前で呼ぶのに、私は苗字なんですか?」
首を傾げながら流し目で見てくる。
おぉう。
綺麗な人だな。
えっ!?
なに!?
モテ期なの?
「別に、深い意味はなくて。すみません! 美晴さん!」
「ふふふっ。そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。ホントに可愛い人。風香が気にしてるのもわかるわ」
後ろに手を組みながら先頭を歩く美晴さん。
綺麗なピンクの髪のポニーテールを左右に振りながら歩く。
背は俺より少し低いくらいかな?
夜の町でも光に反射する髪。
綺麗な顔と相まって幻想的に見える。
「ガッハッハッ!」
幻想的にな雰囲気をぶち壊す笑い声が横から聞こえてくる。
「おぉ!? いい女がいるぜぇ!?」
「ホントだ!」
「ラッキー!」
酔っ払いの男3人組が歩いてきた。
後ろにいた俺達が見えてないんだろう。
「なぁ、俺達と一緒に飲みに行かなぁい?」
一人の男が前に出てきて話す。
「私帰るところなんで」
美晴さんが冷たく返す。
「そっかぁ。ざんねぇん」
男は後ろに下がる。
おぉ。意外と言い訳があったか。
「連れてくぞ!」
両脇の男達が美晴さんを両脇からガシッと掴む。
酔っ払いがそんなに聞き分けがある訳ねぇか。
あぁ。
いい気分だったのになぁ。
「おぃ?」
自分でも初めて出すのではないだろうかと言うくらい低い声が出る。
「あぁぁん? ツレがいたのか!? ハッハッハッ! この女は連れていくぜ!? 解放者の俺達には適わねぇだろう!?」
笑いながら聞き捨てならない言葉を発する。
「あぁ? お前ら解放者なら、今回のダンジョン攻略作戦に参加したんじゃないのか?」
「あんなの行く訳ねぇ! 俺達はあんな報酬じゃあやらねぇよ! この領が崩壊したら別の領に行くしな?」
「そうだぜぇ」
ギリッ
自分の歯を食いしばった音が聞こえる。
魔力が溢れてしまった。
ブワッ
流石にそれを感じた解放者達。
「お、お前なんなんだ!?」
「謹慎中の解放者は全員参加したのかと思ったが、お前達みたいな奴もいたんだな?」
一歩一歩近づいていく。
暗くて見えていなかった顔が月灯りで照らされる。
「お、お前! あのテイマーの! やべえ! コイツはバケモンだ!」
一目散に後ろに走っていく。
「お、おい! 待てよ!」
美晴さんを抱えていた二人も慌てて逃げる。
立ち去った男達を見送り。
美晴さんの元へ行く。
「止めるの遅くなってすみません」
ガシッ
胸を掴まれ、頭を預けてくる。
えっ!?
なにこの展開!?
「こ、怖かった」
震えている美晴さん。
ハッとする。
ゆっくりと頭を撫でる。
「もう大丈夫です。怖い思いさせてすみませんでした」
「ううん。翔真くんのせいじゃないわ」
暫くすると、そっと離れた。
「ありがとう。もう落ち着いたわ」
「良かったです」
「行きましょ?」
「はい」
並んで歩き出す。
『ねぇ、僕と風香さん忘れてたでしょ?』
「なっ!? そんなわけないだろう?」
後ろから掛けられた声に驚く。
『まぁいいけどさ、程々にしなよ?』
「な、なんのことやら」
暫く歩くとアパートについた。
玄関を開けると電気をつけてくれた。
「散らかっててごめん。風香はベッドに寝かせてもらえる?」
一緒に中に入り、風香さんを起こさないようにベッドに寝かせる。
部屋に入った時に見えたピンクの物は慌ててしまっていたから見なかったことにしよう。
うん。
そうしよう。
「じゃあ、風香さんのこと、お願いします」
「うん。運んできてくれてありがとう。蘇芳ちゃんだっけ? も、ありがとう」
『ガウガウガガガウガ(いえいえ、お気になさらず)』
「気にしないで下さいって言ってます」
「そう。助かったわ」
「じゃあ」
アパートを後にする。
翔真と蘇芳の後ろ姿を見ながら。
思わず気持ちが口から出てしまう美晴。
「はぁ。カッコよかったな。どうしよう……」
夜は更けていく。
バシッバシッ
「痛いっす……」
皆がいい感じに酔っ払い始めた頃。
左隣にはギルドマスターが座っていた。
蘇芳が気をきかせて席をあけたのだ。
「ちょっと! マスター! 翔真くんが痛がってますよ!」
抗議するのはいいが。
右側からこちらに身を乗り出している為、柔らかいものが腕に当たるのだ。
いいんだよ。
とっても嬉しい。
「何だと!? 英雄を労ってるだろうが!」
「だから、叩かないでくださいってば!」
頬を膨らましながら怒っている。
ふ
「まぁまぁ。風香さん大丈夫ですよ」
「ハッハッハッ! そうだぞ!? コイツのステータスは4桁なんだから俺がいくら叩いても痛くも痒くも無いだろうが!」
シンッッッ
あれだけ騒がしかった酒場が沈黙した。
しばしの沈黙の後、1人が口を開いた。
「ん? 聞き間違えか?」
誰かが言った。
「翔真のステータスが4桁あるって?」
「そんな訳ねぇよなぁ」
「人間の限界って3桁なんだろ?」
「だよなぁ」
「酔っ払い過ぎて変なの聞こえたぜ!」
喧騒が戻ってくる。
バツの悪い顔をしているギルドマスター。
「ちょっ! ギルドマスター! あんまり言いたくないって言ったじゃないですか!? バラさないで下さいよ」
「す、すまん。大人しくしてよう」
流石に焦ったのだろう。
離れたところに座って再び飲み始めた。
『気の所為で済んで良かったね?』
蘇芳が戻ってきた。
「あぁ。危なかった……」
『流石にバケモノ扱いされちゃうもんね?』
「皆に知られちまったそうなるだろうからな……」
「私は、バケモノだと思わないよ?」
横から上目遣いで訴えてくる風香さん。
「ありがとうございます」
「強い人好きだよ?」
再びの上目遣い。
あのー。
これは勘違いしてしまいます……。
勘違いなのか?
葛藤して固まっていると。
柔らかいものが身体に乗りかかる。
えっ!?
ちょっ。
皆いるよ?
慌てて固まっていると。
「グゥゥゥゥ…………グゥゥゥゥ…………」
ん?
横を見る。
こちらに寄りかかって寝ている。
口から少しヨダレが垂れている。
サッとお手拭きで拭いてあげる。
「蘇芳! 女のギルド職員さん連れてきてくれ!」
『了解』
スっと立つとギルドのカウンターの方に行く。
まだ仕事をしていた職員さんに声をかけている。
すると呆れたような顔をしながらこちらに歩いてきた。
「あー。風香、寝ちゃったんですね?」
「そうなんですよ。家知ってます?」
「今日は、私の家に連れていきますよ。風香は飲むといっつも寝ちゃうんですよねぇ」
「あっ、じゃあ、帰る時に声掛けてください。お宅まで運んでいきますので」
「そうですか? それは、助かります!」
そう言うと再びカウンターにの奥に行った。
残りの仕事を片付けに行ったのだろう。
腕に感じる幸せな感触を感じないように。
煩悩退散。煩悩退散。
変なことを考えないようにしながら酒を飲む。
俺まで酔っ払ったら不味いな。
変な気分になっちまう。
『翔真!』
煩悩退散。煩悩退散。
『翔真!?』
ハッとして左を向く。
『幸せな時間にすみませんね? さっきの職員さん帰るみたいよ?』
「なっ! そうか! よしっ! じゃあ、送っていこうではないか!」
変な言葉遣いになっている。
『僕が背負った方が良くない? なんか……世間的に?』
「そうだな! 頼む!」
『オッケー』
俺の腕から幸せな感覚が消える。
蘇芳が背中に背負ったとこであった。
立ち上がって外に出る。
涼しい風が火照った熱を冷ましていく。
「楽しんでたとこだったのにすみません。付いてきてもらって」
「た、楽しんでなんてないですよ!? 決して腕の感触幸せだなぁとか思ってないですよ!?」
「い、いえ……祝勝会の話です」
「あっ! あぁ! 祝勝会楽しいんでましたけどね! ハッハッハッ! いいんですよ! 風香さんの為ですから!」
「ふふふっ。真仲さんって面白い人なんですね?」
「い、いえ……あっ、お名前は?」
「美晴です。桃野 美晴(ももの みはる)。」
「桃野さんですか。綺麗な色の髪ですよね?」
「ありがとうございます。風香は名前で呼ぶのに、私は苗字なんですか?」
首を傾げながら流し目で見てくる。
おぉう。
綺麗な人だな。
えっ!?
なに!?
モテ期なの?
「別に、深い意味はなくて。すみません! 美晴さん!」
「ふふふっ。そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。ホントに可愛い人。風香が気にしてるのもわかるわ」
後ろに手を組みながら先頭を歩く美晴さん。
綺麗なピンクの髪のポニーテールを左右に振りながら歩く。
背は俺より少し低いくらいかな?
夜の町でも光に反射する髪。
綺麗な顔と相まって幻想的に見える。
「ガッハッハッ!」
幻想的にな雰囲気をぶち壊す笑い声が横から聞こえてくる。
「おぉ!? いい女がいるぜぇ!?」
「ホントだ!」
「ラッキー!」
酔っ払いの男3人組が歩いてきた。
後ろにいた俺達が見えてないんだろう。
「なぁ、俺達と一緒に飲みに行かなぁい?」
一人の男が前に出てきて話す。
「私帰るところなんで」
美晴さんが冷たく返す。
「そっかぁ。ざんねぇん」
男は後ろに下がる。
おぉ。意外と言い訳があったか。
「連れてくぞ!」
両脇の男達が美晴さんを両脇からガシッと掴む。
酔っ払いがそんなに聞き分けがある訳ねぇか。
あぁ。
いい気分だったのになぁ。
「おぃ?」
自分でも初めて出すのではないだろうかと言うくらい低い声が出る。
「あぁぁん? ツレがいたのか!? ハッハッハッ! この女は連れていくぜ!? 解放者の俺達には適わねぇだろう!?」
笑いながら聞き捨てならない言葉を発する。
「あぁ? お前ら解放者なら、今回のダンジョン攻略作戦に参加したんじゃないのか?」
「あんなの行く訳ねぇ! 俺達はあんな報酬じゃあやらねぇよ! この領が崩壊したら別の領に行くしな?」
「そうだぜぇ」
ギリッ
自分の歯を食いしばった音が聞こえる。
魔力が溢れてしまった。
ブワッ
流石にそれを感じた解放者達。
「お、お前なんなんだ!?」
「謹慎中の解放者は全員参加したのかと思ったが、お前達みたいな奴もいたんだな?」
一歩一歩近づいていく。
暗くて見えていなかった顔が月灯りで照らされる。
「お、お前! あのテイマーの! やべえ! コイツはバケモンだ!」
一目散に後ろに走っていく。
「お、おい! 待てよ!」
美晴さんを抱えていた二人も慌てて逃げる。
立ち去った男達を見送り。
美晴さんの元へ行く。
「止めるの遅くなってすみません」
ガシッ
胸を掴まれ、頭を預けてくる。
えっ!?
なにこの展開!?
「こ、怖かった」
震えている美晴さん。
ハッとする。
ゆっくりと頭を撫でる。
「もう大丈夫です。怖い思いさせてすみませんでした」
「ううん。翔真くんのせいじゃないわ」
暫くすると、そっと離れた。
「ありがとう。もう落ち着いたわ」
「良かったです」
「行きましょ?」
「はい」
並んで歩き出す。
『ねぇ、僕と風香さん忘れてたでしょ?』
「なっ!? そんなわけないだろう?」
後ろから掛けられた声に驚く。
『まぁいいけどさ、程々にしなよ?』
「な、なんのことやら」
暫く歩くとアパートについた。
玄関を開けると電気をつけてくれた。
「散らかっててごめん。風香はベッドに寝かせてもらえる?」
一緒に中に入り、風香さんを起こさないようにベッドに寝かせる。
部屋に入った時に見えたピンクの物は慌ててしまっていたから見なかったことにしよう。
うん。
そうしよう。
「じゃあ、風香さんのこと、お願いします」
「うん。運んできてくれてありがとう。蘇芳ちゃんだっけ? も、ありがとう」
『ガウガウガガガウガ(いえいえ、お気になさらず)』
「気にしないで下さいって言ってます」
「そう。助かったわ」
「じゃあ」
アパートを後にする。
翔真と蘇芳の後ろ姿を見ながら。
思わず気持ちが口から出てしまう美晴。
「はぁ。カッコよかったな。どうしよう……」
夜は更けていく。
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