最弱テイマーは魔物の王と無双する

ゆる弥

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18.帰還

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 ダンジョンを攻略し終えた解放者は帰路に就いていた。

「おい! あんた! すげぇな! 一体何個のダンジョン攻略したんだ!?」

「ん? あぁ。9個かな」

 頬をポリポリかきながら照れくさそうに答える。

「すげぇなおい! みんな聞いたかよ! コイツが9個も攻略してくれたお陰で俺達はこんなに早く帰れるんだぞ!?」

「だなぁ。すげぇよ」

「1個はほぼ大規模ダンジョンだったんだろ? 適わねぇよ」

「他のダンジョンだって全部中規模だぞ?」

「最初は余計な事してくれたと思ったけどよぉ」

「だなぁ。最終的には俺達の領を救われたよな」

「あぁ。俺たちだけじゃあこの数のダンジョンはすぐには攻略できねぇ。大規模ダンジョンが発生して手に負えなかった筈だ」

 口々に賞賛の声が上がる。
 照れくさそうに頭を掻きながら歩く。

「でも、あんた達も金稼げてよかったじゃん?」

「あぁ。何も出来ないと金が減る一方だからな。正直助かった」

「俺もだ。これからは真面目にダンジョン攻略に励むよ」

 暁至町に戻ってきた解放者一行。

 ギルドに入る。

「翔真くん! 無事でよかった! 遅かったじゃない! もう1週間だよ!?」

「すみません。手こずりました……」

 カウンターから出てきて胸に飛び込んでくる。

 トッと頭を胸につけ、上目遣いで見上げてくる。

「心配したんだよ?」

ズキューーーーン

 こ、これはヤバイわ。
 意識を強くもて俺!
 油断したら風香さんに完落ちしちまう。

「す、すみません……だいじょぶ……です」

 カチコチに固まって動きがきこちない。

 奥からギルドマスターがやって来た。

「風香! 持ち場を離れるな! 翔真! 良くやってくれた! こんな短期間で全て綺麗にしてくれるとは思わなかったぞ!」

「あっ、いえ。北の方は大丈夫だったんですか?」

「あぁ。綺麗になった。罰を受けてる解放者達も頑張ってくれたよ」

 カウンターに行きダンジョンコアを出す。
 ゴロゴロゴロと9個出す。

「おいおい! 1人で9個も攻略したのか!? いくら何でも有り得ないだろう!?」

「俺も頑張ったんですよ。最短の睡眠で活動してましたので」

「そうか。この領の為にありがとう」

「いえ。関わった以上、放ってはおけないっすから」

「報酬の方も色を付けさせてもらう」

 ダンジョンコアの大きさを測る。

「これは……大規模ダンジョンコアに近いが……輝きが違う」

 大規模ダンジョンコアは大きい上に輝きを放っているのだ。

「それは、90層の中規模ダンジョンコアです」

「そうなのか。危なかったな。大規模ダンジョンになっていたらガーディアンの強さが格段と上がるからな」

「そうなんですね」

「うむ。大規模ダンジョンだと余裕で億になるのだが中規模だからな……全部で8500万といったところでどうだ?」

「いいですよ。金銭感覚おかしくなってて、高いのか安いのかわかんないんで」

「ハッハッハッ! それだけ稼いでいればそうだろうな! おぉ。そうだ。これで解放者ランクはDランクだ! 本当はもっと上げてやりたいが、ポンポン上げては他の者達に示しがつかんのでな」

「いいですよ。徐々に上げていきますから。そうだ。みんなでパァーッと祝勝会しませんか? 料金は俺が持ちます」

「ハッハッハッ! 稼いでるやつは言うことが違ぇな! おい! 聞いたか!? ヤロー共! 翔真が皆にパァーっと奢ってくれるってよぉ!」

「「「「「おぉぉぉぉ!」」」」」

 ギルドマスターが隣の酒場に指示を出す。

「おい! 卸業者から酒ありったけ買ってこい! コイツが代金はもつ! あと、作れる料理を片っ端から作れ! 宴会だぁぁ!」

「あいよ!」

 酒場の方も慌ただしく動き出した。

 カウンターに近づく。

「風香さん達、受付の方達も一緒に飲みません?」

「えっ!? いいんですか!?」

 受付が騒がしくなる。

「皆で乗り越えた危機です! 皆の祝勝会ですから!」

「やったぁ!」

 他の受付嬢や内勤の人達も喜んでいる。

「ギルドマスター、いいですよね?」

「良いだろう! どうせ解放者は全員で飲み会だ! 受付にくる者はいねぇ! ギルト職員も参加するぞぉぉ!」

「「「「おぉぉぉぉ!」」」」

「「「「やったぁー!」」」」

 仕事が一段落したものから酒場に移動する。
 解放者達はもう好きな席に着いている。

 大体飲み物が行き渡った頃。
 ギルドマスターが立ち上がった。

「今回、解放者達の不祥事でこの領はダンジョンで溢れ崩壊しそうになっていた! そんな時現れたのが翔真だ! こいつのおかげでこの領は救われた! 挨拶をしてもらおう!」

 皆の目が一気にこちらに集中する。

「こういうの苦手なんすけど……」

 ブツブツ言いながら立ち上がる。
 すると横の席に風香さんがやって来た。

「ふふっ。頑張って? 英雄さん?」

 上目遣いで微笑んでくる。
 気分が高揚するのがわかる。

「えぇーっと……皆! お疲れ様! この料理をの危機を救えたのは、俺だけでは無理だった! みんなで力を合わせて攻略したからなんとかなったんだ! 俺達にはダンジョンを攻略する力がある! 解放者として誇りを持ち! これからも守りたい人達のために突き進もう! 今日は、俺の奢りだ! 好きなだけ飲めぇぇぇぇ!」

 数拍の間の沈黙。

「「「「オオォォォォォォォ!!」」」」

 地響きのような歓声があがる。

「翔真のおかげだぜ!」
「そうだ! 俺達には誇りがある!」
「好きなだけ飲むぜぇぇ!」
「守りたい人がいるから頑張れるんだ!」
「すげぇいい演説だったぜ!」
「アニキと呼ばせてくれ!」

 口々に賞賛の声が聞こえてきた。

「ふぅぅ。なんかここ最近で1番緊張したな」

「ふふふっ。賞賛のくん、カッコよかったよ?」

 体を寄せてくる風香さん。
 何やらいい匂いがしてくる。

「酔ってます?」

「むぅ。まだ飲んでない!」

 そう言うとグラスを傾けグビグビと飲み始めた。

「ぷはぁぁ。美味しい! 私も食べるぞぉ!」

 目の前に運ばれてきた料理を一緒に摘む。
 丸テーブルなので、左には蘇芳が座り、向かい側にも解放者の人がいるが、皆で山盛りの料理をつまんでいるのだ。

 そんな時、向かい側の解放者が話しかけてきた。

「なぁ、翔真。お前テイマーって本当なのか?」

「はい。コイツがテイムした魔物ですよ?」

 左を指さして言う。

『指ささないでよ』

 ペシッと指を叩かれる。

「あぁ。たしかに凄い圧を感じる気がするわ……」

「そうですか? ただ飯食ってるだけですよ?」

 左に目を向けながら言う。

『わかる人にはわかるんだよ。僕の強さがさ』

 なんかキザなこと言ってる。
 強いのはそうだけど……。

「でもよ、テイマーって弱い魔物しかテイム出来ないんじゃないのか?」

「それなんですけど、懐かれるとテイム出来るみたいですよ? 俺もテイムに成功したのがこの蘇芳だけなので何とも言えないですけどね」

「そうなのか。これはテイマーが弱いってのがひっくり返るな」

 首を傾げて再び質問してくる。

「この蘇芳だっけか? が、強いのはわかる。けど、何で翔真も強いんだ?」

「あぁ。あまり知られてないんですけど、テイマーって人魔一体っていう能力が備わってるんですよ。それが魔物の力がテイマーにも還元されるんです」

ガタッ

 席を立ち上がる解放者。

「そ、それって強い魔物をテイムしたら自分のステータスとかが上がるってことか!?」

「そうですね」

「これは……革命が起きるぞ……」

「でも、どうやったらテイムに成功するか分かんないですよ? 俺は、たまたまなんで」

「んー。そうだよなぁ」

 テイマーが弱い。
 と言う常識が覆りつつあるのであった。
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