最弱テイマーは魔物の王と無双する

ゆる弥

文字の大きさ
上 下
4 / 69

4.ガーディアン

しおりを挟む
 洞窟の中で階段を発見した翔真は、鉱石を採掘した後に下の階層へ降りてきた。

 自分から先頭を行くように進言し、慎重に進む。

 階段を降りた先には再び森が広がっていた。

「また森か……」

ブーーーーン

 何かが飛んでいるような音がする。

 辺りを見渡すが、何もいない。

 進もうとした。
 その時。

『上だ!』

 太刀を咄嗟に頭上に構える。

ギィィィンッ

 何かが衝突してきた。
 衝撃で後ろに弾かれる。

「なんだ!?」

 飛んできた物体を見る。

 カナブンのような昆虫が飛んでいた。

『カタブンだ!』

 似たような名前であった。

『そいつは身体が硬い甲殻類だから、普通に攻撃したんじゃダメージを与えられないよ!』

「そうなのか!? どうすれば……」

『甲殻類は関節の継ぎ目を狙うしかないよ!』

「関節か! 了解!」

 関節をピンポイントで狙うのはかなり難しい。
 止まっている所を狙うのも難しいが、動いている敵の関節を狙うのは至難の技だ。

 了解っつっても、かなり厳しいぞ。
 どうやって関節を狙う?

 そうこうしている内にも突進してくる。

ブーーーーン

 そんなに早くない為避けることはできるが、反撃するとなると難しい。

ブーーーーン

 再び避ける。

ブーーーーン

ブーーーーン

ブーーーーン

「だぁぁぁ! うるせえな!」

ガギィィィン

 立ちを力任せにぶん回し、突進してきたカタブンを打ち返す。

 ブンブンブンうるせえな。
 ん?
 羽がなきゃ飛べねぇか!

ブーーーーン

 すれ違いざまに太刀を縦に振り下ろす。

ズバッ

 パラパラと切れた羽が舞う。

ドシャャャ

 振り返るとカタブンが地面に落ちていた。
 もう片方の羽を広げて飛ぼうとしているが、ブンブン音が鳴るだけで飛べはしない。

「厄介だったぜ」

スパァァァン

 頭と体の関節を狙って立ちを振り下ろし、トドメをさす。

『おぉ! 翔真すごぉい! 僕とかは普通に飛んでるところを狙って関節切断したりするから、羽を切って落とすなんて思いつかなかったよぉ』

「サラッと言ってるが、嫌味かコラッ!? どうせ飛んでるところを狙えませんよ!」

『まぁ、発想が凄い良かったね!』

「まぁ、なんとか倒せたしな。まだまだこれから強くならねぇと! お金が俺を待っている!」

『お金の方は待ってないと思うけど……』

「さぁ、行くぞぉ」

 再び森の中を進んでいく。
 ここの階層は昆虫が多いようだ。

 カタブンばっかりじゃねぇか!
 ブンブンうるせえ。

 出てくる敵がカタブンばかりなのだ。
 倒して進んでいくと、不自然に大きな扉が現れた。

「ん? なんだこれ?」

『おぉ。もうガーディアンに辿り着いたんだ』

「ガーディアン?」

『そう。このダンジョンのコアを守る魔物の事をガーディアンって言うんだ』

「へぇ。じゃあ、ここで最後ってことか?」

『そうみたいだね。出来たばかりのダンジョンだったみたいだね。3階層って事は』

「そうなのか。まぁ、初めてにしては丁度良かったか」

『そうだね。ガーディアンは僕も手伝うよ』

「おう。頼んだ。じゃあ、扉開けるぞ?」

『うん!』

 扉をゆっくりと押す。

 押す……が開かない。

『引くんじゃない?』

 引く……と開いた。

「引くんかい! 普通押すだろ!」

 イライラしながら中に入る。

 辺り一面に蜘蛛の巣が張ってある。

「昆虫の階層だからもしかしてとは思ってたけど……蜘蛛かよ」

 上からツーーーッと蜘蛛が降りてくる。

「おいおい! 随分でけぇな!?」

 胴体は3メートルはあるだろうか。
 その身体の横から生えている脚が長いため更に大きさを際立たせている。

ゾワゾワッ

 気持ち悪い。
 寒気が止まらねぇ。
 変な汗が出てきちまった。

 太刀を構えたまま停止していると。

『翔真? どうしたの? 固まってるよ?』

「い、いや……」

『もしかして……蜘蛛苦手?』

「苦手って言うか見たら飛び上がって速攻逃げる感じ?」

『そんなに!?』

 でも、逃げてる訳にもいかねぇ!

 頑張って前に踏み出そうとすると。

『下がってていいよ』

「蘇芳?」

『ここまで、僕何もしてないし。翔真に見てもらおうかなって。僕が戦うところ』

「いいのか?」

『うん! 見てて』

 そう言うと異空間から骨で生成されたんであろう大太刀が出現した。

 蘇芳の3メートルある身体より少し大きい大太刀であった。

「ギギッ」

プシューーーッ

 巨大蜘蛛がお尻から白い何かを飛ばしてくる。

 サイドステップで避ける蘇芳。

ジューーーッ

 白い物体は酸だったようだ。
 地面が解けている。
 それを見た蘇芳はため息をつく。

『はぁぁ。寄りにもよってアシッドスパイダーなんだ。この大太刀ダメになっちゃうかもなぁ』

「おい! 蘇芳大丈夫か!? 無理すんなよ!?」

『大丈夫だよ! 直ぐに終わらせるから!』

 蘇芳は肩に大太刀を担ぎ、足を曲げて力を貯めているようだ。

 何が来ると思ったのだろう。
 アシッドスパイダーは再び酸をお尻から複数放ってきた。

ドォォォンッ

 蘇芳のいた場所は蘇芳の姿はなく、土が抉れ、土埃が舞っている。

 瞬きした一瞬で蘇芳はアシッドスパイダーの目の前にいた。

『これで終わりだよ! 【花蘇芳(はなずおう)】』

ズババババババババンッ

 アシッドスパイダーの後ろに通り過ぎる。

スザザァァァァ

 振り返りながらアシッドスパイダーを確認している蘇芳。

「ギ、ギギィィィィィ」

ボドボドボドボド

 全ての関節が別れて地面に落ちる。

「す、すげぇ……」

 蘇芳の強さを目の当たりにした翔真は震えていた。

 こんなに強い蘇芳が俺の仲間なんて。
 こんなに心強いことはねぇな。

『あーーぁー。やっぱりダメになっちゃった』

 見ると、蘇芳の大太刀の刃の部分が溶けてしまっている。

『これ気に入ってたのになぁ。また作んなきゃ』

 蘇芳が落ち込んでいるようだ。

「蘇芳! 凄かったな! やっぱ蘇芳はすげぇな! 大太刀残念だったな。戦わせちゃってごめんな?」

『ううん! 翔真の役に立てたからよかったよ! この大太刀はまた作ればいいから大丈夫。骨集めるの手伝ってね?』

「おう! そりゃ、手伝うさ!」

『絶対だよ!? アンデッドの居るところに行かないと行けないからね?』

「お、おう。そ、そういうのは大丈夫だと思うぞ? ……たぶん」

『ふーん。ま、とりあえず、ダンジョンコアを取ろう』

 奥に進む蘇芳を追いかける。

 なにやら光を放っている球体が浮かんでいる。

『これが、ダンジョンコアだよ?』

「これがダンジョンコアかぁ」

『これを取ると自動的に周りの人が外に転移させられて、ダンジョンは消滅するんだ』

「へぇ」

 ダンジョンコアに手を伸ばし、触る。
 その瞬間、外にいた。

「おっ? 外か?」

『うん。入口が無くなってるね』

「おぉ! ダンジョンを攻略できたんだな!? やったぜ! このコアを持っていけば金になる!」

『そ、そうだね』

 あまりのテンションの高さに蘇芳は引いてしまっていた。
 嬉しくてしょうがない翔真は、そんな事は気にせずに元いた街に向かって走っていた。

『翔真、そんなにお金に困ってるの?』

 蘇芳の疑問に答えるものは誰もいない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

処理中です...