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28.視聴者 パート2
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「配信されとったの観たか?」
「…………はぃ」
「あそこまでやって、なんで仕留められんねん!」
「すんません!」
頭を下げる男。
その頭を踏みながらため息を吐く。
そして、頭をグリグリと踏みにじりながら唾を吐いた。
「はぁぁ。ホント、使えんわぁぁ。なんなん? 自分? どないしようなぁ。もうあんさん、自分で当たれや。確実に仕留めてこい」
「は、はぃ」
「もし失敗しても……わかってんな?」
「……はぃ」
「次の替え用意してからいけや?」
「……それは……」
「わかってんなぁ?」
「はぃ」
頭を踏んでいた男は足を離すと振り返り去っていった。
踏みにじられていた男は立ち上がり汚れをパッパッと落とすとヨロヨロと立ち去った。
「つ……次で仕留めないと……僕は……」
◇◆◇
ジィッと端末を見つめる男の子。
座って見ている、その子の横の机にはバングルがきらりと光っていた。
「この人に……これ渡したいな」
その子の後ろには様々なアクセサリーが並んでいた。
一体。何者なのだろうか。
◇◆◇
「わぁぁぁ! 凄いわ! 猛!」
「あぁ。流石は俺達の子だな。しかし、さっきの映像を見るに、何者かの介入があったようだな?」
「そうねぇ。少し心配ね……」
「はぁ。俺達が一肌脱ぐか?」
「ちょっと過保護な気がするけれど……」
「しかし、猛になにかあってからでは遅いだろう?」
そう言うと手を叩き、人を呼び寄せた。
「はっ!」
黒ずくめの忍者のような姿の者がどこからとも無く現れたのだった。
「颯《はやて》、彼らの周りで不穏な動きがないか探ってくれるか?」
「はっ! お任せを!」
煙のように姿を消した。
「これで少し状況が分かることだろう。しかし、彼らを狙う者か……トップを守るのに必死の彼……かねぇ」
◇◆◇
「アイツ……やるじゃないか」
クビッとビールを煽る。
端末をジィッとみて何かを考えているようだ。
少し長く息を吐く。
この男は剣神と呼ばれる仁である。
何やら考え込んでいるようだ。
「うーむ。そろそろいいかもな……戻っても」
何を戻す気なんだろうか。
◇◆◇
「魔法を合成ですって!? 邪道な! そんな邪道なことで強くなるなんて許せない!」
怒り狂っているのはダンジョンであった奈々の母親である。
その隣では美々が映像を見て微笑んでいた。
「でも……すごい。だって……私はできない」
「あんな邪道なことしなくていいわ!」
この世界の常識としては魔法は合成できないものという認識になっているのだ。
なぜかというのは研究者が論文を出している。
なんでも、属性ごとに魔力の波長があり、それを合わせることは出来ないから合成魔法は不可能に近いとそう言われていた。
しかし、奈々は出来ている。それはスキルの八属性目の時属性が波長を合わせる役割を担っているようなのだ。それは、研究者さえ知らない。
「奈々……凄い」
実は合成魔法が使えるのは奈々が唯一かもしれない。
しかし、制約があるのは本人達しか知らないこと。
◇◆◇
「この無能が何をしているんだ?」
「さあ? 整理なんていう、何にも使えない無能なスキルでしたのにね?」
話をしているのはオールバックの白髪の四十代半ば程のキチッとしたスーツを着ている男性と、同じくキチッとドレスのようなものを着ている女性である。
「どうなってこうなったかは知らんが……有用な人間なのなら使わない手は無いかもしれんな」
「そうですわねぇ。このランキングシステムの意味は私達身内の人間しか知らないことですし。ランキングの上位に上がってくれば、必然的に使える者という証明になりますしね?」
「そうだな。そしたら、本人の意思は関係ない」
「ですわね。周りが勝手に求めてくれますわ」
「ふっ。そうなるのなら、それが必然だったのだろうな」
「えぇ。無能が役に立つ人間になったのならそれはラッキーですわ。その後の栄光も私達のモノになるという事ですわね?」
「あぁ。そうなるな」
一体何の話をしているのだろうか。
謎は深まる。
◇◆◇
「ちょっと! 真理ちゃん! 配信見た? 凄かったわね? なんだか上手くやってるじゃない?」
「薫さん! 見ましたよぉ。なんか、遠くに行っちゃったみたいで少し寂しいですよぉ」
カウンターに肘をつきながらスキンヘッドの大男がクネクネしながら話している。
少し残念そうな感じで話す真理。
「最下位の方ですけど、ランカーにもなった訳じゃないですかぁ」
「そうよねぇ。悪い虫がいっぱい寄ってきそうで嫌だわぁ。実はね、私、異動願い出してるのよ」
目を見開いて驚いている真理。
「えっ……実は私もなんですよね……」
「ちょっとぉ。迷京都にじゃないでしょうね!?」
前のめりに聞いてくる薫。
タジタジの真理は正直に答えるしか無かったようだ。
「そ……そうです……ダメ……ですかね?」
「ここの支部どうするのよ!?」
「いやー。私達じゃなくても大丈夫何じゃないですか?」
「……まっ。そうね?」
この田舎の支部からは後にこの二人は居なくなる。そして、突然受付に現れ、収斗達のことを驚かすことになるのであった。
「…………はぃ」
「あそこまでやって、なんで仕留められんねん!」
「すんません!」
頭を下げる男。
その頭を踏みながらため息を吐く。
そして、頭をグリグリと踏みにじりながら唾を吐いた。
「はぁぁ。ホント、使えんわぁぁ。なんなん? 自分? どないしようなぁ。もうあんさん、自分で当たれや。確実に仕留めてこい」
「は、はぃ」
「もし失敗しても……わかってんな?」
「……はぃ」
「次の替え用意してからいけや?」
「……それは……」
「わかってんなぁ?」
「はぃ」
頭を踏んでいた男は足を離すと振り返り去っていった。
踏みにじられていた男は立ち上がり汚れをパッパッと落とすとヨロヨロと立ち去った。
「つ……次で仕留めないと……僕は……」
◇◆◇
ジィッと端末を見つめる男の子。
座って見ている、その子の横の机にはバングルがきらりと光っていた。
「この人に……これ渡したいな」
その子の後ろには様々なアクセサリーが並んでいた。
一体。何者なのだろうか。
◇◆◇
「わぁぁぁ! 凄いわ! 猛!」
「あぁ。流石は俺達の子だな。しかし、さっきの映像を見るに、何者かの介入があったようだな?」
「そうねぇ。少し心配ね……」
「はぁ。俺達が一肌脱ぐか?」
「ちょっと過保護な気がするけれど……」
「しかし、猛になにかあってからでは遅いだろう?」
そう言うと手を叩き、人を呼び寄せた。
「はっ!」
黒ずくめの忍者のような姿の者がどこからとも無く現れたのだった。
「颯《はやて》、彼らの周りで不穏な動きがないか探ってくれるか?」
「はっ! お任せを!」
煙のように姿を消した。
「これで少し状況が分かることだろう。しかし、彼らを狙う者か……トップを守るのに必死の彼……かねぇ」
◇◆◇
「アイツ……やるじゃないか」
クビッとビールを煽る。
端末をジィッとみて何かを考えているようだ。
少し長く息を吐く。
この男は剣神と呼ばれる仁である。
何やら考え込んでいるようだ。
「うーむ。そろそろいいかもな……戻っても」
何を戻す気なんだろうか。
◇◆◇
「魔法を合成ですって!? 邪道な! そんな邪道なことで強くなるなんて許せない!」
怒り狂っているのはダンジョンであった奈々の母親である。
その隣では美々が映像を見て微笑んでいた。
「でも……すごい。だって……私はできない」
「あんな邪道なことしなくていいわ!」
この世界の常識としては魔法は合成できないものという認識になっているのだ。
なぜかというのは研究者が論文を出している。
なんでも、属性ごとに魔力の波長があり、それを合わせることは出来ないから合成魔法は不可能に近いとそう言われていた。
しかし、奈々は出来ている。それはスキルの八属性目の時属性が波長を合わせる役割を担っているようなのだ。それは、研究者さえ知らない。
「奈々……凄い」
実は合成魔法が使えるのは奈々が唯一かもしれない。
しかし、制約があるのは本人達しか知らないこと。
◇◆◇
「この無能が何をしているんだ?」
「さあ? 整理なんていう、何にも使えない無能なスキルでしたのにね?」
話をしているのはオールバックの白髪の四十代半ば程のキチッとしたスーツを着ている男性と、同じくキチッとドレスのようなものを着ている女性である。
「どうなってこうなったかは知らんが……有用な人間なのなら使わない手は無いかもしれんな」
「そうですわねぇ。このランキングシステムの意味は私達身内の人間しか知らないことですし。ランキングの上位に上がってくれば、必然的に使える者という証明になりますしね?」
「そうだな。そしたら、本人の意思は関係ない」
「ですわね。周りが勝手に求めてくれますわ」
「ふっ。そうなるのなら、それが必然だったのだろうな」
「えぇ。無能が役に立つ人間になったのならそれはラッキーですわ。その後の栄光も私達のモノになるという事ですわね?」
「あぁ。そうなるな」
一体何の話をしているのだろうか。
謎は深まる。
◇◆◇
「ちょっと! 真理ちゃん! 配信見た? 凄かったわね? なんだか上手くやってるじゃない?」
「薫さん! 見ましたよぉ。なんか、遠くに行っちゃったみたいで少し寂しいですよぉ」
カウンターに肘をつきながらスキンヘッドの大男がクネクネしながら話している。
少し残念そうな感じで話す真理。
「最下位の方ですけど、ランカーにもなった訳じゃないですかぁ」
「そうよねぇ。悪い虫がいっぱい寄ってきそうで嫌だわぁ。実はね、私、異動願い出してるのよ」
目を見開いて驚いている真理。
「えっ……実は私もなんですよね……」
「ちょっとぉ。迷京都にじゃないでしょうね!?」
前のめりに聞いてくる薫。
タジタジの真理は正直に答えるしか無かったようだ。
「そ……そうです……ダメ……ですかね?」
「ここの支部どうするのよ!?」
「いやー。私達じゃなくても大丈夫何じゃないですか?」
「……まっ。そうね?」
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