魔法が溢れる世界で大切な人を護る方法

ゆる弥

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20.あなたが悪いのに

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『おい。亮? 依頼人と何か話したのか?』

 トイレから戻るといきなり問い詰められた。
 なぜだ?
 もしかして何か話したのか? ヤツめぇ。

「は……はい。依頼人が私を軽蔑するか? と聞かれましたので、少し毒を吐きました」

『やっぱりか。暗い顔してたからな』

「でも、そいつが悪いですよ。まぁ、ちょっと言い過ぎましたけど」

『気持ちはわかるけど、気を付けろ?』

「はい」

 その後はあの女性が戻ってくることもなく時が過ぎて行った。
 なんだか、あっけなく引き下がった気がするな。
 あの人結構思い詰めていたようだったけど、大丈夫かな。

『診察は終わりだそうだ。今日のところはあがるそうだぞ。外の警戒を頼む』

「了解」

 関係者出入口から外に出て警戒する。
 一度ロータリーを見回り、道路に不審な車が止まっていないか確認する。
 特に問題はなかった。

 ふっと気になって辺りを見渡す。
 特に変な所はないか。
 そう思い振り返った。

 ん?

 何か視界で動いたような。
 再度辺りを見渡す。
 屋上で何かが動いたような。

「一応伝えます。向かいのビルの屋上で何かが動いた気がしました。周りは今の所異常はないですが、警戒してください」

『亮。確実に何かみえたの?』

 雅人さんだ。
 雅人さんならなにか異変に気付いてくれるかも。

「周りを見渡した時なんですけど、向かいのビルで何かが隠れるように動いた気がして」

『了解。ちょっと探ってみる』

「お願いします」

 雅人さんに警戒はお願いしよう。

 俺は再び関係者の出入り口に向かった。
 少し出てくるまでに時間がかかるだろう。
 辺りを引き続き警戒する。

 異変が起きた。

『なんか速いスピードで入っていく車がある! 亮!』

 車を回そうとしていた雅人さんからだ。

「見えました。警戒します!」

 黒いバンがロータリーに乗り入れてきた。
 前後のドアが開かれると黒ずくめに頭にも目と鼻と口だけ穴が空いているマスクをかぶっている。
 相手は四人。手にはナイフ。

「敵です! 四人、凶器を所持! 魔法者がいたら、一人じゃキツイです! 応援願います!」

『仁さんを行かせる! お前の力の見せどころだぞ!』

 冗談キツイぜ。
 まぁ、やれなくもないか。
 昔なんて何人にも囲まれたんだからな。

 先に一人がナイフで襲ってくる。
 かがんで避ける。
 ネクタイを外してピンと張る。

 仕掛けてきた。

「ふっ!」

 手首をネクタイで巻き取り、後ろに移動しながら引っ張る。

「ぐあぁ」

 敵が声を上げるが構いやしない。
 お前達は凶器を持ってきたんだ。
 これくらい覚悟してんだろう!?

 そのまま頭を地面に押し付けて両手をネクタイで縛り上げる。

「いっちょ上がり!」

 もう一人はこっちを向いているが、残りの二人が関係者出入口に向かって行ってしまった。
 やべっ!
 走ろうとするが、一人が立ちはだかる。

「アースニードル!」

 地面からトゲが生えてきた。
 咄嗟に転がって避ける。

「魔法者がいます!」

『了解! 手加減するな! やれ!』

 流さんから殲滅しろとのお達しが出た。

 目の前にいる敵を改めて見る。
 コイツ、でけぇ。
 二メートルはありそうな身長でガタイもいい。
 ナイフが小さく見える。

「二人に突破されました!」

『なに!?』 『OKだ』

 流さんの焦った声が聞こえると思ったら、仁さん?
 出入り口から細マッチョの仁さんが登場し、行く手を阻んでいる。

「おっと!」

 よそ見をしていたらナイフが迫っていた。
 危ない。集中しないと。

 こんなデカい男には有効な手段があるのを俺は知っている。
 昔よくやった。
 攻撃をかわして後ろに回る。

 膝の裏に回し蹴り。

「おらぁぁ!」

 大男はカクンとなって膝をついた。
 こうなったらこっちのもの。
 ナイフを持っている腕を絡めとり腕十字固めをかける。

 ナイフを落とさせて、腕を少し捻りダメージを与える。

「があぁぁぁ」

 腕を放すと腕を抱えて蹲った。
 そのまま腕に手錠をかける。
 魔力封印付きの手錠だ。
 仁さんの方を見ると二人同時で苦戦していた。

 後ろから駆ける。
 全速力で駆けて行き当て身を放つ。

「らぁぁぁ!」

 ドスッと鈍い音を立てて壁にぶち当たり気絶した。
 もう一人となったが、仁さんが難なく制圧。

「ふぅぅぅ。なんとかなりましたね」

 俺は全員《・・》を制圧したと思っていた。

 振り返ると先程倒した二人が居ない。

「どこに!?」

 車の方に肩を貸されて歩いているのが見えた。
 しまった! 運転手忘れてた!
 急いで追いかけ───。

「待て! 追うな! とりあえず、コイツらだけでいい。良くやった。さすが漆黒レベル」

「いえ。逃げられちゃってすみません」

「いや、四人凶器持ち魔法者まで居たのに無傷なのがまず、有り得ねぇ。良くやったよ。ホント」

 縛り上げながら残りの二人を連行する。
 仁さんに褒められるなんて照れるな。

「雅人、警察に連絡頼む」

『もうしてる。あと五分で着く』

「了解」

 流石だぜ雅人さん。
 そして、この人らのチームワークはすごい。
 やっぱり一番やばい仕事振られてるだけあるな。

 その後到着した警察に身柄を引き渡す。
 男達はマスクを取って顔を拝んだ。
 一人は若い輩。
 もう一人はおっさんだった。

「なんの関係でしょうね? 裏の関係じゃ無さそうですけど」

「いや、軽く裏関係ではありそうだな。たぶん、ゴロツキを雇ったんだろうな」

「そんなんあるんですか。って事は……」

「一応、雇い主はプロだな」

 マジかよ。
 あの女の人マジじゃん。
 ヤバいとこに手ぇ出して大丈夫?

 金を死ぬほどむしり取られるんじゃないか?

『周りはどうだ?』

 流さんだ。

「今は落ち着いています! 大丈夫かと」

『出るぞ』

 関係者の出入口から身を小さくして出てきた依頼人。
 その前を流さんが歩いている。
 俺達もそれの横を並行するように歩いて警戒する。

 雅人さんがまわした車に乗り込み、後ろの席に依頼人を乗せる。
 バンなので広いが、会話がないのはマジで苦痛だ。

「さっきの人達は殺し屋か何かですか?」

 依頼人が口を開いた。
 こっちをチラッと見るが、流さんを見ると頷いて答えた。

「状況的に判断すると、一応プロでしょう。雇われたのがゴロツキだったのが良かったです。殺し屋だったら私達も危ないところでした」

「そうですか」

「一応、依頼は一週間です。その間に原因の女性と和解出来ればいいんですが」

 流さんがそういうと、怪訝な顔をした。

「俺は悪くない」

「そうですか」

 それ以降沈黙だった。
 この日はこれで送り届けて終わった。

 これ毎日はハードだぞ?
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