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16.デートで
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「何食べる?」
「いや、俺スーツのままだからなぁ。取り敢えず着替えたいところなんだけど」
「じゃあ、私が買ってあげる!」
「いや、いいよ……自分で買うって」
いらないというと。
頬をふくらませて不機嫌を丸出しにした。
「じゃあ、今回のお礼ってことにしたらどう? 受け取ってくれる?」
「まぁ、それなら……」
「よしっ! 決まりー!」
そう言うとセレクトショップに入る。
何やら俺の意見は聞かずに、自分の趣味で購入する服を決めるようだ。
買ってもらうものだから文句は言わないけどさ。
「これとこれがメインでぇ」
黒のスキニーパンツに白いカットソー。
その上に黒いカーディガン。
今は秋だから丁度いいんだろう。
「亮はガタイがいいから、少し柔らかくなるようにカーディガンにしよう」
「おう。それはなかなか着ないな」
「似合うと思うよ?」
「そうかな?」
少し試着してみる。
うん。
確かにしっくりくる感じはあるな。
「これ、そのまま着てかえっていいですか?」
店員さんに聞いてみると。
「はい! 大丈夫ですよ! お買い上げ、有難う御座います!」
笑顔で了承してくれた。
いい店員さんだ。
タグを切ってもらってそのままの格好で試着室からでる。
スーツどうしよっかなぁ……。
「すみません。紙袋頂いていいですかぁ?」
「はい! あっ、彼氏さんの服ですね! 気が利かなくてすみません!」
差し出された袋にスーツを入れて店を後にする。
恵美さんを見ると。
なんだか頬と鼻を膨らませて満更でもなさそうな顔をしている。
「じゃあ、何食べる? お腹すいたよぉ」
「そうだよな。すまん」
「いいけどね? で、何食べたい?」
「んー寿司かな?」
「プッ!」
何故か笑われた。
どういう意図で笑われたのかが疑問だ。
「なんで笑った?」
「なんか子供みたい!」
「そんな事ないだろ!」
「わーかったから。じゃあ、回転しない寿司屋に連れて行ってあげよう!」
「おぉー。楽しみ」
俺はかなり楽しみで心が踊っていた。
回らない寿司屋初めてだ。
飲食店が立ち並ぶ通りを二人で進む。
恵美さんはずっと手にくっついている。
ずっと、幸せな感触が腕にある。
しばらく歩くと老舗っぽい店に着いた。
ここか?
「ここが、プライベートで私が愛用するお寿司屋さん! ホントに友達とか家族とかとしか来ないのよ?」
「へぇ。その面子に俺が入っていいのか?」
「んふふー。有り難く思いたまえよ?」
「ふっ。わかったって。ほら、行くぞ」
「えー? ノリが悪いなぁ」
笑いながら頬をふくらませて入る。
「いらっしゃい! あれ? 珍しいね。男の人を連れてくるなんて!」
「もぉ。良いでしょぉ。連れてきても」
カウンターに座り。
恵美さんが注文してくれた。
「大将、オススメ盛り!」
「あいよ」
パパッと握りだした。
流石職人。
素早く綺麗に握っていく。
ネタは〆鯖にホタテ、赤貝にブリ。
その他にも俺の大好きなネタが並んでいく。
最後にウニ。
「俺、ウニ食ったことあるけど、その時のは美味しくなかったんだ」
「そっかぁ。ここのは、本当に美味しいわよ?」
「それは、楽しみだ」
大将がニコニコしてこちらをチラチラ見ている。
握り終わると盛り合わせをカウンターに出してくれた。
「なぁに? 大将。ニヤニヤして」
「いやぁ。なんか恵美ちゃんが……なんか……本気の人連れてきてくれたのかなぁって思ってよぉ」
なんかしんみりしている。
涙ぐんでます?
大将、違うんですよ。
「そんなんじゃないよぉ。でも、そうなれたらいいなって……そう思える人だけど……」
おいおい。
そんな話は聞いてないぞ。
いやいやいやいや。
「いただきます!」
全力でスルーしてお寿司を食べる。
パクッとウニを一口。
口に旨味が広がる。
甘い。
「えっ!? こんなにウニって甘いんですか!?」
「はっはっはっ! いい反応だねぇ。新鮮なウニってのは甘くて旨みが濃いんだよ」
「凄い美味しい」
目を見開いて驚く。
こんなにも美味しいものだなんて知らなかった。
でも、これを食べてしまったらここでしか食べれないかもしれない。
「ねっ? ここ美味しいでしょ?」
「うん。美味しい。こんなのいつも食べてんのか? 羨ましいな」
「だろー? 付き合う気になったかー?」
恵美さんが肩を小突いてくる。
いやー。マズイって。
依頼人と恋仲になるなんて。
今後のイージスのあり方に関わるかもしれない。
こんな入って数日の俺が問題起こしたら……。
後で、一応聞いてみよう。
「いやいや。今はそういうんじゃないから。恵美さんを元気づけるための、デートだから」
「ホントにガードが固いなぁ。もう少し柔らかくなってもいいんじゃない?」
今までの経験が原因でガードが固くなっているのは、自覚してる。
最初はすぐ付き合ってデートしたりした経験はある。
けど、付き合った相手が悪く。
よく修羅場になって大変な思いをしてきた。
だから慎重になったのだ。
自己防衛のようなもの。
恵美さんともすぐに付き合ったりしたら何かあるんじゃないかと思い。
しり込みしてしまっている。
「そうなんだけど、そう思ってくれているならもう少し待ってくれないか。俺の問題なんだけど……」
ジッと目を見つめる。
何かを見透かされるようでドキドキしてしまう。
急にニコッと笑い。
「しょうがないなぁ。私が待ってあげるなんて、貴重だよぉ? 有難いと思ってよね?」
「あぁ。ありがとう」
「ふふっ。食べましょ!」
その日食べた寿司は今まで生きてきた中で一番美味しく。
俺を幸せな気分にしてくれたのであった。
「いや、俺スーツのままだからなぁ。取り敢えず着替えたいところなんだけど」
「じゃあ、私が買ってあげる!」
「いや、いいよ……自分で買うって」
いらないというと。
頬をふくらませて不機嫌を丸出しにした。
「じゃあ、今回のお礼ってことにしたらどう? 受け取ってくれる?」
「まぁ、それなら……」
「よしっ! 決まりー!」
そう言うとセレクトショップに入る。
何やら俺の意見は聞かずに、自分の趣味で購入する服を決めるようだ。
買ってもらうものだから文句は言わないけどさ。
「これとこれがメインでぇ」
黒のスキニーパンツに白いカットソー。
その上に黒いカーディガン。
今は秋だから丁度いいんだろう。
「亮はガタイがいいから、少し柔らかくなるようにカーディガンにしよう」
「おう。それはなかなか着ないな」
「似合うと思うよ?」
「そうかな?」
少し試着してみる。
うん。
確かにしっくりくる感じはあるな。
「これ、そのまま着てかえっていいですか?」
店員さんに聞いてみると。
「はい! 大丈夫ですよ! お買い上げ、有難う御座います!」
笑顔で了承してくれた。
いい店員さんだ。
タグを切ってもらってそのままの格好で試着室からでる。
スーツどうしよっかなぁ……。
「すみません。紙袋頂いていいですかぁ?」
「はい! あっ、彼氏さんの服ですね! 気が利かなくてすみません!」
差し出された袋にスーツを入れて店を後にする。
恵美さんを見ると。
なんだか頬と鼻を膨らませて満更でもなさそうな顔をしている。
「じゃあ、何食べる? お腹すいたよぉ」
「そうだよな。すまん」
「いいけどね? で、何食べたい?」
「んー寿司かな?」
「プッ!」
何故か笑われた。
どういう意図で笑われたのかが疑問だ。
「なんで笑った?」
「なんか子供みたい!」
「そんな事ないだろ!」
「わーかったから。じゃあ、回転しない寿司屋に連れて行ってあげよう!」
「おぉー。楽しみ」
俺はかなり楽しみで心が踊っていた。
回らない寿司屋初めてだ。
飲食店が立ち並ぶ通りを二人で進む。
恵美さんはずっと手にくっついている。
ずっと、幸せな感触が腕にある。
しばらく歩くと老舗っぽい店に着いた。
ここか?
「ここが、プライベートで私が愛用するお寿司屋さん! ホントに友達とか家族とかとしか来ないのよ?」
「へぇ。その面子に俺が入っていいのか?」
「んふふー。有り難く思いたまえよ?」
「ふっ。わかったって。ほら、行くぞ」
「えー? ノリが悪いなぁ」
笑いながら頬をふくらませて入る。
「いらっしゃい! あれ? 珍しいね。男の人を連れてくるなんて!」
「もぉ。良いでしょぉ。連れてきても」
カウンターに座り。
恵美さんが注文してくれた。
「大将、オススメ盛り!」
「あいよ」
パパッと握りだした。
流石職人。
素早く綺麗に握っていく。
ネタは〆鯖にホタテ、赤貝にブリ。
その他にも俺の大好きなネタが並んでいく。
最後にウニ。
「俺、ウニ食ったことあるけど、その時のは美味しくなかったんだ」
「そっかぁ。ここのは、本当に美味しいわよ?」
「それは、楽しみだ」
大将がニコニコしてこちらをチラチラ見ている。
握り終わると盛り合わせをカウンターに出してくれた。
「なぁに? 大将。ニヤニヤして」
「いやぁ。なんか恵美ちゃんが……なんか……本気の人連れてきてくれたのかなぁって思ってよぉ」
なんかしんみりしている。
涙ぐんでます?
大将、違うんですよ。
「そんなんじゃないよぉ。でも、そうなれたらいいなって……そう思える人だけど……」
おいおい。
そんな話は聞いてないぞ。
いやいやいやいや。
「いただきます!」
全力でスルーしてお寿司を食べる。
パクッとウニを一口。
口に旨味が広がる。
甘い。
「えっ!? こんなにウニって甘いんですか!?」
「はっはっはっ! いい反応だねぇ。新鮮なウニってのは甘くて旨みが濃いんだよ」
「凄い美味しい」
目を見開いて驚く。
こんなにも美味しいものだなんて知らなかった。
でも、これを食べてしまったらここでしか食べれないかもしれない。
「ねっ? ここ美味しいでしょ?」
「うん。美味しい。こんなのいつも食べてんのか? 羨ましいな」
「だろー? 付き合う気になったかー?」
恵美さんが肩を小突いてくる。
いやー。マズイって。
依頼人と恋仲になるなんて。
今後のイージスのあり方に関わるかもしれない。
こんな入って数日の俺が問題起こしたら……。
後で、一応聞いてみよう。
「いやいや。今はそういうんじゃないから。恵美さんを元気づけるための、デートだから」
「ホントにガードが固いなぁ。もう少し柔らかくなってもいいんじゃない?」
今までの経験が原因でガードが固くなっているのは、自覚してる。
最初はすぐ付き合ってデートしたりした経験はある。
けど、付き合った相手が悪く。
よく修羅場になって大変な思いをしてきた。
だから慎重になったのだ。
自己防衛のようなもの。
恵美さんともすぐに付き合ったりしたら何かあるんじゃないかと思い。
しり込みしてしまっている。
「そうなんだけど、そう思ってくれているならもう少し待ってくれないか。俺の問題なんだけど……」
ジッと目を見つめる。
何かを見透かされるようでドキドキしてしまう。
急にニコッと笑い。
「しょうがないなぁ。私が待ってあげるなんて、貴重だよぉ? 有難いと思ってよね?」
「あぁ。ありがとう」
「ふふっ。食べましょ!」
その日食べた寿司は今まで生きてきた中で一番美味しく。
俺を幸せな気分にしてくれたのであった。
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