魔法が溢れる世界で大切な人を護る方法

ゆる弥

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12.ヤバいやつ

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「到着しました」

 蓮さんの言葉に反応してドアをスライドさせると、先頭に降り立ち左右を確認して先導する。

 道路から店までを俺とよしさんで案内する。
 辺りを警戒し、怪しい人物が近づいてこないか見ながら進む。
 
 街行く人は物々しい雰囲気に野次馬精神を掻き立てられたのか。
 誰なんだ? 芸能人か?
 と言った風にみにくる。

 そういった人達は少しガッカリしたように肩を項垂れて去っていく。
 芸能人かと思って見てみれば、キャバ嬢だ。
 普通の人ならガッカリするだろう。

 しかし、そうじゃない人種もいる。

「ヒューーッ! ねぇちゃん俺達と飲もうぜ!」

 近づいてきた男の行方を妨げるように間に入る。

「なんだおめぇ!? 邪魔なんだよ!」

 言われても俺が言い返すことはしない。
 ただじっと壁に徹する。

「マリアージュのエレナをご指名くださいませぇ。ただし、私……VIP席じゃないと入れないので、頑張ってくださいね!」

 クネッと可愛くウインクする。
 その男は目がハートになっている。
 しかし、格好から見るにそこまで金を持っている感じではない。

 何か危険な人物がやって来るのだろうか。
 いつ来るか分からないために緊張感が半端じゃない。

 スゥーッとあとは流れるように建物に入る。
 入るなり専用の控え室があり、最後に少し化粧直しをする。

「亮? 店でもついててくれるの?」

 フレンドリーに話しかけてくるのはいいが、急に距離が近い気がするんだが……。
 誰も見てないとはいえ。
 客に見られたら面倒なことになるに違いない。

「はい。私も交代交代にはなると思いますけど……」

「わかったわ。でも、呼んだらすぐ来てよ?」

 何故にそんなに信用されたのかは分からないのだが。
 頼られているようだ。

「わかりました。呼ぶ時は護衛してるどちらかに伝えてください。無線で繋がってるので」

「うん。わかったわ」

 ニコッと笑顔を俺に向けてくる。
 はぁ。
 良くないなぁ。

 このままこの感じが続くと。
 俺が落とされそうだ。

◇◆◇

「あらぁ、社長さーん! 来てくれてありがとー!」

「エレナちゃんようやく来れたよー! 忙しかったんだけど、早く帰ってきたんだ!」

「ふふふっ。エレナの為に有難う!」

 エレナさんはそういうとハグした。
 デレデレしながら男性もハグをする。
 ピッタリと密着している。

 そういうサービスはいいけど。
 俺たちからしたら困るんだよな。
 不用心にハグをされては。

 横を見るとよしさんがニヤニヤしている。
 顔がダラしないですよ?
 俺の念が通じたのかこちらをチラリと見た。

 ブンブンと首を振るう。
 コクコクと頷いているが意味がわかっているかは怪しい。

 もうすぐ交代の時間帯だという時。
 新たな客が来た。
 凄くネトッとした目でエレナさんを見ている。

「今日はこの男達が一緒なのか? 二人きりになれないじゃないか」

「ふふふっ。立ってるだけですよ。私は先生だけしか見えてないですよ?」

「そうだなぁ」

 そういうとおもむろに俺の前に立った。
 なにか攻撃を受けるかと思ったが。
 手に持ってるものを見て察した。

 特に動かなくても大丈夫だろう。
 少し目をつぶるとバシャァっと水をかけられた。

「ハッハッハッ! 本当に立っているだけだなぁ! サンドバッグにしてみるか!?」

 そういって構えている。
 構えを見るに殴られてもなんともないだろう。
 無表情で我慢できるくらいは鍛えているからな。

「先生何するんですか!? 酷いです! そんな人と私は飲みたくない!」

「な、なんだと!? こっちは金出してんだぞ!? 何しようが俺の勝手だろ!?」

 唾を飛び散らせながら。
 エレナさんに怒鳴っている。
 何かあれば間に入れるように少し体の向きを変えて構える。

「この人達は私が雇いました! あなたのお金は関係ない! 帰ってください!」

「なんだとぉ!? この売女が! 二度と来るか!」

 そういうとドスドスと店を後にした。
 エレサさんは俺の体を手拭きで拭いてくれる。

「あんな言い方して……大丈夫なんですか? 俺なんて放っておけばよかったじゃないですか。今後に響かなきゃ良いですけど……」

「そんなの亮が気にすることじゃないわ! 私が嫌だったのよ! あんなジジイ二度と来なきゃいい!」

 そんなこと言っても。
 ああいう人が金を落とすんじゃないのか。
 そうやって敵を作ってるんじゃないか?

「あんまり敵は作らない方がいいんじゃないですか?」

 俺は敵ばかり作ってきた。
 その行く末は大切なものを失うという最も苦痛を伴うもの。
 敵は少ない方がいい。

 自分の教訓からエレサを諭そうとする。
 しかし、今の激昂した気持ちのままでは俺の言葉は入っていかないだろう。

「私は自分の物が汚されるのが1番嫌い! 亮? 大丈夫?」

「エレナさん。お言葉ですが、俺は物じゃないですし。エレナさんのお気に入りでもない。ただの雇用関係だ」

 俺が冷たくそういう。
 エレナさんが頬をふくらせたタイミングで。

『交代の時間よ』

 咲月さんから無線が入った。
 次は蓮さんと咲月さんの護衛。
 少し心配だが。

 さっきのエレナさんへの対応を見ると大丈夫な気がするけどな。
 まぁ、先輩だから大丈夫だろう。

「エレナさん。私達は交代です。また帰りにお送りに来ます」

「亮? 何かあったら来てよ?」

 なんで俺が来なきゃ行けないんだ。
 先輩がつくから大丈夫だって。
 でも、来ない訳にも行かない。

「はい。その時は」

 灯、昔言ってたよな?
 
「亮って、私含めてだけど、ヤバい女に懐かれるよねぇ? 今までの恋愛遍歴なんだっけ? 先輩の女、族の総長の女、既婚者、私。はっはっはっ! なんか癖のある女が惚れちゃうんだね!」

 今回もヤバいやつに好かれたみたいだ。
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