魔法が溢れる世界で大切な人を護る方法

ゆる弥

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4.一年後

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「今日で最後か……よくここまで成長したもんだな。一年でここまでになるとは」

「押忍! 先生のおかげです!」

 あれから一回り身体は大きくなり。
 言葉も徐々にだったが直っていった。
 そんな一年も今日が最後の日。

 話す方は実はもう来なくていいと美麗先生に言われていて、一ヶ月前からは玄龍先生の所にしか来ていない。

 入口がノックされた。

「入れ」

「失礼しますねぇ。あっ、久しぶり。よく一年間頑張ったねぇ」

「いえ。食料や飲み物等、ご都合頂いて有難う御座います。お陰様で、身体も大きくなりました」

 護さんが目を見開く。
 何に驚いているのかはわかる。一年前の俺の話し方からしたらこんな話し方は想像できなかった。

「お、おう。なんか……大丈夫? やりすぎた気もするけど」

「いえ。美麗先生のお陰でここまでになりました。感謝しています」

「そう。玄龍先生的にはどうですか?」

 護さんが玄龍先生に問いかける。
 目をつぶってしばし沈黙。
 咳払いをして語り出した。

「最初は酷いもんだった。体力はないしセンスもない。喧嘩のセンスはあったんだろうが、格闘技のセンスはなかった」

「はぁ。じゃあ……」

「いや、しかしな、こやつ根性だけはあってな。ワシの鍛錬に耐えに耐えてな。もう漆黒レベルだと思うぞ?」

「……いやいやいや。それって俺を超えちゃってるじゃないですか!?」

 護さんが取り乱している。
 そう言われても俺は玄龍先生が思っているほど強くなった気がしていないからな。

 なぜ取り乱しているかというと。
 この道場では強さによって五ランクある。
 白、茶、灰色、黒、漆黒と段々と段階が上がっていく。

 イージスの人達は黒らしい。
 だから同じレベルにしてくれとお願いしたそうだ。
 先生は俺が漆黒だというが。

 何かの間違いじゃないだろうか。
 先生を相手にしていたから自分の強さがどれほどなのか、イマイチ分からない。

「ふむ。手合わせしてみてはどうだ?」

「あっ、それがいいですね。お互い」

 玄龍先生の提案に護さんは頷き、こちらに顔を向け笑って見せた。余裕の表情だ。

「よろしくお願いします!」

 俺はビッと礼をする。
 護さんの笑みが引き攣っていた。
 どうしたんだろうか?
 何か間違えたか?

 中央に二人で立つ。
 真ん中に玄龍先生。
 もう身体に染み付いた構えをする。

 護さんが少し下がった。
 前傾姿勢になっている。
 その構えはあまり良くないと思うんだがな。

「それでは……始め!」

「シッシッ!」

 右の突きはフェイント。
 左で避けた時の喉を潰す気だ。
 定石は左に避ける事だから。

 たしかにな。
 でも、俺は。

「ぐっ!」

 護さんが呻き声をあげる。
 俺に後ろから首に腕を掛けられたからだ。
 そのまま後ろに倒しながら絞める。

 直ぐにタップされた。
 ハッとして手を離す。

 夢中になっていた。
 この一年で集中力も増したと思う。

「ゴホッ! ゴホッ!」

 護さんが首を抑えながら咳き込んでいる。
 ちょっと強く締めすぎたかもしれない。

「……亮。強くなりすぎ。死ぬとこだった。三途の川が見えたわ!」

「そ、そうですか? 私にはもったいない言葉です。すみませんでした」

 ペコリと頭を下げる。

「いや、謝らなくていい。よくぞここまで強くなった。さっきは俺の予想の上を行くスピードで動いたんだな」

「はい。まだ速くはできますが、最小限で後ろを取りました」

「ハッハッハッハッ! すげぇ。すげぇよ亮! 皆に合わせるのが楽しみだな」

「皆……ですか?」

「あぁ。イージスは俺一人でやっている会社じゃない。仲間が九人いる。臨機応変にチームを組んでいるんだ」

「なるほど」

 その後、仕事の説明を軽く受けた。
 まず、依頼人の身辺調査を行う。
 調査結果に伴って危険度を設定しているそうだ。

 危険度により警護するレベルを変える。
 十年前までは装備は一定の装備をしていて、民間の会社の場合は拳銃は持てなかったらしい。

 今の無法地帯は警護するためなら魔法を使っても構わない法律となっている。その代わり、行使する時はしっかりと腕章をしてないといけないらしい。

 不意打ちをくらったりとかなり不利な状況で警護しなければいけないのが、常なんだとか。
 敵はヤバい奴だとマシンガンを持ったりしているらしい。

 そんな時どうするんですか?
 そう問いかけると。かかかかかか
 んー。死を覚悟して突っ込むしかないかなぁという回答を受けた。

 俺はヤバい世界に飛び込んでしまったようだ。
 しかし、ここまで来たんだ。
 人を守ることに命をかける。

「っとまぁ、そんなとこかな? 後は、明日は休んで、明後日は顔合わせね。皆を集まるように言ってるから」

「はい。わかりました!」

「耐え抜いたお祝いに飯でも行く?」

 有難いお誘いを受けてしまった。
 護さんとご飯。
 とても魅力的だが。

「すみません。食料が今日の夜で丁度無くなるように調整していたので……」

「あぁ。じゃあ、明日からの部屋も用意してるから引越ししたらこれで好きなの食べなよ」

 そう言うと護さんが一万円を差し出してくれた。
 礼を言って受け取る。
 そういえば、明日からの生活費って……。

「亮のお金は明日振り込むから。一応一年間は働いてるのと同じように給料を発生させてて、そこから食費と家賃引いて残りは貯金してあったから」

「なんか……有難う御座います」

「いいのいいの。明日はゆっくり休んでぇ。あっ、あとさ、明日スーツ買っておいてね。基本的にスーツで仕事だから」

「わかりました。アカキで買ってきます」

「うん。あと、ネクタイもね。目立たない色の方がいいよ。紺とかグレーとかね」

「わかりました」

 こうして、イージスへの所属が正式に決まった。
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