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14.殺

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 入口が閉められた後にミレイさんと作戦会議だ。

「あの人たち本当に信用できるかな?」

「うーん。どうだろ? 正直に話している感じだったよねぇ」

「あんなに手の内晒すかな? もうちょっと警戒しないのかなと思って」

 話した時の様子を思い出すけど、特に変な所はない気がする。
 ただ『殺』の字の人達の話になった瞬間、関わりたくないような雰囲気を感じた。その人達は嫌われている? それともその人達はスパイとか?

 たしかに字力だけで殺すことができる天漢だ。恐らく人相手だと最強。ボクはこの字を持っていない。取らないと決めていたのだ。使い続ければいつか自分も死ぬ。そんな気配がしたからだ。

「ボク達を信用したんだと思いたいよね。『粋』領から来たって話したし、こっちも警戒を解いたと意思表示したから……」

「それ言っても良かったの?」

「大丈夫だと思うよ? じゃあ、念の為、ボクが寝ながら見張るよ」

 その言葉に安心したのか寛ぎ始めた。

「じゃあ、お願いね。私体拭きたいからあっち向いてて!」

 支持をされるがままにあさっての方向を向いて見てないアピールをする。
 視界の先に戸棚のガラスがあり、光が反射している。そこにはミレイさんが体を拭く後ろ姿が映っていた。

 ゴクリッと喉がなってしまった。
 聞こえてしまったかと思い視線を逸らして下を向く。体を拭く音が響き渡り、さっきみた光景が脳裏に映し出される。

 こんなに意識したことがなかったけど、ミレイさんは綺麗だ。スタイルもいいし魅力的だと思う。

「はぁぁ。サッパリしたぁ。覗いたでしょ?」

「覗いてないって!」

「ふぅーん。そういうことにしておくか」

 ミレイさんが買ってきていた肉を食べている。 
 眺めながら俺も上半身の服を脱いで体を拭く。
 昔はスッポンポンで拭いてたものだよなぁ。

 凄い視線を感じる。
 振り返るとミレイさんがこっちを見ていた。

「なんでミレイさんはこっちみるんだよ!?」

「えっ? 別にいいでしょ?」

 顔を逸らしたミレイさんの顔はほのかに赤く頬を染めていた。
 そんな顔されたらこっちまで恥ずかしくなるじゃん。

 そそくさと服を着る。

「ミレイさん、寝る?」

「そうだねぇ。寝ようか」

 持ってきた荷物から毛布を出す。
 毛布にくるまって顔だけ出す。

 壁に『察』を設置して寝る。

 視界が暗くなった。

 警報のような音がボクの頭の中に鳴り響いた。

 起き上がると壁が静かに壊されていた。
 狙いはミレイさんだったみたい。
 咄嗟に『速』く動き、『衝』撃をのせた拳を放つ。

 鈍い音を立てて吹き飛び壁に激突する。
 壁はクレーターになっていた。
 後ろで物音がする。

 もう一人いた。
 踏み込み、『瞬』時に移動して『力』いっぱい殴った。

 ズドォォォンッッ

 触られたら終わりだと思っていたから殺してしまっても仕方ない。
 床にめり込んだこいつはもう死んでいると思うけど。

 確かめようとすると、壁にいた男がいない。
 咄嗟に文字を設置する。

 肩に手がふれる。
「終わったな?」

「なっ!?」

 男の頬には『殺』の漢字が印されていた。
 驚いた振りをしたボクだった。
 無駄だよ。

「やっぱり危険だったね」

「ん? なぜ生きている?」

「さぁ、何ででしょう?」

 確実に殺す。
 手刀を作り、男の体を『貫』いた。

「ごふっ……」

「やっぱり全員は信頼できなかったか。一応確認のために遺体は端っこに残しておこうか」

 壁を再び作り直してまた念の為、漢字を設置して寝た。
 今度はゆっくりと寝ることができたんだ。

「ふわぁぁぁ」

「なんか夜中凄い音してなかった?」

「良く起きなかったよね。殺し屋が二人来たのに」

 キョトンとした顔をするミレイさん。
 首を傾げる。

「ほら、この二人が襲ってきたんだよ。ボクも危なかった。触られたら普通は命がないからね」

「触られたの?」

「そうだよ。殺すかどうか一回躊躇ったからねぇ」

「触られたのになんで生きてんの?」

「言い方。ボクに死んで欲しいわけ? 『無』を使ったんだよ。たしかどこかの領の幹部が持ってた漢字だったと思う。珍しいんじゃないかなぁ。字力の効果を無効化できる漢字なんだ」

 なんだか呆れられたような顔で見られている。

「なんかやっぱり反則だよね?」

「そうだよ。でも味方で良かったでしょ?」

「まぁねぇ。私の見る目があったってことよね?」

「まぁ、そういうことにしておこうか」

 そういった所で壁が消えた。

「あれ!? 何かありまし……た……コイツらは!」

「なんか夜中に襲われちゃいまして。情報が流れちゃったんですかね?」

「客が来てるとは言ったが、いきなり襲うとは」

 厳しい顔をしている。
 でも、僕としては好都合だったんだよねぇ。

「でも、懸念してた二人がこうやって死んでくれたから良かったですよ」

「いやいや、よく無事でしたね?」

「ボクも色々とありまして」

 目を見開いてこちらを凝視している。
 この二人を下せるくらいの何かがあるんだと驚いたのかもしれない。

「いやはや、頼りになる味方が加わったものですな! ハッハッハッ!」

 ゴッコさんは上機嫌になったようだ。
 革命軍の憂いが取れてよかったのかもしれない。

 これからはゆっくり寝れるといいのだが。
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