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42.帰還
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俺が目が覚めたのはサーヤの膝元だった。
「ん?」
「あっ、ししょー。目が覚めましたか?」
「あぁ。一体どうなったんだ?」
「ワタシはヤマトさんに回復してもらいました。見てください」
促された方を見ると何人かの横たわっている人がいる。
なんだ?
こんな人たちいなかったよな?
「ガイル!」
ヤマトが駆けつけてきてくれる。
「俺は負けたのか?」
「こい!」
腕を引かれるまま何とかついて行く。
足に力が入らない。
時折しゃがみながら歩く。
シュナイザーの近くに横たわるのはピンクの髪の彫りの深い。俺に似た美人がいる。
「マナ……すまんな……」
こんなに綺麗に死んでいるのか。
それならまだよかったか。
「ガイル、マナはただの魔力切れで寝ているだけだ。恐らくだが、宝玉に封印されて魔力の源として使われていたようだ」
俺の身体中の力が抜け地面に頭をつけた。
よかった。
生きていて本当に良かった。
「マナァ……よかった…………くっ……うぅぅ」
目から溢れてくるものが止まらない。
こんなに嬉しいのは、マナが産まれた時以来だ。
リサ、マナは無事だったよ。
生きて帰るからな。
泣きじゃくっているとサーヤが背中をさすってくれた。
「ししょー。よかったですね。マナさん、無事で」
「あぁ。サーヤのおかげだ。最後の変な名前の魔法がなかったら俺たちは死んでたかもしれない」
魔力回復薬を飲ませてくれたらしく、少しすれば目が覚めるだろうとのこと。
シュナイザーは死んでいた。
俺の攻撃が致命傷になったようだ。
盗賊とのやり取りをしていた形跡はあとから探せば見つかるだろう。
このダンジョンは閉鎖しなければないな。
「あれ? ここどこ?」
「マナ!」
「親父じゃん! なんで?」
「お前が行方不明になったって言うから探しに来たんだろうが馬鹿野郎」
「そうだ。変な首輪されて、そこから覚えてないわ」
「無事でよかった」
「あぁー。親父に助けられちゃったかぁ。なんか悔しい!」
「なぜだ?」
「アンタを超えるために旅に出たからだよ!」
こういう口の利き方が全く可愛くはない。
だから、産まれた時は嬉しかったが、子育てを間違えたかと思っていた。
「そっちの可愛い子誰? もしかして愛人?」
「そんなわけあるか。旅の仲間だ」
「へぇ。まぁ、助かった。ありがと!」
「まったく。一度帰るぞ? 母さんが心配してる」
「めんどくせぇけど仕方ねぇか」
コイツはホントに。可愛くない。
マナの仲間は殺されてしまっていたようだ。
形見をダンジョンで見つけたらしい。
悔しがっていたが、俺が仇を取ったと言ったら少しは気が晴れたようだった。
地上へと戻りギルドに報告に行くと驚かれ、逆に疑われた。仕方がないことだろう。
シュナイザーの部屋を調べると隠し金庫があり、そこから証拠が色々と見つかった。
盗賊団は壊滅したといういい知らせになったが。ギルド側も良い人材だったのにと悔しそうだった。
アイツは魔法使いとしては優秀だったからな。
色々と貢献もしていたそうだ。
だが、それも隠れ蓑だったよう。
俺とヤマトはまた引退を表明。
マナはお休みとした。
サーヤは功績を認められて最上級へ二階級昇格が決まった。
それだけ実力があると認められたんだ。
自分の娘のように嬉しかった。
実の娘が、こんな素直な娘じゃないからな。
サーヤは本部に残って腕を磨くらしい。
自分で決めたことだから一人で頑張ると言っていた。
いい仲間が見つかるといいのだが。
その後、ヤマトを谷へ送り、自分たちの街へと戻った。
「お母さん、ただいま!」
「おかえり! 無事でよかった」
リサはマナと涙を流しながら抱き合った。
それを見て俺もジワリと来るものがあった。
本当に無事でよかった。
「あなた。ありがとう」
「あぁ。危なかったけどな」
「若い子と旅してたんだって?」
顔は笑っているが目が笑っていなかった。
「で、弟子だから別に……なっ?」
「ふーん」
しばらく問い詰められたのであった。
男とは弱いものである。
娘はしばらくは家にいたが、じっとしていられないのだろう。また旅立って行った。
どうしているかはわからない。
好きに生きればいい。
行方不明になったらまた親父が探してやる。
この憤怒のアーティファクトと共に。
「ん?」
「あっ、ししょー。目が覚めましたか?」
「あぁ。一体どうなったんだ?」
「ワタシはヤマトさんに回復してもらいました。見てください」
促された方を見ると何人かの横たわっている人がいる。
なんだ?
こんな人たちいなかったよな?
「ガイル!」
ヤマトが駆けつけてきてくれる。
「俺は負けたのか?」
「こい!」
腕を引かれるまま何とかついて行く。
足に力が入らない。
時折しゃがみながら歩く。
シュナイザーの近くに横たわるのはピンクの髪の彫りの深い。俺に似た美人がいる。
「マナ……すまんな……」
こんなに綺麗に死んでいるのか。
それならまだよかったか。
「ガイル、マナはただの魔力切れで寝ているだけだ。恐らくだが、宝玉に封印されて魔力の源として使われていたようだ」
俺の身体中の力が抜け地面に頭をつけた。
よかった。
生きていて本当に良かった。
「マナァ……よかった…………くっ……うぅぅ」
目から溢れてくるものが止まらない。
こんなに嬉しいのは、マナが産まれた時以来だ。
リサ、マナは無事だったよ。
生きて帰るからな。
泣きじゃくっているとサーヤが背中をさすってくれた。
「ししょー。よかったですね。マナさん、無事で」
「あぁ。サーヤのおかげだ。最後の変な名前の魔法がなかったら俺たちは死んでたかもしれない」
魔力回復薬を飲ませてくれたらしく、少しすれば目が覚めるだろうとのこと。
シュナイザーは死んでいた。
俺の攻撃が致命傷になったようだ。
盗賊とのやり取りをしていた形跡はあとから探せば見つかるだろう。
このダンジョンは閉鎖しなければないな。
「あれ? ここどこ?」
「マナ!」
「親父じゃん! なんで?」
「お前が行方不明になったって言うから探しに来たんだろうが馬鹿野郎」
「そうだ。変な首輪されて、そこから覚えてないわ」
「無事でよかった」
「あぁー。親父に助けられちゃったかぁ。なんか悔しい!」
「なぜだ?」
「アンタを超えるために旅に出たからだよ!」
こういう口の利き方が全く可愛くはない。
だから、産まれた時は嬉しかったが、子育てを間違えたかと思っていた。
「そっちの可愛い子誰? もしかして愛人?」
「そんなわけあるか。旅の仲間だ」
「へぇ。まぁ、助かった。ありがと!」
「まったく。一度帰るぞ? 母さんが心配してる」
「めんどくせぇけど仕方ねぇか」
コイツはホントに。可愛くない。
マナの仲間は殺されてしまっていたようだ。
形見をダンジョンで見つけたらしい。
悔しがっていたが、俺が仇を取ったと言ったら少しは気が晴れたようだった。
地上へと戻りギルドに報告に行くと驚かれ、逆に疑われた。仕方がないことだろう。
シュナイザーの部屋を調べると隠し金庫があり、そこから証拠が色々と見つかった。
盗賊団は壊滅したといういい知らせになったが。ギルド側も良い人材だったのにと悔しそうだった。
アイツは魔法使いとしては優秀だったからな。
色々と貢献もしていたそうだ。
だが、それも隠れ蓑だったよう。
俺とヤマトはまた引退を表明。
マナはお休みとした。
サーヤは功績を認められて最上級へ二階級昇格が決まった。
それだけ実力があると認められたんだ。
自分の娘のように嬉しかった。
実の娘が、こんな素直な娘じゃないからな。
サーヤは本部に残って腕を磨くらしい。
自分で決めたことだから一人で頑張ると言っていた。
いい仲間が見つかるといいのだが。
その後、ヤマトを谷へ送り、自分たちの街へと戻った。
「お母さん、ただいま!」
「おかえり! 無事でよかった」
リサはマナと涙を流しながら抱き合った。
それを見て俺もジワリと来るものがあった。
本当に無事でよかった。
「あなた。ありがとう」
「あぁ。危なかったけどな」
「若い子と旅してたんだって?」
顔は笑っているが目が笑っていなかった。
「で、弟子だから別に……なっ?」
「ふーん」
しばらく問い詰められたのであった。
男とは弱いものである。
娘はしばらくは家にいたが、じっとしていられないのだろう。また旅立って行った。
どうしているかはわからない。
好きに生きればいい。
行方不明になったらまた親父が探してやる。
この憤怒のアーティファクトと共に。
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