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40.昔の仲間
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マナのヒントを得た俺たちは街を出てダルミンヘと向かうことにした。
ここのギルドマスターにはとりあえず本部で情報収集をするとそう伝えている。
街道にこのままそっていけばダルミンへと着く。ここの街道は探索者が多い。だからと言ってはなんだが、盗賊の類はみない。
そう、見ないはずなんだ。盗賊なんぞ身なりでわかるはず。本部がここにあるなら盗賊の往来があってもいいはずだ。
何かがおかしい。思慮を巡らせながら街道を歩いているとサーヤが心配そうに覗き込んできた。
「師匠、ここからは命があるかわからないんですよね? 先に言っておきます。お世話になりました!」
「おい。なぜ死ぬ前提なんだ?」
「この先の戦いでワタシは生き残れる気がしません! ワタシには構わず、マナさんを助けてあげてください!」
精一杯の覚悟だったのだろう。その水色の髪をクシャクシャに撫でる。
「馬鹿なことを言うな。俺はサーヤもマナもどちらも大事だ。どっちも無事に帰すさ」
自分に言い聞かせるようにそう呟く。
サーヤは心配そうに目を伏せると縮こまった。
自分のせいで俺が危険になるのが嫌なのだろう。
「サーヤのせいで俺はどうにかなったりしないさ。もしそうなったら、俺の実力不足だ。だから、なんとも思わなくていい」
「無理ですよそんなの!」
「そうかもしれないが……」
サーヤは目をつりあげて睨みつけてくる。
「ワタシのせいで師匠やヤマトさんが傷つくのなら、ここで別れます! その方が……辛いけど……。辛いけどまだマシです!」
訴えるその目からは涙が溢れ出ていた。俺は狼狽えてしまう。俺は娘に泣かれた時が一番どうしていいか分からないのだ。
「お、おい。泣くなって……」
「ワタシは! 誰かの足でまといにはなりたくないんです! だから……」
「足でまといだなんて思ってないぞ? 後ろからの魔法を任せているんだ。頼りにしてる」
優しく語りかけた。俺とヤマトはサーヤを頼りにしているんだぞ。
魔法士は後ろにいるだけで俺たちは安心することができるんだ。
昔はその役目がシュナイザーだった。
頼れる仲間だったよ。
そんな仲間がよからぬことに手を出している。
俺にはそれが許せない。
後始末は仲間である俺たちがつけるべきなんだ。
「本当ですか?」
「あぁ。巻き込んで悪いな」
「そんな事ありません!」
ダルミンへは二日くらいで着いた。
平和な道のりだった。
これまでの道のりが嘘だったかのように。
ギルド本部へ直行する。
今まで見てきたギルドよりも明らかに大きなギルドが姿を現した。
「わぁ。大きい」
「行くぞ」
俺は扉を勢いよく開ける。
窓口はいくつもあり人が多くいる。
一つの窓口へ行くと。
「シュナイザーはいるかな? 本部にいると聞いたんだがね。古い友人のガイルと言えばわかると思うのだが」
「少々お待ちくださいね」
奥へと消えていく。しばらくすると受付嬢が一人の人を伴って出てきた。歳はとっているが変わらないシルバーの長い髪。シワは少し増えたか。
「ホントにガイルじゃないか。ヤマトも。何したんだ? 遥々ここまで」
「お前がまさかギルド職員になってるなんてな」
「その方が都合が良かったのさ。色々とな」
「そうか。外で少し話せないか?」
「あぁ。いいぞ」
受付嬢に手で合図をするとシュナイザーを俺たちの後を着いてきた。
街のハズレの方の外の景色がよく見える小高い丘に来ていた。
そこに座り込む。俺の隣にはヤマト。
サーヤは後ろに陣取る。
少し離れてシュナイザーは座った。
「ここで、昔は馬鹿な話をしてたよな」
「はっ。そうだな。ヤマトが風呂を覗いたとかな! ハッハッハッ!」
シュナイザーは笑いながらヤマトを茶化す。
「そんな話してたかぁ? お前こそ魔法のことばっかりで彼女に愛想つかされてただろが?」
「ハッハッハッ! ちげぇねぇ。あの頃は楽しかったなぁ」
シュナイザーは目を細めて遠くを見つめていた。
「とある筋から聞いたんだが、盗賊団の頭領もやってんのか?」
「……ふむ。何を言っても無駄なようだな。魔法の為だ」
その顔には疲れが見えていた。
「そうか。やめる気は?」
「今の所はない」
「俺達がなぜ来たと思う?」
「わからん。なぜだ?」
「俺の娘が消息不能になった。本部の管轄でだ。おかしいと思ったんだ。海を渡ったなら痕跡が残るはず。なのに、どこで居なくなったのかも不明」
「まさか……」
「ピンクの髪の彫りの深い俺に似た顔だ。傲慢の首輪まで使ったようだな?」
目を見開いているところを見ると心当たりがあるようだな。
やはりマナはシュナイザーの手に落ちたか。
シュナイザーはスクッと立つ。
「今夜、教会に来い。オレは逃げも隠れもせん」
「マナは……生きているのか?」
「……」
そのまま無言で歩いていった。
一体何がどうなっているというんだ。
本当に……シュナイザーが。
クソッ!
地面を殴りつけるが、虚しくなるだけ。
「ガイル、シュナイザーは強いぞ?」
「わかっている。手を貸してくれるか?」
「俺は、お前の為なら命を賭けるさ」
そこまで言ってくれるヤマトに感謝した。
「ワタシも、師匠のために微力ながら加勢します」
「すまんな」
サーヤにも感謝を。俺は娘の仇をとる。
ここのギルドマスターにはとりあえず本部で情報収集をするとそう伝えている。
街道にこのままそっていけばダルミンへと着く。ここの街道は探索者が多い。だからと言ってはなんだが、盗賊の類はみない。
そう、見ないはずなんだ。盗賊なんぞ身なりでわかるはず。本部がここにあるなら盗賊の往来があってもいいはずだ。
何かがおかしい。思慮を巡らせながら街道を歩いているとサーヤが心配そうに覗き込んできた。
「師匠、ここからは命があるかわからないんですよね? 先に言っておきます。お世話になりました!」
「おい。なぜ死ぬ前提なんだ?」
「この先の戦いでワタシは生き残れる気がしません! ワタシには構わず、マナさんを助けてあげてください!」
精一杯の覚悟だったのだろう。その水色の髪をクシャクシャに撫でる。
「馬鹿なことを言うな。俺はサーヤもマナもどちらも大事だ。どっちも無事に帰すさ」
自分に言い聞かせるようにそう呟く。
サーヤは心配そうに目を伏せると縮こまった。
自分のせいで俺が危険になるのが嫌なのだろう。
「サーヤのせいで俺はどうにかなったりしないさ。もしそうなったら、俺の実力不足だ。だから、なんとも思わなくていい」
「無理ですよそんなの!」
「そうかもしれないが……」
サーヤは目をつりあげて睨みつけてくる。
「ワタシのせいで師匠やヤマトさんが傷つくのなら、ここで別れます! その方が……辛いけど……。辛いけどまだマシです!」
訴えるその目からは涙が溢れ出ていた。俺は狼狽えてしまう。俺は娘に泣かれた時が一番どうしていいか分からないのだ。
「お、おい。泣くなって……」
「ワタシは! 誰かの足でまといにはなりたくないんです! だから……」
「足でまといだなんて思ってないぞ? 後ろからの魔法を任せているんだ。頼りにしてる」
優しく語りかけた。俺とヤマトはサーヤを頼りにしているんだぞ。
魔法士は後ろにいるだけで俺たちは安心することができるんだ。
昔はその役目がシュナイザーだった。
頼れる仲間だったよ。
そんな仲間がよからぬことに手を出している。
俺にはそれが許せない。
後始末は仲間である俺たちがつけるべきなんだ。
「本当ですか?」
「あぁ。巻き込んで悪いな」
「そんな事ありません!」
ダルミンへは二日くらいで着いた。
平和な道のりだった。
これまでの道のりが嘘だったかのように。
ギルド本部へ直行する。
今まで見てきたギルドよりも明らかに大きなギルドが姿を現した。
「わぁ。大きい」
「行くぞ」
俺は扉を勢いよく開ける。
窓口はいくつもあり人が多くいる。
一つの窓口へ行くと。
「シュナイザーはいるかな? 本部にいると聞いたんだがね。古い友人のガイルと言えばわかると思うのだが」
「少々お待ちくださいね」
奥へと消えていく。しばらくすると受付嬢が一人の人を伴って出てきた。歳はとっているが変わらないシルバーの長い髪。シワは少し増えたか。
「ホントにガイルじゃないか。ヤマトも。何したんだ? 遥々ここまで」
「お前がまさかギルド職員になってるなんてな」
「その方が都合が良かったのさ。色々とな」
「そうか。外で少し話せないか?」
「あぁ。いいぞ」
受付嬢に手で合図をするとシュナイザーを俺たちの後を着いてきた。
街のハズレの方の外の景色がよく見える小高い丘に来ていた。
そこに座り込む。俺の隣にはヤマト。
サーヤは後ろに陣取る。
少し離れてシュナイザーは座った。
「ここで、昔は馬鹿な話をしてたよな」
「はっ。そうだな。ヤマトが風呂を覗いたとかな! ハッハッハッ!」
シュナイザーは笑いながらヤマトを茶化す。
「そんな話してたかぁ? お前こそ魔法のことばっかりで彼女に愛想つかされてただろが?」
「ハッハッハッ! ちげぇねぇ。あの頃は楽しかったなぁ」
シュナイザーは目を細めて遠くを見つめていた。
「とある筋から聞いたんだが、盗賊団の頭領もやってんのか?」
「……ふむ。何を言っても無駄なようだな。魔法の為だ」
その顔には疲れが見えていた。
「そうか。やめる気は?」
「今の所はない」
「俺達がなぜ来たと思う?」
「わからん。なぜだ?」
「俺の娘が消息不能になった。本部の管轄でだ。おかしいと思ったんだ。海を渡ったなら痕跡が残るはず。なのに、どこで居なくなったのかも不明」
「まさか……」
「ピンクの髪の彫りの深い俺に似た顔だ。傲慢の首輪まで使ったようだな?」
目を見開いているところを見ると心当たりがあるようだな。
やはりマナはシュナイザーの手に落ちたか。
シュナイザーはスクッと立つ。
「今夜、教会に来い。オレは逃げも隠れもせん」
「マナは……生きているのか?」
「……」
そのまま無言で歩いていった。
一体何がどうなっているというんだ。
本当に……シュナイザーが。
クソッ!
地面を殴りつけるが、虚しくなるだけ。
「ガイル、シュナイザーは強いぞ?」
「わかっている。手を貸してくれるか?」
「俺は、お前の為なら命を賭けるさ」
そこまで言ってくれるヤマトに感謝した。
「ワタシも、師匠のために微力ながら加勢します」
「すまんな」
サーヤにも感謝を。俺は娘の仇をとる。
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