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39.情報屋

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 次の街の衛兵に説明をするのに時間を取られてしまった。危なく誘拐犯にされる所だった。なんとか女性達の説明で難を逃れたのであった。

 そのままギルドへと向かう。女性達を見つけたということと、盗賊を壊滅させたということを伝えた。

 受付嬢は裏へと回り、ギルドマスターを連れてきたのだ。

「あなた達ですか!? 盗賊団を壊滅させてくれたという人達は!?」

「そうだ。だがな、一つの拠点を潰したに過ぎない。奴らの本部を知らないか?」

 俺がそう口にすると、ギルドマスターは苦虫を噛み潰したような顔をした。まずいことを聞いただろうか。

「それが知れていれば、私たちはすぐにでも襲撃するでしょう!」

「そうか。わからんか……」

「しかしですよ、この先の街はギルド本部があります。奴らはなぜ逃げおおせているのか不思議で仕方ないんですよ」

 そうだ。たしかに本部から近いのに盗賊のヤツらが逃げられているのは何かしらの理由があると思われる。

 最初に思いつくのは行くのが不可能な所に本部があるというもの。高い山の山頂とか、海底とか。しかし、それには物や人を運ぶのに適していない。

 次に考えられるのは何者かがこちらの動向を監視できているということ。千里眼のような特殊な能力を持っているということ。

 最後に、一番考えたくないのがこれだ。ギルドの中にスパイがいるというもの。考えたくは無いが、これが一番現実的なものである。

「たしかにそうだな。少し俺も動いてみよう」

「鬼が動きますか……」

「裏でな」

 それだけギルドマスターへ伝えるとギルドを後にした。

 ギルドからメインの通りを奥へ奥へと歩いていく。

「ししょー? どこに行くんですか?」

「あぁ。ちょっと情報屋の所にな」

「マナさんの居場所がわかるんですか!?」

「いや、情報があるかどうかはわからん」

 裏の通りへと行き、更に人通りのないところに出た。
 
 怪しい店が並ぶ通りだ。煙が出ている店もあれば、妙に甘い匂いのする店もある。

「ししょー?」

「ガイル、あいつのところに行くのか?」

 ヤマトは心当たりがあったようで俺に問いかけてきた。

 昔俺達が懇意にしていた人だった。だから知っていて当然。

「そうだ」

 俺がそう呟くとヤマトは顔を歪めた。何がそんなに苦手なのかわからないが、ヤマトはあの人が嫌いらしい。

 たどり着いたのは黒い建物に黒い扉の突いた怪しい店。窓も黒くなっている。

 ドアを引くとドアの軋む音が聞こえ、ギギギィィと耳障りな音が鳴り響く。

「あらぁ? だれかしらぁ?」

 バーカウンターの奥には化粧の濃いアンニュイな雰囲気の女性がグラスを磨いていた。
 
 カウンターに座るとエールを頼む。

「あらぁ? 鬼のお出ましとは何事かしらぁ?」

「娘が捕らわれている。この辺を牛耳っている盗賊団の本部はどこだ?」

「うぅん。辛辣ねぇ。教えてもいいけど……」

「金ならある」

 その女性は少し逡巡したようだった。何故かと考えた時、恐らくこの女性にも危険が及ぶのかもしれない。

「お金ねぇ……」

「命の危険があるなら壊滅させるから安心してくれ」

 俺はそう言い切った。危険があったとしても壊滅させれば関係ない。

 苦笑いしながらその女性はグラスを置いて顔を近づけた。

「私は、誰にも守ってもらわないわ。そろそろ潮時だからここを捨ててどこかへ行くとするわ」

「あんた、歳とらねぇんだな?」

「ふふふっ。永遠の美を手に入れたからねぇ」

 その女性の髪にはキラリと光る金装飾の髪留めが。
 そういえば色欲の髪留めは色気を放つと言われている七大罪具《ナイトール》だったな。

 そんなことをふと思い出した。
 あれも現在は行方不明のはず。
 歳をとらないアーティファクトもあるのかもしれないな。

「あの組織の本部はダルミンよ」

「だったら、ギルド本部は何をしてる?」

「ふふふっ。まず、ギルド本部には誰がいると思う? 魔法を教えている人よ?」

 俺の頭をよぎったのは旅を一緒にしていた魔法士の男。

 まさかあの男が本当にいるのか?

「シュナイザーか?」

「ご名答! そのシュナイザーが本部を操作しているわ。同時に盗賊団を仕切っている」

 愕然とした。あの生真面目な男がいったいなんで盗賊団なんて。
 到底信じられない。
 情報量にギルドカードを出す。
 その女性は端末にカードをかざすと戻した。

「私が話したということはバレれば死ぬことになるわぁ」

「うまくやるさ」

「まぁ、いいわ。姿を消すからまたどこかで」

 その女性はカウンターの裏へと消えるとどこかへと行ったようだ。

「えぇ? ししょー、さっきの人どっかいっちゃいましたよ!?」

「馬鹿かおめぇは! 身を隠したんだろうよ。俺達へ最後に伝えたんだろうよ」

「そんなに危険なんですか!? 大丈夫なんですか!? 私達!」

「これから乗り込むんだぁ。危険も何もねぇだろぉ! なぁ? ガイル?」

 サーヤが慌てているのをヤマトは宥めながら現状の自分たちの立場を教えている。

 そう。俺達はもう誰に命を狙われるかわからない。そんな危険な立場になってしまった。

 盗賊団本部はダルミンにある。それさえわかれば探しようはある。

 さぁ、マナを探すのも大詰めだ。
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