32 / 42
32.行く手を阻むもの
しおりを挟む
その後はローラと晩ごはんを食べ、帰路について泥のように眠ったのだ。
その次も休息日だったのだが、ほぼ部屋から出ず寝ていたのだった。
「ししょー、ヤマトさんもそんなに眠かったんですかぁ? ワタシ昨日暇だったんですよぉ!?」
「あぁ。ちょっと疲れがたまっていたみたいだな」
「同じーく!」
サーヤが疑問に思うのも仕方がない。
しかし、原因であるサーヤは何も知らないから言うこともできない。
疲れたということにしていればいいのだ。
「むー。まぁいいですけど。疲れはとれましたし! 今日は色欲の花園に向かうんですよね?」
「あぁ。そうだ」
街の外へと向かっているとローラが送りに来てくれていた。
「サーヤ、また会いたいですわ」
「うん! また会いに来るね!」
二人は抱き合って別れを惜しんでいた。
ローラは目に涙を溜めている。
次に会えるのはいつになるかわからない。
それに、探索者は生きて帰ることができるかはわからない。これが最後になる可能性だってある。ローラがそこまで考えているかはわからないが。
「おじ様達も、また無事にお会いしたいですわ」
「そうだな。娘が見つかったら一緒によることにするよ」
もしかしたらサーヤより、ローラの方が探索者のことを理解しているのかもしれない。
俺とヤマトは遠くなるローラにずっと手を振っていた。
「ローラさんとまた会えると良いな」
「まずは、俺達は生き残ることだ」
「はい! そうですね!」
街を背に俺達は色欲の花園へと向かって行った。花園までは街道をいく。
しばらく歩いていると戻ってくる探索者がいる。
一体どうしたというのだろうか。
「おぉ。あんたらも花園見学か?」
装備が探索者風の三人の男。
「あぁ。そんなもんだ。きれいだったか?」
「いやぁ。それがなぁ……」
三人は顔を見やって眉間に皺を寄せている。
「街道をドラゴンが塞いでんだよ。ずっと寝てるんだけどな」
「ドラゴン? 種族は?」
「ありゃあスティールドラゴンだな」
その探索者は諦めたように手をバンザイしてそう呟いた。
それは特級以外の探索者は諦めざるを得ないだろう。
体が鋼鉄に覆われた強敵だ。
「情報感謝する」
そう口にして俺は先へ進んだ。
「おい! 引き返さないのか!?」
「あぁ。ドラゴンっていうのも見てみたいからな」
男は目を丸くしている。
そんなやつがいるのは不思議なんだろう。
「そうか。あんた変わってるな。気をつけてな!」
「ありがとうよ」
背を向けながら手を振る。
ヤマトとサーヤは後ろから小走りでついてきた。
「俺様はくえねぇからな?」
「わかってる。俺がやる」
サーヤは眉をハの字にして心配そうだ。
「強いんですか? 大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。体は鋼鉄に覆われているが、それは外側だけだ。腹は柔らかい」
「へぇー。私もお手伝いします!」
「そうだな。頼む」
「はい!」
今回はサーヤに手伝ってもらうこともありそうだ。
俺が「頼む」というと目を輝かせていた。
戦う時に手伝えるのが嬉しいようだ。
三人で街道を歩いていると断崖絶壁の壁が見えてきた。
その真ん中には切れ目があり花園へとつながる道になっているのだ。
道の真ん中には巨大なドラゴンが寝転んでいる。
「ありゃあ。たしかにスティールドラゴンだ」
「うわぁ。おっきいですねぇ!」
サーヤは大きさに圧倒されている。いままで見た個体より大きいかもしれないな。
「硬さを試してみるか」
「何する気ですか!?」
「ここにいろ」
サーヤとヤマトを置き去りにしてドラゴンへと駆ける。
魔力を腕輪へと流し込み赤黒の煙を宙に滞空させ。
その煙を渾身の力で打ち付けた。
「空鬼《くうき》」
打ち出されたその塊はレーザーのように突き進んでいき。ドラゴンの体へと衝突した。
轟音が響き渡り。
衝撃で吹き飛ばされた俺は近くに着地して様子を見る。
ドラゴンは首をもたげてこちらをにらむ。
「グオラァァァァァ!」
ドラゴンは咆哮しながら起き上がった。
手足はそんなに長くない。
それゆえこのドラゴンは四足歩行だ。
体は少し傷がついた程度のよう。
「ちょっとー! 怒っちゃったじゃないですかぁ!」
サーヤに注意するが気にしない。
「俺は下に潜りこむから気を引いてくれ!」
「えぇ!? ドラゴンの気を引くんですか!?」
「頼む!」
無茶ブリなことはわかっているが、できるのは上級魔法以上を使えるサーヤしかいない。
俺とヤマトは魔法士ではないため、中級以上は使うことができない。
「わかりましたよぉ! もう!」
目を吊り上げて怒鳴りながら魔力を集めている。
「こっち向きなさい! ダイダルウェーブ!」
サーヤの前には大きな波がおき、ドラゴンへと襲い掛かる。
口へと魔力を溜めていくドラゴン。
その隙を見逃さずに懐へと駆ける。
サーヤが狙われている。それはわかっているが、ヤマトを信頼している。アイツの結界は硬いからな。
レーザーが打ち出される音を聞きながら懐へと潜りこむ。
巨大な腹の下は薄暗い。核のありそうなところを狙う。胸の真ん中あたりだ。
魔力を多めに腕輪に流し、赤黒の怒りの力を腕全体に纏わせる。
「俺の行く手を阻むものは蹴散らす」
そして、引き絞った拳を天へと突きだす。
「天鬼」
凄まじい轟音が鳴り響き、ドラゴンの胴体は木端微塵に吹き飛ばされた。そこからはきれいな雲一つない青空が見えた。
その次も休息日だったのだが、ほぼ部屋から出ず寝ていたのだった。
「ししょー、ヤマトさんもそんなに眠かったんですかぁ? ワタシ昨日暇だったんですよぉ!?」
「あぁ。ちょっと疲れがたまっていたみたいだな」
「同じーく!」
サーヤが疑問に思うのも仕方がない。
しかし、原因であるサーヤは何も知らないから言うこともできない。
疲れたということにしていればいいのだ。
「むー。まぁいいですけど。疲れはとれましたし! 今日は色欲の花園に向かうんですよね?」
「あぁ。そうだ」
街の外へと向かっているとローラが送りに来てくれていた。
「サーヤ、また会いたいですわ」
「うん! また会いに来るね!」
二人は抱き合って別れを惜しんでいた。
ローラは目に涙を溜めている。
次に会えるのはいつになるかわからない。
それに、探索者は生きて帰ることができるかはわからない。これが最後になる可能性だってある。ローラがそこまで考えているかはわからないが。
「おじ様達も、また無事にお会いしたいですわ」
「そうだな。娘が見つかったら一緒によることにするよ」
もしかしたらサーヤより、ローラの方が探索者のことを理解しているのかもしれない。
俺とヤマトは遠くなるローラにずっと手を振っていた。
「ローラさんとまた会えると良いな」
「まずは、俺達は生き残ることだ」
「はい! そうですね!」
街を背に俺達は色欲の花園へと向かって行った。花園までは街道をいく。
しばらく歩いていると戻ってくる探索者がいる。
一体どうしたというのだろうか。
「おぉ。あんたらも花園見学か?」
装備が探索者風の三人の男。
「あぁ。そんなもんだ。きれいだったか?」
「いやぁ。それがなぁ……」
三人は顔を見やって眉間に皺を寄せている。
「街道をドラゴンが塞いでんだよ。ずっと寝てるんだけどな」
「ドラゴン? 種族は?」
「ありゃあスティールドラゴンだな」
その探索者は諦めたように手をバンザイしてそう呟いた。
それは特級以外の探索者は諦めざるを得ないだろう。
体が鋼鉄に覆われた強敵だ。
「情報感謝する」
そう口にして俺は先へ進んだ。
「おい! 引き返さないのか!?」
「あぁ。ドラゴンっていうのも見てみたいからな」
男は目を丸くしている。
そんなやつがいるのは不思議なんだろう。
「そうか。あんた変わってるな。気をつけてな!」
「ありがとうよ」
背を向けながら手を振る。
ヤマトとサーヤは後ろから小走りでついてきた。
「俺様はくえねぇからな?」
「わかってる。俺がやる」
サーヤは眉をハの字にして心配そうだ。
「強いんですか? 大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。体は鋼鉄に覆われているが、それは外側だけだ。腹は柔らかい」
「へぇー。私もお手伝いします!」
「そうだな。頼む」
「はい!」
今回はサーヤに手伝ってもらうこともありそうだ。
俺が「頼む」というと目を輝かせていた。
戦う時に手伝えるのが嬉しいようだ。
三人で街道を歩いていると断崖絶壁の壁が見えてきた。
その真ん中には切れ目があり花園へとつながる道になっているのだ。
道の真ん中には巨大なドラゴンが寝転んでいる。
「ありゃあ。たしかにスティールドラゴンだ」
「うわぁ。おっきいですねぇ!」
サーヤは大きさに圧倒されている。いままで見た個体より大きいかもしれないな。
「硬さを試してみるか」
「何する気ですか!?」
「ここにいろ」
サーヤとヤマトを置き去りにしてドラゴンへと駆ける。
魔力を腕輪へと流し込み赤黒の煙を宙に滞空させ。
その煙を渾身の力で打ち付けた。
「空鬼《くうき》」
打ち出されたその塊はレーザーのように突き進んでいき。ドラゴンの体へと衝突した。
轟音が響き渡り。
衝撃で吹き飛ばされた俺は近くに着地して様子を見る。
ドラゴンは首をもたげてこちらをにらむ。
「グオラァァァァァ!」
ドラゴンは咆哮しながら起き上がった。
手足はそんなに長くない。
それゆえこのドラゴンは四足歩行だ。
体は少し傷がついた程度のよう。
「ちょっとー! 怒っちゃったじゃないですかぁ!」
サーヤに注意するが気にしない。
「俺は下に潜りこむから気を引いてくれ!」
「えぇ!? ドラゴンの気を引くんですか!?」
「頼む!」
無茶ブリなことはわかっているが、できるのは上級魔法以上を使えるサーヤしかいない。
俺とヤマトは魔法士ではないため、中級以上は使うことができない。
「わかりましたよぉ! もう!」
目を吊り上げて怒鳴りながら魔力を集めている。
「こっち向きなさい! ダイダルウェーブ!」
サーヤの前には大きな波がおき、ドラゴンへと襲い掛かる。
口へと魔力を溜めていくドラゴン。
その隙を見逃さずに懐へと駆ける。
サーヤが狙われている。それはわかっているが、ヤマトを信頼している。アイツの結界は硬いからな。
レーザーが打ち出される音を聞きながら懐へと潜りこむ。
巨大な腹の下は薄暗い。核のありそうなところを狙う。胸の真ん中あたりだ。
魔力を多めに腕輪に流し、赤黒の怒りの力を腕全体に纏わせる。
「俺の行く手を阻むものは蹴散らす」
そして、引き絞った拳を天へと突きだす。
「天鬼」
凄まじい轟音が鳴り響き、ドラゴンの胴体は木端微塵に吹き飛ばされた。そこからはきれいな雲一つない青空が見えた。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
十人十色の強制ダンジョン攻略生活
ほんのり雪達磨
ファンタジー
クリアしなければ、死ぬこともできません。
妙な部屋で目が覚めた大量の人種を問わない人たちに、自称『運営』と名乗る何かは一方的にそう告げた。
難易度別に分けられたダンジョンと呼ぶ何かにランダムに配置されていて、クリア条件を達成しない限りリスポーンし続ける状態を強制されてしまった、らしい。
そんな理不尽に攫われて押し付けられた人たちの強制ダンジョン攻略生活。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる