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27.中での護衛?
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馬車が走りだした頃。
「ワタクシは本当に運がいいですわ。いい探索者の方と会えたんですもの。女性を連れているならワタクシが襲われたりすることはないでしょうし」
ワタシは馬車に揺られながらお嬢様の話し相手をしなければいけなくなってしまいました。
何を話せばいいかわからないワタシ。どうすればいいんだろう。胸がドキドキしながら体が緊張で固くなる。
「そんなに緊張することありませんわよ? ワタクシとお話ししましょう?」
「は、はい!」
目の前のお嬢様はクルクルと長い髪がまかれてお花みたいないい香りがする。鼻が動いてしまいそうになる。
「あなたも探索者ですの?」
「あ、はい! そうです! あの赤い髪の方の弟子です!」
「ふーん。そうなのねぇ。ダンディなおじさまよねぇ? すごくワタクシの心をざわめかせますわ」
窓の外の師匠を見る目がなんだか色っぽくて、危険な香りを醸し出している。
「あの! ワタシの師匠ですよ! 師匠は結婚してますし、娘さんだっています! 今は娘さんを探す旅をしているんです!」
「あらぁ。余計いいですわねぇ。ダンディで凛々しくて。第二夫人でもいいですわぁ」
第二夫人だなんて、貴族しか何人も妻なんていませんよ。
それにそれに、ししょーは奥さん一筋なんですから。そうなんですからだから……諦めるしかないんですから。
だんだんと悲しくなってきて目じりに涙がにじんでしまった。
「ふふふっ。嘘ですわよ。ちょっといじわるしてみただけですわ。ダンディでいいなと思ったのは本当ですけど、奪うつもりはありませんわ」
「奪うもなにも、別にワタシのものじゃ……」
「隠しても無駄ですわ。お師匠様を好いているんでしょう? いいじゃありませんか」
直球でそんなことを言われたことがなかったので、顔が熱くなる。なんだか頭がボーッとする。
「あらまぁ。耳まで赤くなって可愛いですわねぇ。からかいがいがありますわぁ」
「もぉ! からかわないでください! 別に赤くなってません!」
頬を膨らませてそっぽを向く。するとローラさんはクスクスと笑っていた。
「ねぇ、あなた名前は? まだ名前を聞いてませんでしたわ?」
「サーヤです」
「サーヤは、どうして旅に出たんですの? ワタクシは色々あって、恐くてあまり外に出たくないのですわ……」
ローラさんは急に目を伏せて神妙な面持ちで呟いた。
なんだか天気まで曇ってきたように外が暗くなる。
「私は人を守れる人になりたい! その為には力が必要なんです! 今はまだ力が足りません。ししょーに色々と教わりながら強くなるんです!」
「そう……サーヤは強いのね? ちゃんと自分の信念を貫いているのですわね。羨ましいですわ」
「そんなことないですけど。一体何があったんです? よかったらお話を聞きますよ?」
目を瞑るとローラさんは話し出した。
「ワタクシは家の仕事で少し離れた街に視察へ行ったりしていたんですわ。その時には探索者の方に往復の依頼をしていたの。無事に街について視察を終えて、宿の部屋にいたときですわ。夜中になり、扉の鍵を壊されて中に誰かが入ってきたの」
そこまで聞いた時点でワタシは背中がゾワリと嫌な感じがしたわ。
ワタシの考えていることが実際に起こっていたら最悪よ。
「その入ってきたのは探索者の人でワタクシを襲いに来たようでしたわ。私は暴れて抵抗したの。なんとか隙を見て逃げ出したのですが。ワタクシは体が震えて止まらなかったのですわ。ギルドに訴えてギルド経由でお父様に連絡してもらい、私兵を呼んでもらったの」
震えるローラさんを見て、ワタシははらわたが煮えくり返るくらい怒りがわいてきた。
こんなか弱い女性にそんなことをする探索者がいるなんて恥ずかしいにも程がある。
一体どんな探索者なのか。
どこにいるのか。
探し出して殺したいくらいだ。
「辛いことを思い出させてごめんなさい。そんな辛い経験をしていたんですね。ただ探索者が嫌いなだけかと思ったから……」
「いいのですわ。なんか話したら少し楽になったの。外にいるミルトは恐らくワタクシがただ嫌っているだけだと思っているのですわ」
「話した方がいいんじゃないですか?」
「そんなこと話したら、探索者を探して殺そうとしますわ」
それはワタシもそう思ったくらいだからそうだろう。
「どこにいるかはわかっているんですか?」
「カレロにいると思いますわ。あそこを拠点にしている探索者だもの」
「見つけたら、必ず痛めつけてやります!」
「ふふふっ。ありがとう」
なんだが、外が騒がしい。窓から外を見るとウルフ系の魔物が近づいてきている。
「まぁ! 魔物ですわ! 大丈夫かしら!?」
「大丈夫ですよ。放っておきましょう」
「えぇ!? あんな大群!」
騒いでいると黒い何かがバクンと魔物の群れを飲み込んだ。
「今のなんですの!?」
「あれは、ヤマトさんですね」
「あの不気味な黒い方ですの? あの方から敵意を感じますわ!」
「あぁ……それは、ししょーによらないようにだと思います」
「あのおじ様に?」
「実はヤマトさんはししょーが好きでして……」
「まぁ! なんというか、最近のおじ様って進んでいますのね」
そういうことではないと思うけど。と思いながらもなんだかんだで楽しく会話をしている自分がいることに驚くのであった。
「ワタクシは本当に運がいいですわ。いい探索者の方と会えたんですもの。女性を連れているならワタクシが襲われたりすることはないでしょうし」
ワタシは馬車に揺られながらお嬢様の話し相手をしなければいけなくなってしまいました。
何を話せばいいかわからないワタシ。どうすればいいんだろう。胸がドキドキしながら体が緊張で固くなる。
「そんなに緊張することありませんわよ? ワタクシとお話ししましょう?」
「は、はい!」
目の前のお嬢様はクルクルと長い髪がまかれてお花みたいないい香りがする。鼻が動いてしまいそうになる。
「あなたも探索者ですの?」
「あ、はい! そうです! あの赤い髪の方の弟子です!」
「ふーん。そうなのねぇ。ダンディなおじさまよねぇ? すごくワタクシの心をざわめかせますわ」
窓の外の師匠を見る目がなんだか色っぽくて、危険な香りを醸し出している。
「あの! ワタシの師匠ですよ! 師匠は結婚してますし、娘さんだっています! 今は娘さんを探す旅をしているんです!」
「あらぁ。余計いいですわねぇ。ダンディで凛々しくて。第二夫人でもいいですわぁ」
第二夫人だなんて、貴族しか何人も妻なんていませんよ。
それにそれに、ししょーは奥さん一筋なんですから。そうなんですからだから……諦めるしかないんですから。
だんだんと悲しくなってきて目じりに涙がにじんでしまった。
「ふふふっ。嘘ですわよ。ちょっといじわるしてみただけですわ。ダンディでいいなと思ったのは本当ですけど、奪うつもりはありませんわ」
「奪うもなにも、別にワタシのものじゃ……」
「隠しても無駄ですわ。お師匠様を好いているんでしょう? いいじゃありませんか」
直球でそんなことを言われたことがなかったので、顔が熱くなる。なんだか頭がボーッとする。
「あらまぁ。耳まで赤くなって可愛いですわねぇ。からかいがいがありますわぁ」
「もぉ! からかわないでください! 別に赤くなってません!」
頬を膨らませてそっぽを向く。するとローラさんはクスクスと笑っていた。
「ねぇ、あなた名前は? まだ名前を聞いてませんでしたわ?」
「サーヤです」
「サーヤは、どうして旅に出たんですの? ワタクシは色々あって、恐くてあまり外に出たくないのですわ……」
ローラさんは急に目を伏せて神妙な面持ちで呟いた。
なんだか天気まで曇ってきたように外が暗くなる。
「私は人を守れる人になりたい! その為には力が必要なんです! 今はまだ力が足りません。ししょーに色々と教わりながら強くなるんです!」
「そう……サーヤは強いのね? ちゃんと自分の信念を貫いているのですわね。羨ましいですわ」
「そんなことないですけど。一体何があったんです? よかったらお話を聞きますよ?」
目を瞑るとローラさんは話し出した。
「ワタクシは家の仕事で少し離れた街に視察へ行ったりしていたんですわ。その時には探索者の方に往復の依頼をしていたの。無事に街について視察を終えて、宿の部屋にいたときですわ。夜中になり、扉の鍵を壊されて中に誰かが入ってきたの」
そこまで聞いた時点でワタシは背中がゾワリと嫌な感じがしたわ。
ワタシの考えていることが実際に起こっていたら最悪よ。
「その入ってきたのは探索者の人でワタクシを襲いに来たようでしたわ。私は暴れて抵抗したの。なんとか隙を見て逃げ出したのですが。ワタクシは体が震えて止まらなかったのですわ。ギルドに訴えてギルド経由でお父様に連絡してもらい、私兵を呼んでもらったの」
震えるローラさんを見て、ワタシははらわたが煮えくり返るくらい怒りがわいてきた。
こんなか弱い女性にそんなことをする探索者がいるなんて恥ずかしいにも程がある。
一体どんな探索者なのか。
どこにいるのか。
探し出して殺したいくらいだ。
「辛いことを思い出させてごめんなさい。そんな辛い経験をしていたんですね。ただ探索者が嫌いなだけかと思ったから……」
「いいのですわ。なんか話したら少し楽になったの。外にいるミルトは恐らくワタクシがただ嫌っているだけだと思っているのですわ」
「話した方がいいんじゃないですか?」
「そんなこと話したら、探索者を探して殺そうとしますわ」
それはワタシもそう思ったくらいだからそうだろう。
「どこにいるかはわかっているんですか?」
「カレロにいると思いますわ。あそこを拠点にしている探索者だもの」
「見つけたら、必ず痛めつけてやります!」
「ふふふっ。ありがとう」
なんだが、外が騒がしい。窓から外を見るとウルフ系の魔物が近づいてきている。
「まぁ! 魔物ですわ! 大丈夫かしら!?」
「大丈夫ですよ。放っておきましょう」
「えぇ!? あんな大群!」
騒いでいると黒い何かがバクンと魔物の群れを飲み込んだ。
「今のなんですの!?」
「あれは、ヤマトさんですね」
「あの不気味な黒い方ですの? あの方から敵意を感じますわ!」
「あぁ……それは、ししょーによらないようにだと思います」
「あのおじ様に?」
「実はヤマトさんはししょーが好きでして……」
「まぁ! なんというか、最近のおじ様って進んでいますのね」
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