憤怒のアーティファクト~伝説のおっさん、娘を探すために現役に復帰し無双する~

ゆる弥

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15.やはり娘はじゃじゃ馬だ

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 街までは順調に進むことができた。その為、早くに宿を取りに行ったのだ。

「二部屋空いてるか?」
「いやー。一部屋しか空いてないんですよー」
「じゃあ、別の──」
「──お安くしますよ? 二人部屋ですし?」

 サーヤに目配せをする。すると、神妙な面持ちで頷いた。

「じゃあ、安くしてくれよ? ここに決めるから」
「ありがとうございます!」
 
 宿を決めると早速部屋に行きローブを脱いだ。

「ししょー! 先に良いですか?」
「おう。体をしっかり温めろ? 熱があがったら大変だからな?」
「はぁーい!」

 勢いよくシャワールームに入っていくサーヤ。

「あっ、服を着てから出てきてくれよー!?」
「はぁーい!」

 本当に分かっているんだか。
 俺もローブを乾かしながら記憶をたどる。
 この街にローブを売っている店があったか。

 街のはずれにあった気がする。けど、あいにくこの雨だ。今日はもう外には出たくない。

 ちょうどいいことにここは食堂のある宿屋だ。ここで飯を食ってローブは明日にしよう。

 窓からはシトシトと雨水の音が耳を刺激する。街が暗く見え、心まで暗くされそうだ。

 マナは生きているだろうか。そんな不安が湧き上がってくる。

「ししょー! いいですよー!」

 視線の先には下着姿のマナが。

「だから、服を着ろ!」
「あっ、そうだった!」

 サーヤがいることで俺は明るい気持ちのままマナを探すことができているのかもしれない。
 この子がいなければ、俺は途中でダメになっていたかも。

「いいですよー」

 サーヤと入れ替わりシャワーを浴びて部屋へと戻るとサーヤがベッドにちょこんと座っていた。

「ん? どうした?」
「あっ。いえ。なんか街並みを見ていたら寂しくなってきて。師匠が一緒でよかったです」
「ふっ。俺も同じような気持ちになっていたよ。飯食いに行くぞ?」
「そうなんですか!? ご飯いきます!」

 サーヤを連れ立って部屋を出ると下へとおりていく。
 ここの宿は二階の部屋が多く、下には少しの部屋と食堂があるのだ。

「おや、珍しいお客さんだこと! 何にするんだい?」
「俺は日替わりセットにするかな」

 食堂にいる同じ年くらいの女性は昔の看板娘だろう。
 この子の年をとったな。そんなことを考えながら、頼んだのはここのおすすめである日替わりのセットだ。
 
「じゃあ、ワタシは……野菜スープとパンセットで!」
「あいよ!」

 厨房にオーダーを通すとこちらにやってきた。

「あんた、昔に来たことあるよね? 【鬼】のなんとかだっけ?」
「なんで鬼だけ残るんだ……。ガイルだ。よく覚えていたな?」
「数年前にあんたの娘を名乗る子が泊まってね」

 マナが泊まったとは貴重な情報だ。たしかにそれぞれの街のおすすめの宿は教えていたからな。
 
「旅の仲間と酒を飲んで暴れていたよ?」

 そういう話は頭が痛くなるな。
 
「はぁぁ。それはすまない。何か弁償するものはなかっただろうか?」
「あははは! ちゃんと皿洗いさせて働かせたから大丈夫だよ!」
「そんなに何か壊したのか。申し訳なかった」

 頭を下げてその女性へと謝る。

「なぁに、探索者ではよくあることだ。それにね、あの子にからんだ男たちがいたんだ。それで口論の末、実力行使したようでね。男を外に吹き飛ばしちまったのさ。壁に穴を空けてね?」

 何てことだ。そんなことになっていようとは。
 その女性が指をさした方向を見るとたしかに修復したような跡が残っていた。

「じゃじゃ馬な娘でね。だが、行方不明になってしまったようでね。その後の足取りはしらないだろうか?」
「あら、そうなのかい? 南西の暴食の谷に行くと言っていたよ? 私はやめなっていったんだけどね?」
「ありがとう。俺の教えたルート通り行っていたみたいだ」
「えっ!? あの谷を抜けるのは大変だよ? まぁ、別ルートだと山を越えないといけないけど……」
「そうだな。しかし、あの谷には俺独自のルートがあってな」
「なるほどねぇ。…………あいよ。日替わりと野菜スープとパンね」

 話しているうちに料理ができたようだ。
 あっという間の待ち時間だった。

「それで、目的とかは話してはいなかっただろうか?」
「さぁ? マジル大陸を目指しているとは言っていたよ? わたしゃ、やめときなっていったんだけどね?」
「そうか。ありがとう」

 あのじゃじゃ馬娘。俺のようになりたいというから辿ったルートを教えたが、教えたのはここムーガン大陸の中のギルド本部までの行き方だ。そこまで教えた通りに行っていれば辿れる。その中から本部の後のルートがわかればいいが。
 
「ししょー。行先がわかってよかったですね?」
「あぁ。そうだな。そこにいったなら、話を聞ける」
「そうなんですか?」
「昔なじみの奴がいてな。まだ生きていると思うが……」

 あの黒黒とした長い髪を思い出す。頬のこけるほど痩せていた。それは胸にあるペンダントがなんでも食べてしまうから。そう考えると不安になってきた。生きてるよな?

「ししょーのはお肉なんですね? おいしそー」
「肉が好きでな。ここの日替わりはほぼ肉なんだ。食うか?」
「いいです。ワタシは体を温めるためにスープを頼んだんです。肉ばっかり食べていると太るんで」
「そうか? 旅していれば体力つける方が先決だぞ? よく食べた方が良い」
「いいんです! これでお腹いっぱいなんです! そうなんです!」

 なにやら自分に言い聞かせているようだが、さましながら飲んだスープがうまかったようだ。
 頬がゆるんでいた。

 ここでマナの情報が聞けたのはありがたい。
 何が目的かはわからないが。
 やはりマジル大陸を目指したようだ。

 明日には立とう。
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