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9.湖のダンジョン
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「よーっし! じゃあ、行きましょー!」
意気揚々とスキップする勢いで湖へ向けて歩いていくサーヤ。その後を静かについて行く。魔物は常に数時間毎に湧いているようで全滅するのも大変なんだとか。
だが、サーヤは自信満々のようだ。何か策があるのだろうか。街を後にすると再び湖が見えてきた。
「サーヤ、何か策があるのか?」
「ふふーん。私は何の魔法が得意だと伝えましたかー?」
「ん? 水魔法だろ?」
「そーです! ということは、湖の水を操れば全滅も可能ということです!」
胸を張ってそう宣言するサーヤ。自信があるのはいいが、果たしてそんなに上手くいくだろうか?
「サーヤ、一応水属性には耐性がありそうだったぞ?」
「きっと大丈夫です!」
ちなみに娘のマナは俺と同じ火属性だった。話を聞いたところ、この湖の水をマグマのような熱さにしたんだとか。
半魚人はそれで茹で上がってしまったんだとか。それを聞いて驚いた。そこまで火属性を扱えたのかという感心。
魔法はそこまでコントロールできないと思っていたのだが。剣術ばかり鍛えていたマナがなぁ。なんだか感慨深い気持ちになる。
「ししょー。見ててくださいよ!?」
気がつくともう湖まで着いていて、サーヤは湖に手を入れていた。魔力が体から指輪へと流れていくのがわかる。
ゴゴゴゴゴゴ……
湖の中心から渦ができあがり、徐々に渦は大きくなっていく。そして、中心がせり上っていき竜巻のような形になっていく。
中心から半魚人達が打ち上げられていく。空高く打ち上げられ、こちらに落下してくる。
「サーヤ?」
「ししょー! 出番です!」
「俺かよ!?」
落下してきた半魚人はバラバラなため、一撃ごとに反動のある腕輪の力は使えない。ただの魔力を身体に纏う。
「仕方ないな」
ズドンッ! ズドスドンッ! ズドドドド……
落下してきた半魚人を倒していく。水海の中心には祠のようなものが姿を現した。
周囲には水が飛び散り生臭い匂いが鼻を突く。
「あっ! なんか出てきましたね!」
「あぁ。まだこの地域にも眠っていたか。あれは……」
「えっ!? 知ってるんですか?」
「あぁ。あれはダンジョン。恐らく祠の感じからして魔王軍兵士具《ナイトール》の眠っているダンジョンだろう」
「えっ!? アーティファクト!?」
「あんな所にあったから発見されなかったのだろうな」
なるほど。半魚人が出てきていた仕組みがわかった。あのダンジョンの中から溢れた魔物が這い出てきていたようだ。
ただ魔力溜まりから生まれているものだと思っていたが、違かったようだ。これは偉大な発見である。
「行きましょう!」
「あぁ。サーヤには潜る権利がある。ダンジョンは発見したものに探索する権利が与えられるんだ」
「やった!」
これだけの魔力の籠ったダンジョンだと杖のアーティファクトの可能性が高いな。
「このまま通れるようにコントロール出来るか?」
「はい! できますよ!」
祠に向けて湖を割ってもらう。
そのできた道を湖の底を踏みしめながら二人で慎重に進む。
「わぁー! なんかすご──」
──ズドォンッ!
「油断大敵だ。まだ敵はいる」
水から飛び出てきた半魚人をたたき落として殲滅する。それを数度繰り返す頃には祠がもうすぐの所まで来た。
祠からも這い出てくるものがいる。
「出てきたぞ?」
「アクアカッター!」
半魚人は斜めにずり落ち絶命する。いい魔力コントロールだ。湖のコントロールもしながら魔法も撃てるとはな。
並行処理ができるということか。もしかしたら、サーヤはとんでもない逸材かもな。
「これ、中入って魔力解いたら水浸しになりません?」
「仕方ないだろう。洞窟の中も水でいっぱいだったら困るな。さすがにダンジョンであればそれはないと思いたいが」
「行ってみましょー!」
ようやく着いた祠は階段で少し小高い所にあり、魚がビチビチと跳ねている、
真ん中には魔法陣が記されていて二人でその魔法陣に収まる。
「あれ? 何も起きませんねぇ?」
「いや、これは魔力を魔法陣に流さないと発動しないみたいだな」
「じゃあ、一回こっちに魔力集中させちゃいますよ?」
「仕方ないな。やってみろ」
「はーい」
湖に通わせていた魔力を断つと魔法陣へと向かわせる。
目の前は水の壁が迫ってくる。両脇に寄せていた水はせき止められていた力がなくなると我先にとこちらに向かってくる。
死を連想させるくらいの水が押し寄せる。覚悟を決めて佇んでいると、足元の魔法陣が光だした。
そして、気がつくと真っ暗な空間にいた。一体どうなったんだ?
息はできるから、生きてはいるな。おかしいな。体も動いている感触はある。
─ムニュ
「──きゃあ!」
「あっ、すまん!」
「なんだ。ししょーか。よかった」
手を伸ばした先に柔らかい物に当たってしまった。何に当たったかは想像しないでおこう。
「大丈夫か?」
「何も見えないですね?」
「あぁ。今火をともそう。トーチ」
俺の指先に小さな火が灯った。それを少しずつ大きくしていくとサーヤの顔が見えた。日に当たっているせいか顔が赤いように見える。
周りを照らすと壁が魔力に反応したようだ。
急に壁が光りだし、奥へと続く道が広がった。
意気揚々とスキップする勢いで湖へ向けて歩いていくサーヤ。その後を静かについて行く。魔物は常に数時間毎に湧いているようで全滅するのも大変なんだとか。
だが、サーヤは自信満々のようだ。何か策があるのだろうか。街を後にすると再び湖が見えてきた。
「サーヤ、何か策があるのか?」
「ふふーん。私は何の魔法が得意だと伝えましたかー?」
「ん? 水魔法だろ?」
「そーです! ということは、湖の水を操れば全滅も可能ということです!」
胸を張ってそう宣言するサーヤ。自信があるのはいいが、果たしてそんなに上手くいくだろうか?
「サーヤ、一応水属性には耐性がありそうだったぞ?」
「きっと大丈夫です!」
ちなみに娘のマナは俺と同じ火属性だった。話を聞いたところ、この湖の水をマグマのような熱さにしたんだとか。
半魚人はそれで茹で上がってしまったんだとか。それを聞いて驚いた。そこまで火属性を扱えたのかという感心。
魔法はそこまでコントロールできないと思っていたのだが。剣術ばかり鍛えていたマナがなぁ。なんだか感慨深い気持ちになる。
「ししょー。見ててくださいよ!?」
気がつくともう湖まで着いていて、サーヤは湖に手を入れていた。魔力が体から指輪へと流れていくのがわかる。
ゴゴゴゴゴゴ……
湖の中心から渦ができあがり、徐々に渦は大きくなっていく。そして、中心がせり上っていき竜巻のような形になっていく。
中心から半魚人達が打ち上げられていく。空高く打ち上げられ、こちらに落下してくる。
「サーヤ?」
「ししょー! 出番です!」
「俺かよ!?」
落下してきた半魚人はバラバラなため、一撃ごとに反動のある腕輪の力は使えない。ただの魔力を身体に纏う。
「仕方ないな」
ズドンッ! ズドスドンッ! ズドドドド……
落下してきた半魚人を倒していく。水海の中心には祠のようなものが姿を現した。
周囲には水が飛び散り生臭い匂いが鼻を突く。
「あっ! なんか出てきましたね!」
「あぁ。まだこの地域にも眠っていたか。あれは……」
「えっ!? 知ってるんですか?」
「あぁ。あれはダンジョン。恐らく祠の感じからして魔王軍兵士具《ナイトール》の眠っているダンジョンだろう」
「えっ!? アーティファクト!?」
「あんな所にあったから発見されなかったのだろうな」
なるほど。半魚人が出てきていた仕組みがわかった。あのダンジョンの中から溢れた魔物が這い出てきていたようだ。
ただ魔力溜まりから生まれているものだと思っていたが、違かったようだ。これは偉大な発見である。
「行きましょう!」
「あぁ。サーヤには潜る権利がある。ダンジョンは発見したものに探索する権利が与えられるんだ」
「やった!」
これだけの魔力の籠ったダンジョンだと杖のアーティファクトの可能性が高いな。
「このまま通れるようにコントロール出来るか?」
「はい! できますよ!」
祠に向けて湖を割ってもらう。
そのできた道を湖の底を踏みしめながら二人で慎重に進む。
「わぁー! なんかすご──」
──ズドォンッ!
「油断大敵だ。まだ敵はいる」
水から飛び出てきた半魚人をたたき落として殲滅する。それを数度繰り返す頃には祠がもうすぐの所まで来た。
祠からも這い出てくるものがいる。
「出てきたぞ?」
「アクアカッター!」
半魚人は斜めにずり落ち絶命する。いい魔力コントロールだ。湖のコントロールもしながら魔法も撃てるとはな。
並行処理ができるということか。もしかしたら、サーヤはとんでもない逸材かもな。
「これ、中入って魔力解いたら水浸しになりません?」
「仕方ないだろう。洞窟の中も水でいっぱいだったら困るな。さすがにダンジョンであればそれはないと思いたいが」
「行ってみましょー!」
ようやく着いた祠は階段で少し小高い所にあり、魚がビチビチと跳ねている、
真ん中には魔法陣が記されていて二人でその魔法陣に収まる。
「あれ? 何も起きませんねぇ?」
「いや、これは魔力を魔法陣に流さないと発動しないみたいだな」
「じゃあ、一回こっちに魔力集中させちゃいますよ?」
「仕方ないな。やってみろ」
「はーい」
湖に通わせていた魔力を断つと魔法陣へと向かわせる。
目の前は水の壁が迫ってくる。両脇に寄せていた水はせき止められていた力がなくなると我先にとこちらに向かってくる。
死を連想させるくらいの水が押し寄せる。覚悟を決めて佇んでいると、足元の魔法陣が光だした。
そして、気がつくと真っ暗な空間にいた。一体どうなったんだ?
息はできるから、生きてはいるな。おかしいな。体も動いている感触はある。
─ムニュ
「──きゃあ!」
「あっ、すまん!」
「なんだ。ししょーか。よかった」
手を伸ばした先に柔らかい物に当たってしまった。何に当たったかは想像しないでおこう。
「大丈夫か?」
「何も見えないですね?」
「あぁ。今火をともそう。トーチ」
俺の指先に小さな火が灯った。それを少しずつ大きくしていくとサーヤの顔が見えた。日に当たっているせいか顔が赤いように見える。
周りを照らすと壁が魔力に反応したようだ。
急に壁が光りだし、奥へと続く道が広がった。
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