7 / 42
7.服を着なさい
しおりを挟む
「二人で一泊頼む」
また宿にやってきた俺は宿屋の女にそう声をかけた。
「おや、本当にマナちゃんくらいの人なんだね。オジサンと同じ部屋で我慢しておくれよ? すまないねぇ」
「大丈夫です! ししょーは男とかそういう分類と違いますから!」
「ははははっ! 違いないねぇ!」
それはいい事なのかどうなのか。俺は複雑な思いを胸に抱きながら部屋のキーを受け取り奥へと進んで行った。
鍵を開けて中に歩を進めるとベッドが二つ並んでいてシャワールームと洗面、トイレがある。
勇者と魔王の戦いから千年あまりが経っている今の時代では魔道具が発展していてあまり不自由のない生活をしていた。
「けっこう部屋が広いですね! シャワールームがあっていい!」
「そうだな。ここは昔から部屋が綺麗でな。俺はこの街に来た時はいつもここに泊まるんだ」
「へぇ。そうなんですね。だから受付のオバサンとも仲が良かったんですね」
悪いはないのだろうけど、それは少し可哀想だと思ってしまうのは俺も歳をとったと言うことだろう。
「サーヤ、あの人の前ではオバサンて言わずにお姉さんと言ってやれ」
「……? はい。わかりました!」
なんで? とは聞くこともなく了承するサーヤ。物分りがいいのかなんなのか。
「ワタシ、先にシャワー浴びます!」
「あぁ。ゆっくりでいいぞ。俺は晩酌する」
シャワールームに入っていくサーヤを見送り、俺は荷物に入れ込んでいたボトルを取り出す。小さなコップを取り出すとトクトクと入れる。
アルコールの匂いが鼻を突く。
この匂いが堪らないのだ。
「ゴクッ……ぷはぁぁ美味い」
喉から食道へとアルコールが流れていくのを感じる。この時が至福のひとときなんだよなぁ。窓からは山脈の下を眺めることができる。
林が広がっていてその先には奈落のような断崖絶壁が見える。あそこも超えていかなければ南の本部には行けない。
昔通ったルートは、俺が娘のマナに教えていたルートだ。その通り行っているのであれば、俺が通る先にマナの痕跡が残っているはず。
それを頼りに俺はマナを探す。少なくとも、各ギルドには立ち寄っていれば記録が残っているはずだ。
ここの街のギルドにはまだ寄ってないが、痕跡はあるだろうか。あの受付の女性とは会ってないと見える。
となるともしかしたら泊まってはいないかもしれないな。それかここがいっぱいで他の宿にしたか……。
シャワールームの方から物音がする。上がってきたかと視線を送ったが、予想外の光景に目を逸らした。
「ししょー、お酒飲んでたんですか?」
「あぁ、そうだ。サーヤ、頼むから服を着てくれ。親と同じだと言う感覚でいるのは嬉しいがな。さすがに下着姿はちと視線のやり場に困る」
娘であれば下着姿に欲情することはない。ないのだが、視線のやり場には困るというもの。ましてや他人の子だ。
下着がはち切れそうなのは成長過程だからだろうか。下の下着もきわどいものを履いているようだ。動きやすいのだろうが。
「あっ、ししょーも気にするんですね。いまきまーす」
「気にするというか、流石にな。すまんな。女としてみているとか、そういう訳ではないぞ。ただな。娘といえども節度を持ってだな……」
「あははははっ! お父さんみたい! ししょーもそんなこと言うんだ!」
お父さんみたいとは。嬉しい気がする。娘が二人になったような気分か……。悪くはない。
「じゃあ、俺も浴びさせてもらうぞ」
シャワーを浴びながら今後についてを考える。穴の空いた筒に魔力を流しお湯のシャワーを頭から被る。
頭から流れたお湯が古傷の多くある引き締まった体を流れていく。老年の体だが、肉体が使えるように日々の鍛錬は欠かしたことがない。
携帯用の石鹸で頭と体を洗い流していく。腕輪は肌身離さず付けている。盗難に合いそうになったことがあるからだ。仲間とて信用しない。
バスタオルで頭と体を拭き、下のズボンを履いて部屋へと出ていく。この時、完全にサーヤが居ること忘れていた。
「ししょー。ししょーの体、すごい傷ですね?」
「す、すまん……」
謝って服を着る。すっかり居たのを忘れていた。自分ではサーヤを注意しながら、自らが上半身裸で来てしまった。
のしかかる暗い気持ちを反省しながら何とか立ち直る。
「すまなかった。サーヤは酒を飲むのか?」
この世界では十五歳から酒をのでいいことになっている。
「うーん。飲めます。けど、強くはありません! これ、貰っていいですか?」
俺が先程まで飲んでいたグラスの残りをグビっと飲み干す。それはかなり強い酒でアルコール度数は20%程だ。
「うわぁぁぁ。これはぁぁ。やばいぃぃぃ」
そういいながら。ベッドにダイブした。着ていた服は盛大にずり上がり下着が見えた状態でむにゃむにゃいいながら寝息を立ててしまった。
俺は見ないようにしながら布団を掛けてやる。風邪をひいてはいけない。
マナも酒に弱いところがあったが、ここまでだっただろうか。いつかは平気でエールを飲んでいた気がするから、サーヤの方が弱いのだろう。
これは、前途多難な気がするな。
また宿にやってきた俺は宿屋の女にそう声をかけた。
「おや、本当にマナちゃんくらいの人なんだね。オジサンと同じ部屋で我慢しておくれよ? すまないねぇ」
「大丈夫です! ししょーは男とかそういう分類と違いますから!」
「ははははっ! 違いないねぇ!」
それはいい事なのかどうなのか。俺は複雑な思いを胸に抱きながら部屋のキーを受け取り奥へと進んで行った。
鍵を開けて中に歩を進めるとベッドが二つ並んでいてシャワールームと洗面、トイレがある。
勇者と魔王の戦いから千年あまりが経っている今の時代では魔道具が発展していてあまり不自由のない生活をしていた。
「けっこう部屋が広いですね! シャワールームがあっていい!」
「そうだな。ここは昔から部屋が綺麗でな。俺はこの街に来た時はいつもここに泊まるんだ」
「へぇ。そうなんですね。だから受付のオバサンとも仲が良かったんですね」
悪いはないのだろうけど、それは少し可哀想だと思ってしまうのは俺も歳をとったと言うことだろう。
「サーヤ、あの人の前ではオバサンて言わずにお姉さんと言ってやれ」
「……? はい。わかりました!」
なんで? とは聞くこともなく了承するサーヤ。物分りがいいのかなんなのか。
「ワタシ、先にシャワー浴びます!」
「あぁ。ゆっくりでいいぞ。俺は晩酌する」
シャワールームに入っていくサーヤを見送り、俺は荷物に入れ込んでいたボトルを取り出す。小さなコップを取り出すとトクトクと入れる。
アルコールの匂いが鼻を突く。
この匂いが堪らないのだ。
「ゴクッ……ぷはぁぁ美味い」
喉から食道へとアルコールが流れていくのを感じる。この時が至福のひとときなんだよなぁ。窓からは山脈の下を眺めることができる。
林が広がっていてその先には奈落のような断崖絶壁が見える。あそこも超えていかなければ南の本部には行けない。
昔通ったルートは、俺が娘のマナに教えていたルートだ。その通り行っているのであれば、俺が通る先にマナの痕跡が残っているはず。
それを頼りに俺はマナを探す。少なくとも、各ギルドには立ち寄っていれば記録が残っているはずだ。
ここの街のギルドにはまだ寄ってないが、痕跡はあるだろうか。あの受付の女性とは会ってないと見える。
となるともしかしたら泊まってはいないかもしれないな。それかここがいっぱいで他の宿にしたか……。
シャワールームの方から物音がする。上がってきたかと視線を送ったが、予想外の光景に目を逸らした。
「ししょー、お酒飲んでたんですか?」
「あぁ、そうだ。サーヤ、頼むから服を着てくれ。親と同じだと言う感覚でいるのは嬉しいがな。さすがに下着姿はちと視線のやり場に困る」
娘であれば下着姿に欲情することはない。ないのだが、視線のやり場には困るというもの。ましてや他人の子だ。
下着がはち切れそうなのは成長過程だからだろうか。下の下着もきわどいものを履いているようだ。動きやすいのだろうが。
「あっ、ししょーも気にするんですね。いまきまーす」
「気にするというか、流石にな。すまんな。女としてみているとか、そういう訳ではないぞ。ただな。娘といえども節度を持ってだな……」
「あははははっ! お父さんみたい! ししょーもそんなこと言うんだ!」
お父さんみたいとは。嬉しい気がする。娘が二人になったような気分か……。悪くはない。
「じゃあ、俺も浴びさせてもらうぞ」
シャワーを浴びながら今後についてを考える。穴の空いた筒に魔力を流しお湯のシャワーを頭から被る。
頭から流れたお湯が古傷の多くある引き締まった体を流れていく。老年の体だが、肉体が使えるように日々の鍛錬は欠かしたことがない。
携帯用の石鹸で頭と体を洗い流していく。腕輪は肌身離さず付けている。盗難に合いそうになったことがあるからだ。仲間とて信用しない。
バスタオルで頭と体を拭き、下のズボンを履いて部屋へと出ていく。この時、完全にサーヤが居ること忘れていた。
「ししょー。ししょーの体、すごい傷ですね?」
「す、すまん……」
謝って服を着る。すっかり居たのを忘れていた。自分ではサーヤを注意しながら、自らが上半身裸で来てしまった。
のしかかる暗い気持ちを反省しながら何とか立ち直る。
「すまなかった。サーヤは酒を飲むのか?」
この世界では十五歳から酒をのでいいことになっている。
「うーん。飲めます。けど、強くはありません! これ、貰っていいですか?」
俺が先程まで飲んでいたグラスの残りをグビっと飲み干す。それはかなり強い酒でアルコール度数は20%程だ。
「うわぁぁぁ。これはぁぁ。やばいぃぃぃ」
そういいながら。ベッドにダイブした。着ていた服は盛大にずり上がり下着が見えた状態でむにゃむにゃいいながら寝息を立ててしまった。
俺は見ないようにしながら布団を掛けてやる。風邪をひいてはいけない。
マナも酒に弱いところがあったが、ここまでだっただろうか。いつかは平気でエールを飲んでいた気がするから、サーヤの方が弱いのだろう。
これは、前途多難な気がするな。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる