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1.憤怒
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俺は頭が真っ白になった。
娘が行方不明になったと連絡を受けたのだ。
「マナが行方不明……だと?」
「どうやらそうらしい」
「居なくなった場所は?」
「それが分かれば苦労しないだろうな」
そう話すのはこの街の探索者ギルドのギルドマスター。この辺りの遺物探索を牛耳っている。この街の連中はみんな見知った顔だ。
ここのマスターとは新人の頃からの腐れ縁だ。こいつはギルドマスターになり、俺は引退して農業をやりながら子育てをしたってわけ。
大切にしていたマナが探索者になりたいと言った時は反対したものだ。それでも「私はパパを超える探索者になる」と言って出ていったのは嬉しかった。
この地域のギルドに来ていた奴らとパーティを組んで旅に出たんだ。それももう五年前になるか。名声が轟くのを待っていたのだが。
千年前に終わったとされる勇者と魔王の死闘。その配下の装備品は魔力が膨大に宿っているとされる。それは遺物と呼ばれた。
その遺物の一つ魔王具が百年前に見つかった。それは数十億ガルで売却された。これを皮切りに、魔王直属の七大罪具が数億ガルと魔王軍兵士具が数千万ガル。アーティファクトが続々と見つかった。
その頃から、まだ見ぬアーティファクトを探す探索者が続々と現れた。今や大半の人が探索者としてギルドに登録している。そして、墓場のダンジョンを漁ったり、街にあるダンジョンを潜ってみたりしている。
「マナが居なくなったのは何処から来た噂だ?」
「あー。ギルド本部経由だ」
「じゃあ、こっちの大陸だよな?」
「そうだな。ムーガン大陸のダルミンが本部だ」
本部があるのはこの大陸の南に位置する。
港の近くだ。
「俺が自分で探しに行くわ!」
「一人でか?」
「一人の方が身動きしやすい」
「まぁ、お前なら大丈夫だろ。この辺の魔物も最近は特級も出るから気をつけろよ?」
この時代も魔物がまだ居て。
最下級、下級、中級、上級、最上級、特級の順で強くなっていく。
探索者も同様にランクが振られている。
「あぁ。わかった。じゃあ、装備を整えたらダルミンへ向かう」
「ホントに一人でマナを探すのか?」
「そりゃそうだろ。俺の大切な、大切な一人娘だぞ?」
「わかってるよ。いつ立つ?」
「明日にでも」
俺は娘のことを思い、居なくなった原因が分からないという湧いてきた怒りを心にしまいながらギルドマスターに明日たつと答えた。
「じゃあよ、明日行く時は寄れよ? 探索者カードを更新してやるからよ」
「あぁ。すまんな」
「良いってことよ」
その日は家に帰り妻に話した。マナが行方不明になっていること。そして、自分で探しに行くということ。
それには妻は賛成してくれた。ただ、無事に帰ってきて欲しいと。それだけだった。
朝飯を妻といつも通り一緒に食べた。
「行ってらっしゃい。マナをお願いね……」
「あぁ。必ず行き先を突き止めてくる」
革鎧やナックルガードを装備し、野営道具などの身支度をしてギルドへと向かった。
「おう。来たか。久し振りだなぁその姿を見るのは……」
「まぁ、引退してからもう25年経ってるからな」
「勘が鈍ってないか?」
「大丈夫だr──」
──ギィィィンッッ
飛んできた何かを拳で弾き飛ばした。
壁に弾いたナイフが刺さっている。
「おい? 何の真似だ?」
「ははははっ。鈍ってないようで何よりじゃねぇか。鬼拳のガイルは健在のようだな」
「引退したとはいえ、まだまだ現役だ」
「その様子だと安心だな」
「マナを見つけるまでは死なん」
俺は話を終えるとギルドカードを渡して更新する。
「ギルドマスター権限で以前の階級……【特級】での復帰を認めてやる! 存分に探してこい! ただな、ギルドが追えないんだ。茨の道だと思うぞ?」
「ふんっ。だからって諦めるわけがないだろう?」
「そりゃそうだわな」
「愚問だ」
それだけ言い放ち、ギルドを後にする。
俺を見送るようにその街の人達は口々に声をかけてくれた。
必ずマナは探しだす。
どこに居ようと俺が救ってみせる。
最悪の結果になっていない事だけを祈ろう。
この町は大陸の最北端にある山の上にある。目の前に広がる光景はいつも見ているが眼下に森林や池、街が点在しているのを眺めることができる。
空気は澄んでいて吸い込んだ肺をひんやりさせる。森の香りが鼻をぬけ、ザクザクとした固い土の感触が足の裏を刺激する。
標高でいうと千メートルくらいだろうか。田舎と言って違いはないが、ギルドがあるのには理由があって、一時期魔王軍が陣取っていたとされる遺跡がある。
それの探索をするためにギルドを設立したのだ。少し降りた先の森には魔物が潜んでいる。
『グルルルルル』
「ほぉ。ダークネルドラゴン……特級か。肩慣らしには丁度いい」
俺の行く手を阻むトカゲ。
その場から動かず様子を見る。
『グガァァアァアァ』
口に黒いエネルギーを溜め出した。
「ふん。実力差もわからんのか」
拳を下げて半身になり足を肩幅に開く。
前後に揺れてタイミングをはかる。
エネルギーが大きくなって光を強く放った。
「天鬼」
心に秘めていた怒りを出力する。すると、腕にしていた赤と黒のまだら模様の腕輪。そこからどす赤黒い煙が吹き出し腕に絡みつく。
握りしめた拳はドラゴンの顎を捉えすくい上げる。赤黒い閃光が天へと駆け抜け、雲を割る。
ダークネスドラゴンは頭をなくした状態で地面へと沈んだ。
「ふむ。まだまだ最大出力じゃないが、いいとするか」
その歩む先には果たして愛娘は生きているのだろうか。
愛娘の軌跡を辿る旅が始まる。
娘が行方不明になったと連絡を受けたのだ。
「マナが行方不明……だと?」
「どうやらそうらしい」
「居なくなった場所は?」
「それが分かれば苦労しないだろうな」
そう話すのはこの街の探索者ギルドのギルドマスター。この辺りの遺物探索を牛耳っている。この街の連中はみんな見知った顔だ。
ここのマスターとは新人の頃からの腐れ縁だ。こいつはギルドマスターになり、俺は引退して農業をやりながら子育てをしたってわけ。
大切にしていたマナが探索者になりたいと言った時は反対したものだ。それでも「私はパパを超える探索者になる」と言って出ていったのは嬉しかった。
この地域のギルドに来ていた奴らとパーティを組んで旅に出たんだ。それももう五年前になるか。名声が轟くのを待っていたのだが。
千年前に終わったとされる勇者と魔王の死闘。その配下の装備品は魔力が膨大に宿っているとされる。それは遺物と呼ばれた。
その遺物の一つ魔王具が百年前に見つかった。それは数十億ガルで売却された。これを皮切りに、魔王直属の七大罪具が数億ガルと魔王軍兵士具が数千万ガル。アーティファクトが続々と見つかった。
その頃から、まだ見ぬアーティファクトを探す探索者が続々と現れた。今や大半の人が探索者としてギルドに登録している。そして、墓場のダンジョンを漁ったり、街にあるダンジョンを潜ってみたりしている。
「マナが居なくなったのは何処から来た噂だ?」
「あー。ギルド本部経由だ」
「じゃあ、こっちの大陸だよな?」
「そうだな。ムーガン大陸のダルミンが本部だ」
本部があるのはこの大陸の南に位置する。
港の近くだ。
「俺が自分で探しに行くわ!」
「一人でか?」
「一人の方が身動きしやすい」
「まぁ、お前なら大丈夫だろ。この辺の魔物も最近は特級も出るから気をつけろよ?」
この時代も魔物がまだ居て。
最下級、下級、中級、上級、最上級、特級の順で強くなっていく。
探索者も同様にランクが振られている。
「あぁ。わかった。じゃあ、装備を整えたらダルミンへ向かう」
「ホントに一人でマナを探すのか?」
「そりゃそうだろ。俺の大切な、大切な一人娘だぞ?」
「わかってるよ。いつ立つ?」
「明日にでも」
俺は娘のことを思い、居なくなった原因が分からないという湧いてきた怒りを心にしまいながらギルドマスターに明日たつと答えた。
「じゃあよ、明日行く時は寄れよ? 探索者カードを更新してやるからよ」
「あぁ。すまんな」
「良いってことよ」
その日は家に帰り妻に話した。マナが行方不明になっていること。そして、自分で探しに行くということ。
それには妻は賛成してくれた。ただ、無事に帰ってきて欲しいと。それだけだった。
朝飯を妻といつも通り一緒に食べた。
「行ってらっしゃい。マナをお願いね……」
「あぁ。必ず行き先を突き止めてくる」
革鎧やナックルガードを装備し、野営道具などの身支度をしてギルドへと向かった。
「おう。来たか。久し振りだなぁその姿を見るのは……」
「まぁ、引退してからもう25年経ってるからな」
「勘が鈍ってないか?」
「大丈夫だr──」
──ギィィィンッッ
飛んできた何かを拳で弾き飛ばした。
壁に弾いたナイフが刺さっている。
「おい? 何の真似だ?」
「ははははっ。鈍ってないようで何よりじゃねぇか。鬼拳のガイルは健在のようだな」
「引退したとはいえ、まだまだ現役だ」
「その様子だと安心だな」
「マナを見つけるまでは死なん」
俺は話を終えるとギルドカードを渡して更新する。
「ギルドマスター権限で以前の階級……【特級】での復帰を認めてやる! 存分に探してこい! ただな、ギルドが追えないんだ。茨の道だと思うぞ?」
「ふんっ。だからって諦めるわけがないだろう?」
「そりゃそうだわな」
「愚問だ」
それだけ言い放ち、ギルドを後にする。
俺を見送るようにその街の人達は口々に声をかけてくれた。
必ずマナは探しだす。
どこに居ようと俺が救ってみせる。
最悪の結果になっていない事だけを祈ろう。
この町は大陸の最北端にある山の上にある。目の前に広がる光景はいつも見ているが眼下に森林や池、街が点在しているのを眺めることができる。
空気は澄んでいて吸い込んだ肺をひんやりさせる。森の香りが鼻をぬけ、ザクザクとした固い土の感触が足の裏を刺激する。
標高でいうと千メートルくらいだろうか。田舎と言って違いはないが、ギルドがあるのには理由があって、一時期魔王軍が陣取っていたとされる遺跡がある。
それの探索をするためにギルドを設立したのだ。少し降りた先の森には魔物が潜んでいる。
『グルルルルル』
「ほぉ。ダークネルドラゴン……特級か。肩慣らしには丁度いい」
俺の行く手を阻むトカゲ。
その場から動かず様子を見る。
『グガァァアァアァ』
口に黒いエネルギーを溜め出した。
「ふん。実力差もわからんのか」
拳を下げて半身になり足を肩幅に開く。
前後に揺れてタイミングをはかる。
エネルギーが大きくなって光を強く放った。
「天鬼」
心に秘めていた怒りを出力する。すると、腕にしていた赤と黒のまだら模様の腕輪。そこからどす赤黒い煙が吹き出し腕に絡みつく。
握りしめた拳はドラゴンの顎を捉えすくい上げる。赤黒い閃光が天へと駆け抜け、雲を割る。
ダークネスドラゴンは頭をなくした状態で地面へと沈んだ。
「ふむ。まだまだ最大出力じゃないが、いいとするか」
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愛娘の軌跡を辿る旅が始まる。
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