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第一章 秋田編
40.それでもジスパーダか!?
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二人の後を追って訓練場に行くと話をどこから聞き付けて来たのか多くの隊員が集まっていた。
「ほらよ」
剣を渡される雷斗。
アイツは普段刀を使っている。
剣と刀は扱いに雲泥の差がある。
普段の得物とも違うし武器を使った組手なんてほとんどやっていない。相手の独壇場になるだろう事が予想できた。
だが、二人とも頭に血が上っているためもう後には引けないし、得物が違うのも関係ないんだろう。愚かとしか言い様がない。それを楽しむ野次馬たちもだ。
「やれやれー!」
「達也やっちまえー!」
「いいぞー!」
野次が飛びながら完全アウェーの中、組手が始められる。
「先手はくれてやるさ」
その男が余裕そうにそう言った。それを聞いて雷斗は更に怒りながら件を振りかぶり大振りな一撃を放つ。
そんな一振は当たるわけがなく半身になって避けられた。すると、容赦なく体に向けて剣を振るってくる。
何とか剣を間に入れてガードしたが、色々ガラ空きである。
腹に男隊員の蹴りが入る。「がはっ」と腹を抑えて下がり、次の攻撃に備える。
「はははっ! そんなんじゃあ、マラスは倒せねぇだろぉ? どうやって倒したんだぁ? あぁ? そらよ!」
剣を再び振りかぶって上段から叩きつけたてくる。これをまた剣でガードした雷斗。それでは先程と同じだ。
またガラ空きの腹に蹴りを食らう。「クソっ!」と剣の切り上げの一撃を放つが、バックステップで余裕をもって避けられた。
そして、トドメに腕に頭へ一撃を放つ為に剣を振りかぶった様だった。
身体強化を使い肉薄する。
────ガギンッ!
俺は鞘に入れたままの刀で受け止める。
「その辺にしてやってくれないか?」
男に諭すように言うといきなり激昂した。
「なんだよ! やられそうになったら助けに来やがって! そいつが弱いのがいけないんだ! マラスを討伐したなんて、どうせウソだろ! この嘘つきヤローがぁぁ!」
少し言葉がすぎるなと思い、こちらの言い分を伝えようとしたが、やめた。
俺の出る幕ではなかったようだ。
「こぉの馬鹿者がァァァァ!」
────ゴシャッ
横から来た刀剣部隊隊長による渾身の一撃が頬を貫き吹き飛ばされて行った。
「なぁにをしてんだ! この人達は危険な調査任務の最中だぞ! それを何をやってんだ馬鹿者がぁあぁぁ!」
罵倒された男は頬を抑えながら言い訳を言い始めた。
「そ、そいつがデカい顔するからいけないんですよ。これは勝負なんですよ!? 別に組手してたのは訓練の一環です!」
「なぁにが訓練の一環だ! この方は遠距離魔法部隊の所属だ! 自分の土俵で戦って勝って何が嬉しいんだ!? お前は!?」
「えっ? そんなこと一言も……」
「達也! お前はいつもそうだ! 勝手に突っ走って迷惑をかける!」
それは知らないが、こちらも悪かった。そして、俺は他にも気に入らない奴らがいる。
「まぁ、その辺にしましょうよ。うちの雷斗もその勝負を買ったんですからね。いい経験になったでしょう。それで、よければ俺がここにいる全員を相手しましょう」
隊長さんは俺の顔を見て目を見張った。
静かに刃引きされた剣を持って真ん中に立つ。
「俺の普段の得物は刀だ。だから、これはハンデだ。全員でかかってこい。根性叩き直してやらぁ。お前ら見てたヤツらは野次飛ばしてただろうがぁ? 隊長がきたら黙り決め込んで。貴様ら本当にジスパーダかあぁぁ!?」
身体から煙が上がる。俺の体は熱くなり青い炎を纏っていた。
「全力でかかってこい!」
「う、うおぉぉぉお!」
近くにいた一人が持っていた剣で切りかかってくる。刀を添えて力を加え、軌道をずらして肩に剣を叩き込む。そのまま沈む。
あるものは魔力を纏い殴りかかってきた。上段蹴りで蹴り飛ばす。
剣で突き刺しに来たものは剣を蹴りあげ顔をぶん殴った。
「おらぁぁぁあ!」
「やったらぁぁぁ!」
「うぉぉぉぉ!」
同時に何人かで来たが、しゃがんでまとめて足払いし、宙に浮いている間に一人一人蹴り飛ばしてやった。
宙からも剣を振り下ろして来たやつがいたが、剣で受け流して首筋に剣をたたきつけ沈める。
あとの奴らは腰の引けている奴らばかりだった。睨んだら逃げる始末。鍛え方が足りんな。
俺の周りには刀剣部隊員の屍が転がっていた。
◇◆◇
それを見ていた雷斗は。
(負けたっす。情けないっす)
情けなさに顔を下ろしていると東北基地の刀剣部隊隊長さんの怒号が聞こえた。自分のことを魔法部隊隊員だと知っていたみたいだ。
その後である。静かに歩いてきた刃さんの顔は修羅の顔だった。背筋が震えた。こんな殺気は感じたことがない。
(刃さんって怒ると本当に恐いタイプの人だったんすね。怒らせないようにしないと)
刃さんは罵声を浴びせたかと思うとバッタバッタと部隊員をのして行った。恐くて逃げ出した人もいた。
(はははっ。やっぱり刃さんは凄いっす)
かかってくる相手が居なくなると刀剣部隊隊長さんが頭を下げて何か話している。話終わるとこちらにやって来た。
「大丈夫か? 雷斗も悪いぞ? あれほど自分を奢る事はしないようにと言っただろ?」
「はい。申し訳ないっす」
「ったくしょうがねぇなぁ。ほら、腹減っただろ? 飯食いに行くぞ?」
(自分は一生この人について行くっす)
刃さんのその背中はとてつもなく大きくカッコよく見えたんす。
「ほらよ」
剣を渡される雷斗。
アイツは普段刀を使っている。
剣と刀は扱いに雲泥の差がある。
普段の得物とも違うし武器を使った組手なんてほとんどやっていない。相手の独壇場になるだろう事が予想できた。
だが、二人とも頭に血が上っているためもう後には引けないし、得物が違うのも関係ないんだろう。愚かとしか言い様がない。それを楽しむ野次馬たちもだ。
「やれやれー!」
「達也やっちまえー!」
「いいぞー!」
野次が飛びながら完全アウェーの中、組手が始められる。
「先手はくれてやるさ」
その男が余裕そうにそう言った。それを聞いて雷斗は更に怒りながら件を振りかぶり大振りな一撃を放つ。
そんな一振は当たるわけがなく半身になって避けられた。すると、容赦なく体に向けて剣を振るってくる。
何とか剣を間に入れてガードしたが、色々ガラ空きである。
腹に男隊員の蹴りが入る。「がはっ」と腹を抑えて下がり、次の攻撃に備える。
「はははっ! そんなんじゃあ、マラスは倒せねぇだろぉ? どうやって倒したんだぁ? あぁ? そらよ!」
剣を再び振りかぶって上段から叩きつけたてくる。これをまた剣でガードした雷斗。それでは先程と同じだ。
またガラ空きの腹に蹴りを食らう。「クソっ!」と剣の切り上げの一撃を放つが、バックステップで余裕をもって避けられた。
そして、トドメに腕に頭へ一撃を放つ為に剣を振りかぶった様だった。
身体強化を使い肉薄する。
────ガギンッ!
俺は鞘に入れたままの刀で受け止める。
「その辺にしてやってくれないか?」
男に諭すように言うといきなり激昂した。
「なんだよ! やられそうになったら助けに来やがって! そいつが弱いのがいけないんだ! マラスを討伐したなんて、どうせウソだろ! この嘘つきヤローがぁぁ!」
少し言葉がすぎるなと思い、こちらの言い分を伝えようとしたが、やめた。
俺の出る幕ではなかったようだ。
「こぉの馬鹿者がァァァァ!」
────ゴシャッ
横から来た刀剣部隊隊長による渾身の一撃が頬を貫き吹き飛ばされて行った。
「なぁにをしてんだ! この人達は危険な調査任務の最中だぞ! それを何をやってんだ馬鹿者がぁあぁぁ!」
罵倒された男は頬を抑えながら言い訳を言い始めた。
「そ、そいつがデカい顔するからいけないんですよ。これは勝負なんですよ!? 別に組手してたのは訓練の一環です!」
「なぁにが訓練の一環だ! この方は遠距離魔法部隊の所属だ! 自分の土俵で戦って勝って何が嬉しいんだ!? お前は!?」
「えっ? そんなこと一言も……」
「達也! お前はいつもそうだ! 勝手に突っ走って迷惑をかける!」
それは知らないが、こちらも悪かった。そして、俺は他にも気に入らない奴らがいる。
「まぁ、その辺にしましょうよ。うちの雷斗もその勝負を買ったんですからね。いい経験になったでしょう。それで、よければ俺がここにいる全員を相手しましょう」
隊長さんは俺の顔を見て目を見張った。
静かに刃引きされた剣を持って真ん中に立つ。
「俺の普段の得物は刀だ。だから、これはハンデだ。全員でかかってこい。根性叩き直してやらぁ。お前ら見てたヤツらは野次飛ばしてただろうがぁ? 隊長がきたら黙り決め込んで。貴様ら本当にジスパーダかあぁぁ!?」
身体から煙が上がる。俺の体は熱くなり青い炎を纏っていた。
「全力でかかってこい!」
「う、うおぉぉぉお!」
近くにいた一人が持っていた剣で切りかかってくる。刀を添えて力を加え、軌道をずらして肩に剣を叩き込む。そのまま沈む。
あるものは魔力を纏い殴りかかってきた。上段蹴りで蹴り飛ばす。
剣で突き刺しに来たものは剣を蹴りあげ顔をぶん殴った。
「おらぁぁぁあ!」
「やったらぁぁぁ!」
「うぉぉぉぉ!」
同時に何人かで来たが、しゃがんでまとめて足払いし、宙に浮いている間に一人一人蹴り飛ばしてやった。
宙からも剣を振り下ろして来たやつがいたが、剣で受け流して首筋に剣をたたきつけ沈める。
あとの奴らは腰の引けている奴らばかりだった。睨んだら逃げる始末。鍛え方が足りんな。
俺の周りには刀剣部隊員の屍が転がっていた。
◇◆◇
それを見ていた雷斗は。
(負けたっす。情けないっす)
情けなさに顔を下ろしていると東北基地の刀剣部隊隊長さんの怒号が聞こえた。自分のことを魔法部隊隊員だと知っていたみたいだ。
その後である。静かに歩いてきた刃さんの顔は修羅の顔だった。背筋が震えた。こんな殺気は感じたことがない。
(刃さんって怒ると本当に恐いタイプの人だったんすね。怒らせないようにしないと)
刃さんは罵声を浴びせたかと思うとバッタバッタと部隊員をのして行った。恐くて逃げ出した人もいた。
(はははっ。やっぱり刃さんは凄いっす)
かかってくる相手が居なくなると刀剣部隊隊長さんが頭を下げて何か話している。話終わるとこちらにやって来た。
「大丈夫か? 雷斗も悪いぞ? あれほど自分を奢る事はしないようにと言っただろ?」
「はい。申し訳ないっす」
「ったくしょうがねぇなぁ。ほら、腹減っただろ? 飯食いに行くぞ?」
(自分は一生この人について行くっす)
刃さんのその背中はとてつもなく大きくカッコよく見えたんす。
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