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第一章 秋田編
30.悩み事
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「あああぁぁぁぁ。いきかえるなぁぁぁ」
「そぉぉぉっすねぇぇぇぇ」
二人で今大浴場で源泉を溜めて入っている。
かなりの湯を量だった為に時間がかかりはしたが、待った甲斐あって大満足の湯加減である。
雷斗と裸の付き合いは初めてだが、雷斗は細身ながらも筋肉がある程度付いている。訓練の賜物だろう。
魔法職は細いヤツらが多い。もう少し食った方がいいといつも言うのだが。ヤツらってのは細い方がいいと思っているらしい。
「雷斗は訓練真面目にやってるんだな」
「やってますよぉ。隊長恐いっすもん」
「はははっ。そうか。まぁ、隊長はその位の方が良いんだと思うぞ?」
俺は隊長として皆を甘やかしていると思っている。だが、それは自分たちで律して訓練しているからだ。
外はいい眺めだ。森の景色が。自然が溢れていて見応えがある。こういうご時世でなければ楽しめるんだけどな。
「刃さん、ガタイいいしムキムキっすね?」
「そうか? まぁ、鍛冶やってれば腹は減るし、ハンマー振るってるから筋力ないといい刀は作れないからな」
「なるほど。凄いっすねぇ」
そう言うと雷斗は何かを考えるように天井を見上げた。
「自分は、魔法職になりたくてなった訳じゃないんすよ。本当は刀剣部隊で、前衛で戦いたかった……」
「そうなのか? 転属するか?」
俺が軽い気持ちでそう言うと乾いた笑いを浮かべた。嘲笑う感じではなく、自分に諦めているようなそんな笑いだった。
「自分は、刀剣部隊の訓練についていけなかった落ちこぼれなんっす。だから、遠距離魔法部隊に配属されました」
「だから、あんまり魔法が好きな感じがしないのか?」
「そりゃそうっす。好きじゃないっすもん。刀とか剣持って戦う方が滾るじゃないっすか。そんな戦い方に憧れてました」
そんな気配を見せなかったのにそんなことを思っていたなんて。苦しかっただろうな。自分の好きじゃないことをやっているのは。
「憧れがあるなら、そういう自分になる為なら、頑張れるん……いや、別に頑張んなくたっていい。どうしたらなりたい自分になれるのかは考えた方がいいんじゃないか? それをおい求めれば自分がなりたい自分になれる」
「理想を追いかけてるだけじゃ、なれないんじゃないっすか?」
俺もそう思っていたことがある。けれど、大事なのはなりたい自分をイメージすること。なれると言い続けることだ。
「言霊って知ってるか?」
「知らないっす」
眉間に皺を寄せて怪訝な顔をする。
怪しい話をし始めたと思っているのだろう。
「言葉には魂が宿るという考え方だ。俺はその考え方が好きでな。口にしているといつしかそういう自分になっているんだ」
「なんか嘘っぽいっす」
「ははははっ! まぁな。ただ、これは実体験だ。異世界にいた時、なんにもできなかった。魔法も、剣術も。できるようになる。絶対なる! そう言い聞かせた」
あの時は勇者のくせにできないのかとか、散々馬鹿にされたものだ。でも、俺はなにもできない自分が悔しくて誰がなんと言おうとなると強く思っていた。
「どうなったんすか?」
「言っただろ? 誰も倒せなかった魔王を俺は倒した。だから、他人に何を言われても、自分を信じろ! 自分が自分を信じてやるんだ! できるって! お前ならできるって自分で言ってやれ!」
そんな自分の話を熱く語ってしまい。少し恥ずかしくなった俺は口を噤んだ。
「そうっすね。自分を信じてなかったっす。どうせ俺はできないっと思ってたっす。自分、刃さんが理想っす! 魔法も、刀でも戦えるじゃないっすか!」
「そうか。それなら、さっきの魔力制御と近接の訓練を毎日やるようにするか?」
「お願いします!」
立ち上がると俺に頭を下げてきた。
これは教えがいのある弟子ができたな。
「あぁ。自分を信じろ」
「うっす!」
長々と温泉に浸かってしまっていた。気持ちよかったが、若干上せた。
湯から上がり身体を拭くと楽な服に着替えてゆっくりできそうな部屋を探す。
「ここでいいんじゃないっすか? 二人分の布団しけるっすよ?」
「あぁ。良いかもな。あの二人も適当に探して休むだろ。いっぱいやるか?」
「うっす!」
焼酎を引っ張り出して二人で乾杯した。
風呂上がりの酒は格別だった。
頬が熱い気がする。
「あーー! こんな所にいたぁ!」
千紗と冬華が部屋にズカズカと入ってきた。
「長々とした話をしてるなぁと思ってたら静かになってるし。覗いたらいないし……」
「はぁ? 覗いたら?」
「いっ! いやー。し、静かだなぁと思ってぇ、あんな話してたら気になるしぃ」
「ったく。俺も悪かったからな」
素直に謝って許してくれたからな。
そして、酒をくれという。
「千紗は飲みすぎんなよ?」
「分かってるよぉ!」
「刃さんはそんなにマッチョなんですの?」
唐突な冬華の質問。
「そうっすよ? 上脱いでみせたらいいんじゃないっすか?」
「おい! 見せもんじゃねぇぞ! いいから、その話は忘れろ!」
そう誤魔化すように酒を煽った。
「私達のは見たくせにぃ?」
「千紗? お前も鍛錬一緒にやるかぁ?」
「い、いやぁ。さぁ飲もう!」
慌てて誤魔化すように酒を飲み出した。
(ったく。目に焼き付いて離れないなんて言えねぇよなぁ。酒で忘れよう)
「そぉぉぉっすねぇぇぇぇ」
二人で今大浴場で源泉を溜めて入っている。
かなりの湯を量だった為に時間がかかりはしたが、待った甲斐あって大満足の湯加減である。
雷斗と裸の付き合いは初めてだが、雷斗は細身ながらも筋肉がある程度付いている。訓練の賜物だろう。
魔法職は細いヤツらが多い。もう少し食った方がいいといつも言うのだが。ヤツらってのは細い方がいいと思っているらしい。
「雷斗は訓練真面目にやってるんだな」
「やってますよぉ。隊長恐いっすもん」
「はははっ。そうか。まぁ、隊長はその位の方が良いんだと思うぞ?」
俺は隊長として皆を甘やかしていると思っている。だが、それは自分たちで律して訓練しているからだ。
外はいい眺めだ。森の景色が。自然が溢れていて見応えがある。こういうご時世でなければ楽しめるんだけどな。
「刃さん、ガタイいいしムキムキっすね?」
「そうか? まぁ、鍛冶やってれば腹は減るし、ハンマー振るってるから筋力ないといい刀は作れないからな」
「なるほど。凄いっすねぇ」
そう言うと雷斗は何かを考えるように天井を見上げた。
「自分は、魔法職になりたくてなった訳じゃないんすよ。本当は刀剣部隊で、前衛で戦いたかった……」
「そうなのか? 転属するか?」
俺が軽い気持ちでそう言うと乾いた笑いを浮かべた。嘲笑う感じではなく、自分に諦めているようなそんな笑いだった。
「自分は、刀剣部隊の訓練についていけなかった落ちこぼれなんっす。だから、遠距離魔法部隊に配属されました」
「だから、あんまり魔法が好きな感じがしないのか?」
「そりゃそうっす。好きじゃないっすもん。刀とか剣持って戦う方が滾るじゃないっすか。そんな戦い方に憧れてました」
そんな気配を見せなかったのにそんなことを思っていたなんて。苦しかっただろうな。自分の好きじゃないことをやっているのは。
「憧れがあるなら、そういう自分になる為なら、頑張れるん……いや、別に頑張んなくたっていい。どうしたらなりたい自分になれるのかは考えた方がいいんじゃないか? それをおい求めれば自分がなりたい自分になれる」
「理想を追いかけてるだけじゃ、なれないんじゃないっすか?」
俺もそう思っていたことがある。けれど、大事なのはなりたい自分をイメージすること。なれると言い続けることだ。
「言霊って知ってるか?」
「知らないっす」
眉間に皺を寄せて怪訝な顔をする。
怪しい話をし始めたと思っているのだろう。
「言葉には魂が宿るという考え方だ。俺はその考え方が好きでな。口にしているといつしかそういう自分になっているんだ」
「なんか嘘っぽいっす」
「ははははっ! まぁな。ただ、これは実体験だ。異世界にいた時、なんにもできなかった。魔法も、剣術も。できるようになる。絶対なる! そう言い聞かせた」
あの時は勇者のくせにできないのかとか、散々馬鹿にされたものだ。でも、俺はなにもできない自分が悔しくて誰がなんと言おうとなると強く思っていた。
「どうなったんすか?」
「言っただろ? 誰も倒せなかった魔王を俺は倒した。だから、他人に何を言われても、自分を信じろ! 自分が自分を信じてやるんだ! できるって! お前ならできるって自分で言ってやれ!」
そんな自分の話を熱く語ってしまい。少し恥ずかしくなった俺は口を噤んだ。
「そうっすね。自分を信じてなかったっす。どうせ俺はできないっと思ってたっす。自分、刃さんが理想っす! 魔法も、刀でも戦えるじゃないっすか!」
「そうか。それなら、さっきの魔力制御と近接の訓練を毎日やるようにするか?」
「お願いします!」
立ち上がると俺に頭を下げてきた。
これは教えがいのある弟子ができたな。
「あぁ。自分を信じろ」
「うっす!」
長々と温泉に浸かってしまっていた。気持ちよかったが、若干上せた。
湯から上がり身体を拭くと楽な服に着替えてゆっくりできそうな部屋を探す。
「ここでいいんじゃないっすか? 二人分の布団しけるっすよ?」
「あぁ。良いかもな。あの二人も適当に探して休むだろ。いっぱいやるか?」
「うっす!」
焼酎を引っ張り出して二人で乾杯した。
風呂上がりの酒は格別だった。
頬が熱い気がする。
「あーー! こんな所にいたぁ!」
千紗と冬華が部屋にズカズカと入ってきた。
「長々とした話をしてるなぁと思ってたら静かになってるし。覗いたらいないし……」
「はぁ? 覗いたら?」
「いっ! いやー。し、静かだなぁと思ってぇ、あんな話してたら気になるしぃ」
「ったく。俺も悪かったからな」
素直に謝って許してくれたからな。
そして、酒をくれという。
「千紗は飲みすぎんなよ?」
「分かってるよぉ!」
「刃さんはそんなにマッチョなんですの?」
唐突な冬華の質問。
「そうっすよ? 上脱いでみせたらいいんじゃないっすか?」
「おい! 見せもんじゃねぇぞ! いいから、その話は忘れろ!」
そう誤魔化すように酒を煽った。
「私達のは見たくせにぃ?」
「千紗? お前も鍛錬一緒にやるかぁ?」
「い、いやぁ。さぁ飲もう!」
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(ったく。目に焼き付いて離れないなんて言えねぇよなぁ。酒で忘れよう)
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