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しおりを挟むレイチェルとの離縁、そして強制送還のように隣国へと送り出し、レイチェルの幽閉とドレディアの事件の決着。
その全てを終えて、ようやくアリオスはシェリーナのところへ向かった。
一度、ラーズの結果とシェリーナが知っている結果を照らし合わせて以来だった。
シェリーナたちは避妊薬のことを知らないと思っていたが、一時だけ出回った避妊薬が不妊になりやすいということは調査中に知っていて、おそらくそれをレイチェルが飲んでいたのだろうと思っていたそうだ。
なので、知り得たことも一致、そこから導き出した『真実』も一致した。
結局何よりも許せないのは、男遊びをしていたことや避妊薬、でっち上げの婚約破棄などではなく、罪もないドレディアを襲わせたことだ。
同じ女性であるレイチェルの残虐非道さ。それを許せる者などいない。
「しばらく慌ただしくしていたために来れなくてすまない。
もう聞いているとは思うが、レイチェルとは離縁し、彼女は幽閉された。」
「はい。実質、ドレディア姉様の件も隣国は認めた上での処罰だと思います。」
「ああ。娘可愛さに国民を見放すような国王ではなかった。そのうち病死が発表されるだろう。」
レイチェルの父は、娘の男遊びを知らなかった。
遊び相手の三人の令息と元婚約者、侍女と護衛以外の者には、聡明な王女様で通っていたから。
「そうでしょうね。私はそれだけのことをしたと思っています。
王女だからと言って、許されてはいけない。王女だからこそ模範にならなければ。」
「そうだな。私も身に染みて思った。王太子としての責務を蔑ろにし過ぎた。
シェリーナの妊娠をきっかけに、貴族そして国民に目を向けていない自分に気づいた。
レイチェルとの7年間は、男に襲われたというドレディアと似通った状況に対する憐みだ。
なのに、その結婚相手が犯人だなんて、自分が愚かすぎて……はぁ。」
「確かに、彼女の調査を怠ったことは愚かだったのでしょう。
ですが、それはあなた一人の責任ではありません。
これを教訓にすることが大切なことですから。」
「ああ。……シェリーナ、君に王太子妃になってもらいたい。
これから王太子妃や王妃の教育もしなければならないが、受けてもらえるか?」
「はい。お受けします。ですが、王太子妃教育は終わっています。王妃教育はあと少しで終わります。」
「………は?」
「最初に側妃の打診があった15歳の頃から、万が一に備えて教育を受け始めました。
そして、ここに来てからは王妃教育を。もちろん、機密事項以外ですが。」
「あー。誰の先読みかはわからないが、見事だな。助かった。」
「ふふ。それと、報告があります。妊娠しました。」
「………は?………え?………またすぐ?」
「そうなのです。驚きますよね。」
そう言ってお腹に手を当てて微笑むシェリーナを、あまりの嬉しさに抱きしめて言った。
「ありがとう。嬉しいよ。体を大切にしてくれ。
シェリーナ、これからは君を唯一人の妃として愛し合い、尊重し合える夫婦になりたい。
君も同じように思ってもらえるだろうか。」
「ええ。そう言っていただけて嬉しいです。」
シェリーナと見つめ合い、キスをする。抱けないのが辛い。
「えーっと、安定期までは閨は我慢してくださいね?」
「え?出産まで抱けないんじゃないのか?」
「いえ、安定期から数か月間は大丈夫みたいですよ。」
そうだったのか。知らなかった。腹に子がいるのにアンナコトを。………妄想してしまった。
「部屋を新しく変えるので、もう少しここにいてほしい。一緒に寝るのはいいか?」
「はい。お待ちしていますね。」
ああ、和む。シェリーナの笑顔は癒しだ。ようやく平穏が訪れた気がした。
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