19 / 20
19.
しおりを挟むレイチェルとの離縁、そして強制送還のように隣国へと送り出し、レイチェルの幽閉とドレディアの事件の決着。
その全てを終えて、ようやくアリオスはシェリーナのところへ向かった。
一度、ラーズの結果とシェリーナが知っている結果を照らし合わせて以来だった。
シェリーナたちは避妊薬のことを知らないと思っていたが、一時だけ出回った避妊薬が不妊になりやすいということは調査中に知っていて、おそらくそれをレイチェルが飲んでいたのだろうと思っていたそうだ。
なので、知り得たことも一致、そこから導き出した『真実』も一致した。
結局何よりも許せないのは、男遊びをしていたことや避妊薬、でっち上げの婚約破棄などではなく、罪もないドレディアを襲わせたことだ。
同じ女性であるレイチェルの残虐非道さ。それを許せる者などいない。
「しばらく慌ただしくしていたために来れなくてすまない。
もう聞いているとは思うが、レイチェルとは離縁し、彼女は幽閉された。」
「はい。実質、ドレディア姉様の件も隣国は認めた上での処罰だと思います。」
「ああ。娘可愛さに国民を見放すような国王ではなかった。そのうち病死が発表されるだろう。」
レイチェルの父は、娘の男遊びを知らなかった。
遊び相手の三人の令息と元婚約者、侍女と護衛以外の者には、聡明な王女様で通っていたから。
「そうでしょうね。私はそれだけのことをしたと思っています。
王女だからと言って、許されてはいけない。王女だからこそ模範にならなければ。」
「そうだな。私も身に染みて思った。王太子としての責務を蔑ろにし過ぎた。
シェリーナの妊娠をきっかけに、貴族そして国民に目を向けていない自分に気づいた。
レイチェルとの7年間は、男に襲われたというドレディアと似通った状況に対する憐みだ。
なのに、その結婚相手が犯人だなんて、自分が愚かすぎて……はぁ。」
「確かに、彼女の調査を怠ったことは愚かだったのでしょう。
ですが、それはあなた一人の責任ではありません。
これを教訓にすることが大切なことですから。」
「ああ。……シェリーナ、君に王太子妃になってもらいたい。
これから王太子妃や王妃の教育もしなければならないが、受けてもらえるか?」
「はい。お受けします。ですが、王太子妃教育は終わっています。王妃教育はあと少しで終わります。」
「………は?」
「最初に側妃の打診があった15歳の頃から、万が一に備えて教育を受け始めました。
そして、ここに来てからは王妃教育を。もちろん、機密事項以外ですが。」
「あー。誰の先読みかはわからないが、見事だな。助かった。」
「ふふ。それと、報告があります。妊娠しました。」
「………は?………え?………またすぐ?」
「そうなのです。驚きますよね。」
そう言ってお腹に手を当てて微笑むシェリーナを、あまりの嬉しさに抱きしめて言った。
「ありがとう。嬉しいよ。体を大切にしてくれ。
シェリーナ、これからは君を唯一人の妃として愛し合い、尊重し合える夫婦になりたい。
君も同じように思ってもらえるだろうか。」
「ええ。そう言っていただけて嬉しいです。」
シェリーナと見つめ合い、キスをする。抱けないのが辛い。
「えーっと、安定期までは閨は我慢してくださいね?」
「え?出産まで抱けないんじゃないのか?」
「いえ、安定期から数か月間は大丈夫みたいですよ。」
そうだったのか。知らなかった。腹に子がいるのにアンナコトを。………妄想してしまった。
「部屋を新しく変えるので、もう少しここにいてほしい。一緒に寝るのはいいか?」
「はい。お待ちしていますね。」
ああ、和む。シェリーナの笑顔は癒しだ。ようやく平穏が訪れた気がした。
136
お気に入りに追加
938
あなたにおすすめの小説
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
冷血皇帝陛下は廃妃をお望みです
cyaru
恋愛
王妃となるべく育てられたアナスタシア。
厳しい王妃教育が終了し17歳で王太子シリウスに嫁いだ。
嫁ぐ時シリウスは「僕は民と同様に妻も子も慈しむ家庭を築きたいんだ」と告げた。
嫁いで6年目。23歳になっても子が成せずシリウスは側妃を王宮に迎えた。
4カ月後側妃の妊娠が知らされるが、それは流産によって妊娠が判ったのだった。
側妃に毒を盛ったと何故かアナスタシアは無実の罪で裁かれてしまう。
シリウスに離縁され廃妃となった挙句、余罪があると塔に幽閉されてしまった。
静かに過ごすアナスタシアの癒しはたった1つだけある窓にやってくるカラスだった。
※タグがこれ以上入らないですがざまぁのようなものがあるかも知れません。
(作者的にそれをザマぁとは思ってません。外道なので・・<(_ _)>)
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※作者都合のご都合主義です。作者は外道なので気を付けてください(何に?‥いろいろ)
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った
冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。
「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。
※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる