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しおりを挟む完璧王太子妃様の仮面が剥がれたレイチェルは、部屋で手当たり次第に物を壊し暴れて叫んでいるらしい。
そう報告を受けたが、勝手にさせておけばいいと伝えた。そして部屋からは出すな、と。
離縁の手続きをし、レイチェルを隣国に帰す時に彼女の元専属侍女と元護衛から聞きたいことがあるので会えるように手配をお願いする手紙を先に出した。
もちろん、離縁に至った内容も書き記してある。
王族に嫁ぐというのに純潔ではないことを隠していたこと。
元婚約者に一度だけ無理やり襲われたということを信じ許したが、改めて調べた結果は元婚約者を含む4人の男と体の関係を持っていたこと。
その男たちと遊んでいた期間に飲んだ避妊薬が原因で妊娠しにくいとわかったこと。
元婚約者に襲われたのではなく、元婚約者を襲ったこと。
元婚約者に冤罪をかけ、婚約破棄をし慰謝料を受け取ったこと。
そして、アリオスの元婚約者を襲う依頼をした疑いがあること。
どれ一つを取っても、王太子妃として相応しくないという理由で離縁とし、レイチェルは今後我が国への入国は禁止、何らかの処罰をするならばそちらに任せるとした。
しかし、アリオスの元婚約者を襲った証拠が見つかった場合は、重い処罰を望む、とも。
そのためにレイチェルに同行する者たちに元侍女と元護衛に会わせるように頼んだ。
ドレディアの事件については、隣国国王陛下がレイチェルを庇えばそこで終わる。
明らかな証拠がないため、無理やり元侍女たちに会うこともできないからだ。
元侍女たちは、レイチェルが男たちと遊んでいたことも知っているはず。
誰にも知られないように男の一人が所有している屋敷でしか会わないようにしていたらしいから。
体の関係があったことまで知っているかはわからないが、侍女なら体を見て気づくだろう。
ドレディアの事件は、誰が4人の男を紹介したかはわからないが侍女か護衛だろう。
後はもうレイチェルの父である国王陛下に判断を任せるしかなかった。
結果、侍女と護衛から話を聞き出すことは許可されなかった。
元王女であるレイチェルの幽閉。
それでドレディアの事件も幕引き。という意思表示だった。
レイチェルが依頼したことで起きた事件だと証明されたとしても、死人が出たわけではない。
ドレディアにとっては死にも等しいことではあるが、生きているというのは重要なことだ。
つまりは、調べようが調べまいが、レイチェルの幽閉は王族の罰として妥当ということになる。
後は死刑しかない。
王族の死刑は、謀反や多数の死者、悪質な事件の数々、と滅多なことでは死刑に至らない。
おそらく、事前に聞き取りをしたはずだ。
そして、わが国は許可されなかったということは、後ろ暗いことがあるということだ。
元侍女と護衛に誤魔化す指示を与えて我が国の聞き取りに応じさせることもできた。
しかし、それすらしなかったということは誠意なのだろう。
実行犯たちは死んでいるのだろう。
それを指示したのは誰か。それを実行したのは誰か。
我が国が暴いてしまえば、レイチェルは死刑になるかもしれない。
いや、いずれはひっそりと毒杯か遅行性の毒かで殺し、病死と発表されるだろう。
公の死刑を避けることで、国民に悪影響が出ないようにしたいのだろう。
我が国民は隣国王女がドレディアに危害を加えたことを知ると隣国を良く思わなくなる。
我が国と取引をしている商売を切られてしまえば、隣国民に被害が出るから。
関係ない隣国民を困らせるつもりまではないドレディアの父は、レイチェルの幽閉での幕引きに同意を示した。
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