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しおりを挟むラーズの報告はまだ続いた。
「妃殿下の元遊び相手の3人にも会いました。
罪に問うわけではないと言うと、体の関係があったことを認めました。
そして、避妊薬のことも。
その当時は、妊娠しにくくなることなど知らなかったと。
なので婚約者にも飲ませてしまい、結果、誰も妊娠しなかったということです。
違法なことを頼める者を紹介してほしいと言われたことはないかと聞きましたがありませんでした。」
「………そうか。ご苦労だった。
つまりレイチェルが言った、元婚約者に襲われたというのは嘘だった。
しかも、純潔を奪った相手は元婚約者でもない。
婚約破棄の経緯も、襲われそうになった女性が行方不明では言いがかりみたいなもの。
ドレディアに繋がる情報は何もない。ということだな。」
「はい。妃殿下の侍女と護衛だった者なら何か知っているかもしれませんが。
正式な依頼でなければ、妃殿下を可愛がっていた隣国の国王陛下は許可しないでしょう。」
「あれから10年近く経っている。実行犯が生きているかもわからないな。
侍女と護衛に関しても、死んだと言われれば捜査不可能だ。
しかし、何もしないわけにはいかない。
父にも報告して、レイチェルの今後も考えなければならないな。
ありがとう、よく休んでくれ。」
「はい。失礼します。」
ラーズが退室した後、アリオスは大きなため息をついた。
避妊薬のこと以外は、想像の範囲ではあった。
しかし、やはり衝撃はある。
シェリーナたちは、過去のことだと私がレイチェルを許すかもしれないと想定していた。
しかし、レイチェル中心に考えていたあの頃にこの事実を知っても、さすがに許すことはなかったと思う。
そう思われるほど、私がダメな王太子だったということだ。
それにしても、この国に来てからのレイチェルとはまるで違う。
しかし、王女だ。
学園に入学するまでに教養は身についているのだから、そう振る舞うことは簡単だ。
まんまと騙されたわけだ。
父である国王陛下と2人きりで話したいと時間を貰った。
「父上がレイチェルとの婚約を勧めたきっかけは何だったのですか?」
「ん?古い話だな。お前には内緒にしてほしいと国王からの手紙には書いてあったんだが……
レイチェルが一年前に会ったお前に一目惚れをした、と。
婚約者がいたので諦めていたが、お互いの婚約がダメになった。
留学させるので、うまくいきそうなら婚約してほしいと。
隣国国王は娘を自国から手放したくなくてそれほど積極的ではなかったんだ。
その頃のお前は、ドレディアの事件がショックで落ち込んでいた。
だから半年ほど状況を見ていたんだ。
婚約の話をするまで、お前はレイチェルを意識していなかったみたいだったがな。
どの道、誰かと婚約しなければならない頃だったから、お前が望むならいいかと思ったんだ。」
「そうでしたか。しかし、レイチェルの婚約破棄は仕組まれたものだったようです。
ドレディアの事件は証拠はありませんが、レイチェルが疑わしいです。」
「何?どういうことだ?」
「3年ほど前に、ドレディアの父上である侯爵から報告がありませんでしたか?」
「……あった。会話を思い出したと。国境、帰国、報酬とかいうのだろう?
ああ……そういうことか。お前と婚約するために邪魔なのがドレディアか。」
「ええ。憶測でしかありませんがね。
それと、レイチェルは学生時代に4人の男と体の関係がありました。」
「は?王女がか?……王族の婚姻を馬鹿にしているな。」
「その遊んでいた時に服用していた避妊薬が原因で妊娠しにくいそうです。」
「……結局、お前は何が言いたいんだ?」
「レイチェルと離縁し、隣国でレイチェル付だった侍女と護衛の取り調べ許可を。」
「……隣国にその手続きを申し込めというのか。まず、レイチェルと話し合え。それからだ。」
「わかっています。レイチェルが認めなくても、もうレイチェルを信じられません。」
私も無理だよ。そうぼやく父と別れてレイチェルのところに向かう。
まだ起きている時間だ。
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