14 / 20
14.
しおりを挟む遊び相手の令息3人が卒業し、レイチェルはもうすぐ2年生、セザールは最終学年の4年生になる直前。
15歳を過ぎたレイチェルは王女としての初公務で隣国王太子アリオスに出会った。
一目惚れだった。
いかに素晴らしい王太子だったかをセザールに語った。
セザールはレイチェルがたった一度会っただけの王太子の話ばかりすることにうんざりしていた。
何としてでもアリオスと結婚したい。
王女である自分が公爵令息の妻になるのはおかしい。
王女は王太子と結婚するべきだ。
王太子であるアリオスが侯爵令嬢と結婚するのもおかしい。
王太子は王女と結婚するべきだ。
それなら早く婚約解消してくれ、とセザールは思っていた。
レイチェルはどうしたらいいか考え始めた。
レイチェルはいろいろ考えて、まず婚約者であるセザールを襲った。
酒に少しだけ眠り薬を混ぜたのだ。
セザールが逃げないように縛ってから、セザールのモノを扱いて立たせた。
目が覚めたセザールが抵抗しても動けない。
その間に、レイチェルはセザールのモノを自分の中に入れた。
上下に動き、射精を促し、体内に出させた。
これで、婚約者に一度無理やり襲われた、という状況が成り立った。
実際に襲われたのはレイチェルではなくセザールだが。
アリオスとの初夜で純潔でないとバレても、元婚約者に無理やり……という言い訳のためだ。
セザールは今度から自分が相手をしないといけないのかと絶望したが、その後は誘われることもなかった。
しかしある日、知らない令嬢から届かない物を取ってほしいとお願いされ、教室に連れていかれた。
『どれのこと?』とセザールが令嬢を見ると、いきなり服装を乱して叫び声をあげた。
駆けつけてきたのは数人の生徒と教師、それにレイチェル。
レイチェルは密かに笑っていた。
嵌められたのだとわかった。
襲われたように見えた令嬢は、その直後、姿を消した。
どこの誰だかはわからないまま。
もちろん、セザールは否定した。いきなり自分で服を乱して叫んだのだと。
だけど、何人もの人が現場を見たため、レイチェルの婚約破棄の言い分が認められた。
慰謝料を払うことにもなったが、レイチェルと結婚せずに済んだことにホッとした。
両親には正直に、何もしていないこととレイチェルの浮気、嵌められたことを伝えた。
信じてくれて廃嫡もされず、仲の良かった従妹が新たな婚約者になってくれた。
レイチェルが隣国に留学して王太子と婚約したことを知った時、驚いた。
相手にも婚約者がいたはず。
レイチェルが何かしたかもしれないとも思った。
隣国の王太子はレイチェルが純潔だと騙されて結婚するのだと思った。
しかし、それを伝える気はなかった。
レイチェルに何をされるかわからないから。
ただ、後になって気になったのがいつまで経ってもレイチェルが子を産んだと聞かないことだった。
一時だけ流行った避妊薬があったことを思い出した。
一度飲むと、次の月のものが来るまで避妊できると言われたもの。
月のものが終わると、また飲む。
娼婦に流行ったものが、貴族でも少し流行ったらしい。
人にもよるが半年、つまり6回ほど毎月続けて飲んだ場合、その後にやめても妊娠し難いらしい。
妊娠したくない娼婦や、貴族でもこれ以上子供はいらないという夫婦にはいいが、いつか子供を望む女性には良くない薬だと出回ることがなくなった。
レイチェルの遊び相手だった3人の男の妻たちも妊娠していない。
離婚や愛人の子を育てたりしているということだ。
レイチェルも、あの男たちからその避妊薬を貰って続けて飲んだのではないか。
だから、未だに妊娠しないのではないか。
この避妊薬の話は、前に来た人には話していない。
彼らが帰った後に、昔の話をしたせいでこの薬を思い出してあの男たちの妻が妊娠したかを調べたから。
ということだった。
160
お気に入りに追加
935
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
貴方に私は相応しくない【完結】
迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。
彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。
天使のような無邪気な笑みで愛を語り。
彼は私の心を踏みにじる。
私は貴方の都合の良い子にはなれません。
私は貴方に相応しい女にはなれません。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる