婚約者を裏切らせた責任を取ってもらいます。

しゃーりん

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結局、ネリリは妊娠していなかった。

それにより、結婚はしないという結論になった。



お互いに条件を出した。

俺は純潔を奪った責任をこの先も負うことはしない。
俺の名前は一切出さない。 

ネリリは純潔を失ったことを黙っていてほしい。
たとえ、俺の知り合いと縁を結ぶことになっても。

了承して、金輪際関わらないと別れた。



ネリリは結婚相手に純潔と偽るのだろう。
好きにすればいい。
初夜でバレずに済むといいな。
バレても俺の名前を出すのは許さない。
もう俺には関係ない。

みんなにも一応口止めはしておいてやるよ。



 


クロノスはマーリアの話を全くしない。

あんな形で側妃になったマーリアと上手くいっているのか心配だった。

しかし、それは杞憂だったと気づいたのは割と早かった。

『殿下、テキパキ仕事するようになったなぁ。』

『そりゃ早く帰りたいからだろ。』

『え?マーリア嬢がいるから?あ、マーリア妃殿下か。』

『殿下は、無意識だったろうけどマーリア妃を良く見てた。好意はあったはずだ。』

『ミカルディスの婚約者だったのに?』

殿下が去った部屋で3人が俺を見てくる。知らないぞ?

『マーリアとはハトコだったから、他の令嬢より親しかったんじゃないか?』

そう答えたが、概ね事実だ。

『婚約者の公爵令嬢は歳が離れてるからなぁ。
 俺たちの婚約者くらいしか気軽に話さないんじゃない?』

『だよな。それにマーリア妃は美人だから見とれても仕方ない。
 ひょっとして殿下の初恋の相手だったりして。』

『ありえそう。マーリア妃を見たら、婚約者は子供だろうしな。
 それにあの様子じゃ、もう夢中なんじゃないか?』

『マーリアと上手くいってるってことだよな?』

思わず確認するように、みんなに聞いていた。

『心配ないと思うぞ?上手くいってなかったら俺たちに助言をほしがると思う。
 こういう場合はどうするべきだ?とか、怒ってる理由がわからない。とか。』

『殿下は女っ気がないから、女心に疎そうだもんね。
 助言できるとすれば俺たちだから、それがなく機嫌がいいということは上手くいってる。』

『ならよかった。』

『ほんと、捨て身で驚いたけど、幸せじゃなきゃ罪悪感が消えないよ。』
 
ここにいる4人はそれぞれマーリアに罪悪感を持っている。当然だけどな。



それから少しして、クロノスからマーリアが妊娠したと告げられた。

クロノスの見たことがないような締まりのない嬉しそうな顔を見て、マーリアを愛しているのだろうと思った。

心からの祝福を伝えることが自分にできる精一杯だ。

マーリアが幸せなら、自分も前を向こう。



 
 
自分とネリリの決着がついた少し後、マーリアが側妃になったということと妊娠したということが王城で働く者の間に徐々に広まっていった。

当然、マーリアと俺がいつの間に婚約を解消していたのかという話になる。

なので、情けない話だと少し脚色して話した。

『女遊びがマーリアにバレて婚約解消になった。その後、王太子が口説いたようだ。』

俺が悪いと認識させることで弟が侯爵位を継ぐことの経緯もわかるだろう。

みんな、ご愁傷様といった感じで肩を叩いて去っていった。

ま、そのうち笑い話にでもなるかな。

 
悪者になるんじゃない。元々やらかしたのが自分なのだから。泥を被るのは当然だ。

マーリアは既に高貴な存在になったんだ。誰も浮気されただなんて言わない。
むしろ、愚かな俺をあっさり捨てた潔い女性だ。
 
俺がクロノスの秘めた思いに気づいて身を引いた?そんな美談よりこっちの方が納得するさ。





 
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