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4.
しおりを挟むアーサーの公爵家の応接室で、婚約破棄の手続きは進められた。
「この度は、ナタリーが大変不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません。」
「ああ、こちらも一応ナタリー嬢が変わっているということを踏まえた上で婚約を結んだ。
だが、第三者と一緒に従者扱いされるとさすがに婚約を継続するわけにはいかない。
ネイドがいなけりゃ解消でもいいんだが、体面もあるので婚約破棄とする。」
「はい。こちらの有責で慰謝料もお支払い致します。」
「ああ。規定料の額で構わない。アーサーを侯爵家で鍛えてくれたしな。
…ナタリー嬢は今後どうされる?」
「ナタリーは跡継ぎから外しました。カレンを跡に据えます。
本人はネイドの侯爵家に嫁ぐ気でおりますが、向こうがどう思うか…」
「向こうにも慰謝料を請求するがな、それとなく圧をかけてやるよ。」
「ありがたいですが…ナタリーが3歳年上ですから、結婚までに期間が開きすぎるのです。」
「あぁ、なるほど。では後継者優遇措置を使えばいいのでは?
あの家は跡継ぎはネイドだけ。婚約者が成人していればネイドが16歳で結婚できる。」
本来は男は18歳で結婚できるが、後継者優遇措置は直系が途絶えるのを防ぐために早く結婚し子供を設けることを優遇するもので、兄弟がいない場合は16歳で結婚が許可されている。
もちろん、相手も16歳以上でなければならない。
「ということは、早ければ1年以内に結婚できると?」
「ええ。お姫様は王子様に引き取ってもらえばいいのですよ。
そのうち子供が生まれてくれれば、めでたしめでたし。
子供は親がいなくても育つ。侯爵夫妻が孫を育てるでしょう。
おとぎ話の世界の二人は、二人の世界がお似合いですからね。」
要するに、侯爵家の仕事はあの二人には任せない方向で進めるってことだ。
後継者は孫。従者に仕事を任せる気でいた者に爵位は相応しくない。
それをネイドの侯爵家に圧をかけて伝えるってこと。
いい案だ。そう思った。
その時、侯爵夫人がアーサーに向かって聞いた。
「失礼ですが、アーサー様は今後はどうなさるのかお決まりですか?」
「ええ。父の保有爵位を貰おうと考えておりますので、ご心配なく。」
「そうでしたの。安心致しました。
もし、お困りでしたらカレンの婚約者ではどうかと思ったのですが…」
「こら。カレンは13歳だ。アーサー殿の7歳下なんだから、さすがに気の毒だよ。」
「そうですわね。カレンが結婚できる16歳になるまで3年もありますものね。失礼しました。」
「いえ。ご心配いただきありがとうございます。」
「こちらに原因があるので当然のことです。」
比較的円満な婚約破棄の手続きが終わった。
しかし、アーサーの頭の中は少し混乱していた。
侯爵家・カレン・3年……なぜかそれがグルグルと回っていたのだ。
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