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しおりを挟む侯爵家の次女カレンは姉の婚約者のアーサーとお茶を飲みながら雑談をしていた。
「なあ、カレン。ナタリーは遅くないか?何してるんだ?」
「あぁ、お姉様はおそらく着替え直しておめかししてるんですよ。ネイド様が来るので。」
「ネイドってカレンの婚約者になる?」
「その予定ではありますが、どうなるでしょうね?」
「うまくいってないのか?」
「う~ん。彼が一目惚れする瞬間を見てしまったのですよ。」
「まさか、ナタリーとか言わないよな?」
アーサーの顔がひきつっている。
「そのまさかです。ちなみにお姉様もです。」
「はあ!?」
「二人が会った時、しばらく私は存在を忘れられました。
今にも手を取り合いそうな雰囲気でしたよ。ネイド様が来られたら4人でお茶しますか?」
「マジかよ。どうするんだ?」
「どうする気なのか、アーサー様もお考えになれる最後の機会かもしれませんよ?」
「どういう意味だ?」
「あの姉と結婚して、何十年もそばにいるんですよ?ちゃんと覚悟できてますか?」
「………」
「うちへの婿入りが無くなっても、今ならまだ他家から声がかかるかもしれないし。
アーサー様なら王宮でも働けるでしょう?」
「この侯爵家はどうするんだ?」
「それは、私が何とかするしかないですかね。」
「カレンが継ぐのか?」
「姉とネイド様では潰しそうでしょ?元々ネイド様は自分の侯爵家を継がれる方ですから。」
「その二人、本当に結婚させるのか?」
「アーサー様が婚約を解消してくださったらね。会えばわかりますよ。」
私は半ば投げやりよ。
ネイド様に恋をしていた訳ではないわ。
貴族令嬢として、好きな人に嫁げる者は一握りだから。
婚約したら、その人のいいところを見つけて好きになろうという気持ちだったんだけど…
婚約前から私が視界に入らないような人に嫁ぐ気なんて起こらないわ。
その時、ネイドの来訪が告げられた。
「アーサー様、どうします?興味がなければネイド様とは2人で会いますが…」
私がそう言いながら扉を開けた時、少し遠くの会話が屋敷内で聞こえた。
『いらっしゃいませ、ネイド様。私を覚えて下さってる?』
『ええ。もちろんです。
天使のような妖精のような魅力的なナタリー嬢を忘れるなんてありえません。
あぁ、あなたに会えて私は幸せです。この可憐な花をあなたに…』
『まあ!とてもかわいいわ。ありがとう。
あ、でもネイド様はカレンに会いに来たのよね?この花も?』
『いえ、これはナタリー嬢に似合うと私が選んだのです。カレン嬢にはお菓子を…』
『ふふ。嬉しい!サンルームでお話しません?
カレンはまだ来ないから、私がお相手でよろしいかしら?』
『ぜひ、お願いします。エスコートをさせていただいても?』
『あら。お姫様になった気分だわ。』
『喜んで王子になりましょう。』
「「………」」
私とアーサー様は顔を見合わせて呆れて言葉が出なかったけど、どうするか聞きましょう。
「お姉様はアーサー様がお待ちなのをお忘れのようですね。
私はあの二人のもとへ行きますが、どうされます?」
「……っはぁ。俺も行くよ。」
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