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しおりを挟むウォルターは、レベッカに侍女を辞めさせて愛人手当を渡して愛人らしく過ごさせれば問題は解決すると愚かな考えをしたダッチス様に言った。
「ダッチス様、現実逃避しないでちゃんと考えてください。レベッカのしたことはそんなことで許せるとお思いなのですか?」
「だが、俺の愛人になりたくてしたことなんだろう?アリーズは愛人を認めているのだから、侍女を辞めさせて2人の関わりをなくせばいいだけじゃないか。」
「愛人が目的ならば、どうしてレベッカは嘘をついてまで奥様の侍女に残ったのです?レベッカがダッチス様に伝えた奥様の言動は全部嘘なのですよ。その嘘を信じていたダッチス様は奥様のことを性悪だと思ったのですよね。
レベッカはそう思わせたくて、嘘を吹き込んできたのだとしたら?彼女の狙いは奥様を追い出して自分がダッチス様の妻になることかもしれませんよ?」
「だが、レベッカは妻になりたいと言ったことはない。妻にする気もないが。」
「言わないだけでは?心の奥底の願いはわかりません。
それに、ミリアム様のこともです。レベッカがミリアム様にも同じようなことをしていたとしたら?
あの頃も、ミリアム様がこう言っていた、ああ言っていたとレベッカが告げ口してきていましたよね。直接会うこともほとんどなくなって、レベッカを通じて話していたように思います。」
「……まさか、そんな。ははっ……嘘だろ。」
「ミリアム様はダッチス様に嫌われていると思っているような発言をしたことがありました。離婚を切り出した時のことです。覚えていますか?」
「……そうだったか?」
「ええ。不思議に思いましたので記憶に残っています。レベッカが吹き込んだのでしょう。
離婚を拒否されたミリアム様は気鬱の気があると侍女長が言っていました。その直後、レベッカから庭師との不貞の話がありました。我々はその現場を見たわけではありません。そうですよね?」
「……ああ。まさか、不貞まで嘘だというのか?心中しているんだぞ?」
「本当に心中だったか、事実はわかりません。ですが、事故で処理されると思ったのに心中だと噂が広まったのは、レベッカが2人の仲のことを事故の調査をしていた誰かに話したからではないかと思っています。」
ミリアム様と庭師の不貞のことを知っている者はほとんどいないはずだ。
レベッカの嘘だったのであれば、レベッカ以外には我々しか知らないだろう。
「心中の噂の出所が、レベッカだと?」
「はい。王都にまで妻と不貞相手が心中したと広がり、ヤケ酒をしていたダッチス様をレベッカが誘惑した。レベッカの計画では、自分を妻にしてくれるか、愛人にしてくれると思った。だけど、それ1回きりだったので再び計画したのではないでしょうか。」
「……随分と長期計画だな。舐められたもんだ。」
「そうですよ?レベッカはモリス男爵家を嘘でバラバラにしたのかもしれないのです。ダッチス様を簡単に騙せると舐めているからこそ、あんなに堂々と執務室に入り込んでくるのではないですか?」
「そう言えば、大体お前が席を外している時に現れるな。」
「ようやくお気づきで?つまり奥様の侍女の仕事なんてしていない証明ですよ。」
ようやく現実を見てくれただろうか。ダッチス様の目にレベッカへの怒りを感じた。
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