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しおりを挟むアリーズは、義娘となったリズベスのことを知ろうと思った。
「リズベスはいつも何をして過ごしているの?」
「文字のお勉強をしたり、本を読んだり、お絵描きをしたり……」
机の上には絵本や子供向きの童話の本が置かれていた。
下位貴族は高位貴族よりも教育が少し遅く始まる傾向にあるため、7歳のリズベスならこの程度でもおかしくない。
長子あるいは長男は家を継ぐために下の兄弟よりも優遇されて教育を受ける。
初夜でアリーズには子供を産ませない、リズベスがモリス男爵家の跡継ぎだと男爵は言った。
家庭教師や礼儀作法の教育をいつから考えているのか、モリス男爵に確認しなければならない。
彼に会う用事ができたと思って、少し憂鬱になった。
「文字はリズベスの侍女、ロミーナだったかしら?彼女が教えてくれているの?」
「うん。そう。いつも本を読んでくれていたけど、自分で読めたら楽しいからって。」
「読めるようになって楽しい?」
「うん!ロミーナがいない時でも読めるし。」
そう言えば、今、ロミーナはいない。
リズベスの部屋に一人で来たアリーズも変だけど、侍女というのは側にいるものだ。
……アリーズの侍女レベッカは一体どこで何をしているやら。
「ロミーナは今どこに?」
「多分、お昼ご飯?」
そういうことか。
リズベスの食事を運んできて、食べたものを下げた後、ロミーナは自分の昼食を取っている。
おそらく、この時間はリズベスの午睡の時間。
しかし、7歳になったロミーナはもう午睡を必要とするような幼子ではないため、一人で本を読んでいたところにアリーズがやってきたということだろう。
次にロミーナがこの部屋に来るのは、午睡を終えたお茶の時間辺りかもしれない。
専属侍女は拘束時間が長いため、この時間を長い休憩に充てているのだろう。
リズベスに兄弟がいれば、兄弟の侍女と交代で子供たちの側にいることができるけど、一人ではそれができない。
以前は誰かにリズベスのことを頼んで休憩していたかもしれないが、都合がいいことに、リズベスは引きこもりになった。部屋から出ないのだ。
それに、用があればベルを鳴らせと言われれば理解できる歳になったということもあるだろう。
そのため、こうしてリズベスが一人きりの時間ができてしまったということらしい。
侍女の数が少ない男爵家では仕方がないことでもある。
「ロミーナはリズベスにとって、どんな侍女かしら?」
「どんなって?」
「優しいとか、楽しい、怖い、いじわる、真面目、いい加減。リズベスはどう思ってる?」
「う~ん。あまり笑わないけど、真面目で優しい?」
あぁ、なるほど。
リズベスのことでロミーナに少し話を聞いたけれど、アリーズが抱いた感覚と左程かわらない。
決して明るくて朗らかとは言えないロミーナの本質をリズベスはわかっているらしい。
アリーズの専属侍女であるレベッカが、リズベスの専属侍女でなくてよかったと心から思った。
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