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しおりを挟む数日後、セバスの旦那様であるブラッドリーの元に妻がやってきた。
「ブラッドリー様、私は何も聞いておりませんが?」
「……何の話だ?」
「2人目の子供のことです。私の許可なく勝手に何をしてくれているのですか!」
「そんなに怒らなくても。ラインハルトにも兄弟がいればいいと思ったんだ。」
ラインハルトというのはジュゼットが契約で産んだ子供の名前だった。
「前と同じく私の子供ということにするつもりなのですよね?
そうなると、その女性が妊娠中は私はまた部屋で過ごすことになるのです。
なのに勝手なことを。私にも都合があるのですよ!」
1人目の時、妻であるカサンドラの妊娠を誤魔化していることを限られた使用人にしか知らないようにするために、お腹が目立ち始めると言われる時期からカサンドラは部屋から出ないように頼んだ。
具合が悪く、社交もできないということにしたのだ。
2人目を望むのであれば、確かにカサンドラの許可は必要だった。
「すまない。だが、我が公爵家にはもう一人はいるべきだ。」
「……私は承知しません。」
「元は君が原因なんだが?」
「一人でもいいと思いますが?」
会話は平行線を辿り、ひとまず2人目の子供のことはおいておくことになった。
しかし3週間後、セバスが狼狽えて言った。
「旦那様、別邸の例の女性ですが、月のものが来ておりません。
妊娠した可能性があります。
あと10日ほど経っても月のものがなければ、ほぼ妊娠は確定ということです。」
「……なんということだ。カサンドラは承知していないというのに。」
「環境の変化でズレる女性もいるとのことです。期待しましょう。」
期待……どっちに?
妊娠していれば2人目の子供を持つことができるが、カサンドラは怒るだろう。
妊娠していなければ今後も2人目の子供を持つことは叶わないだろうが、今の別邸にいる令嬢の子供は好ましくないためにホッとするかもしれない。
どちらかと言えば、妊娠していないことに期待をしていた。
しかし、願い虚しく別邸の令嬢の妊娠は確実となった。
妻カサンドラに報告すると怒り狂った。
「信じられない!私のことを蔑ろにして。もう限界だわ!」
そう言い捨てたカサンドラの姿が消えたのは、翌日だった。
カサンドラは執事見習いの男と逃げた。
一応、離婚届を置いていき、全ての宝石を持ち出したようだった。
しかし、ブラッドリーは離婚届や宝石のことよりも、2人目の母親であるべきカサンドラがいなくなってしまったということのほうが重要だった。
「どうすればいいんだ?カサンドラがいなければ、我が子の母がいない。
別邸の女を妻にはできない。
どこの誰かは知らないが、アレは阿婆擦れという感じだった。
愛人が産んで引き取ったということにするか?
公爵家に庶子?
いや、私に愛人がいたということも子供が庶子になるということも受け入れられない。」
悩んだ結果、ブラッドリーはカサンドラの父親に連絡を取った。
「これは久しぶりだな。ブラッドリー君。カサンドラとラインハルトは元気かね?」
「……カサンドラが離婚届を置き、男と宝石と共に逃げました。」
ブラッドリーがそう告げると、カサンドラの父親であるパモ公爵は大笑いをした。
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