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しおりを挟むビビアナの父である公爵に会い、ビビアナの不貞のことを伝えた。記録を残したことも。
公爵の孫をアシュレイの跡継ぎにすることができないということを報告したのだ。
ビビアナと離婚しても、公爵家との繋がりのある子供は跡継ぎになるはずだったのだ。
もちろん、再婚する気もなかったアシュレイもそのつもりでいた。
だが、風習に則り、アシュレイは我が子であるが跡継ぎには認めないことを報告した。
「ばかな……あの娘はそんなに愚かだったのか。寂しいからと男を引き入れるとは。」
「衣食住に不自由な思いはさせていませんでした。
それに、同じ屋敷にいてほしくないという理由でマーガレット様を追い出そうとしたので彼女には別邸に行ってもらっています。
ビビアナが無事に子供を産むために配慮したのに裏切られました。」
「つまり、子供も引き取れということだな?侯爵家には不要になったからな。
再婚するにも子供は邪魔になるだろう。そういうことか。」
「いえ、違います。子供は僕が引き取ります。父が命がけで守った子供ですので冷遇する気はありません。
男だったとしても跡継ぎにはしない。それをご理解いただきたいのです。
ですが、万が一跡継ぎにせざるを得ない場合には、お分かりですね?」
「……ああ。」
アシュレイが再婚しても新たな子供ができなかった場合は、ビビアナとの子供を侯爵家の跡継ぎにすることになるが、その場合は妊娠中の不貞を公表されることになり産みの母であるビビアナは処刑されるのだ。
当然、公爵家にとっても醜聞である。
そのため、通常は公表を避けるために離婚して子供と共に実家に帰し、母子共に平民になるか修道院や孤児院に行く道になるのだ。
なんとなく察することと公表されることは大きく違う。
つまり、この国の貴族は妊婦の身の安全も非常に大事なのだ。
風習を利用して妊婦が襲われることもあるので、貴族の妊婦は家から出ることは少ない。
風習をなくすべきだという意見もあるが、結局その子供は何事もなく産まれても跡継ぎにしたくない誰かから狙われるのであれば同じことだと言われてなくならない。
そもそも、風習は法律で定められたものとは違うので強制でもないのだが、なぜか妊婦の不貞は托卵と同罪で公表されると処刑対象となるのだ。
それくらい正統な血筋を重んじる国であり、腹の子を汚す不貞は罪深いのだ。
罪深い母親から産まれた子供が跡継ぎになる場合は、母親の処刑で穢れを払うことになるため非難の対象にしてはいけない。
もっとも、母親が処刑されるような事態になることはこの何十年もの間、記録にはないが。
公爵家側は、ビビアナと共に子供を引き取ることで醜聞は避けられる。
だが、父が守った子供を不遇にしたくないというアシュレイに公爵は従わざるを得ない。
アシュレイに別の子供ができることが、誰にとっても良いことなのだ。
今思えば、夜会の3日前に妊娠がわかったビビアナを家から出すべきではなかったのだ。
夜会のために用意した流行のドレスが着れなくなる前に行きたいと押し切られ、父の死に繋がる事故が起きてしまった。
ビビアナとの離婚は、父の死に関連することだと社交界には納得されるだろう。
産まれてくる子供もビビアナの子供を跡継ぎにする気にならないからだと理解される。
アシュレイが再婚して新たに子供ができれば、ビビアナの妊娠中の不貞は社交界にバレることはないのだ。
ビビアナの子供も穢されたということを知らないままでいられる。
そのことを、マーガレットを手に入れるために利用する。
優しいマーガレットならきっと………
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