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しおりを挟むアシュレイの婚約者であるビビアナは実母の友人の娘で、まだ両親が離婚する前に僕たちの婚約は結ばれていた。
ビビアナは公爵令嬢で、弟がいる。
アシュレイの両親が離婚してから12歳までは会っていなかったが、そろそろ本格的に交流を始めることになり月に一度会うことになっていた。
うちと公爵家を交互に訪れて会っていたが、ビビアナは少し気が強い令嬢だと思った。
「アシュレイ様、継母にいじめられてない?継母っていじめるものなんでしょ?」
「それは偏見もいいところだな。彼女はそんな人じゃない。」
「でも私のお母様が、私もいじめられるから近寄るなって言ってたわ。
アシュレイ様の実のお母様と親戚になれるのを楽しみにしていたのに、誤解から離婚することになって継母のせいで復縁もできなかったって。」
「ビビアナ嬢、それは君の母上の勘違いだ。僕の実母が亡くなったのは父が再婚する前の話だ。
マーガレット様は全く関係ない。」
「でも18歳まで婚約者もいなかったのは、おとなしそうな顔をして遊んでたからだろうって。
侯爵様を騙して後妻にしてもらったんだって言ってたわ。」
「君は証拠もないそんな話を信じているのか?ただの悪口を人に吹聴するのはやめるんだな。自分の評判まで下げることになりかねないよ。」
「ひどいわ!私やお母様を侮辱するの?」
「どっちがひどいんだ?勝手な想像で侯爵夫人を貶めようとしているのは君だろう?」
「私はアシュレイ様のことを心配してあげたのに!」
「そんな見当違いな心配はいらないよ。」
「もう帰る!」
「どうぞご自由に。」
アシュレイとビビアナは毎回こんな言い合いをして終わることになる。
13歳でアシュレイが閨事の座学を終えた後は、ビビアナの女の勘が働いていたのか、マーガレットのことをもっと貶すようになっていた。
15歳になる頃にはビビアナも閨事に関しての知識を得たのか言い方が露骨になっていく。
「あなたの継母、あなたに色目を使っていない?心配だわ。離婚を勧めたらどうかしら。
5年経っても侯爵様との間に子供ができないだなんて嫁いだ意味ないじゃない。
侯爵様に相手にされていないに違いないわ。」
「マーガレット様は子供を産むために嫁いできたわけじゃない。
父が侯爵になるための社交のパートナーとして嫁いできているんだ。」
「あら。ならやっぱり相手にされていないからあなたに色目を使って誘惑しているのよ。ああ嫌だわ。」
一体どういう角度から見れば、マーガレットがアシュレイに色目を使っているように見えるのだろう。
ぜひともその姿を見てみたいものだ。
どちらかと言えば、アシュレイがマーガレットを邪な目で見ていると言えるのに。
自慰の時に思い浮かべるのは、マーガレットなのだから。
年上の魅力的な女性が近くにいるんだ。仕方がないだろう?
「ビビアナ嬢、そんなにマーガレット様のことが気にいらないのなら、僕との婚約を解消したらどうだろう。
そうすれば関わることもなくなるよ。君の母上の友人であった僕の実母はもういないんだ。
この婚約に拘る必要はもうないんじゃないかな?」
「ひどい!私は何も悪くないのに婚約解消を言い出すだなんて。悪いのは継母でしょ?
私は絶対に婚約解消なんてしないんだから!もう帰る!!」
「どうぞご自由に。」
マーガレットを悪く言うビビアナと婚約解消したいけれど、悪口くらいでは婚約を解消する理由にならないことが残念だ。
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