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しおりを挟む夕方、ユラは目を覚ました。
見回すと、自分が使わせてもらっている部屋のようで朝?夜?と頭が働いていなかった。
しかし、ふと直前の記憶が蘇り顔が熱くなった。
(夢?じゃないわよね?あ、あんなトコを…舐められたわ)
しかし、その後の記憶はない。ベッドから体を起こしても違和感もなかった。
助けてくれた人はユラの純潔を奪うようなことはしなかったとホッとした。
(快感を感じたから媚薬の症状が治まったのね。…あれが快感なのね)
熱くなった頬を押さえていると、侍女のミミが気づいた。
「ユラ様!お目覚めになられたのですね。体調はいかがですか?」
「大丈夫よ。…途中から意識がないのだけれど閉じ込められたところを見つけてもらえたようね。」
「はい。私が庭園に戻るとユラ様がいらっしゃらなくて…衛兵が侍女と歩いて行ったと。
お部屋にも戻られてなかったので、王太子様のところか王妃様のところだと思ったのです。
ですが、確認しても来られていないと言うことで、事態を重くみた陛下が捜索の指示を。」
「…そう。皆様にご迷惑をお掛けしてしまったのね。」
「申し訳ございません。私がおそばを離れたせいです。」
「違うわ。たまたま一人になったところを狙われたのよ。
一緒にいたら、ミミも危害を加えられたか別のところに閉じ込められたわ。
今日のことは、計画的だったと思うから。」
「初めからユラ様を穢すことが目的だったのですか?」
「媚薬を飲ませたのですもの。単なる醜聞にする気がない悪意を感じるわ。
…私を助けてくれた方は偶然通った時に巻き込まれたのよね?
お礼を言いたいわ。王城勤務の方よね?どこかで見たことがあるわ。誰か知ってる?」
「王太子様がそのことでお話があるとのことでした。
お目覚めになったことを伝えてもらいますね。
その間に入浴されますか?」
「そうね。そうしようかしら。」
ミミは部屋の前にいた者に伝言を伝え、入浴の準備を始めた。
入浴を終え、くつろいでいたところに王太子が部屋を訪れた。
「ユラ、大丈夫か?」
「はい、ライアン様。ご迷惑をおかけいたしました。」
「いや、こちらの失態だ。王宮でこんなことをしでかす者がいたとは。
ユラをあの場所まで誘導した侍女は顔見知りか?」
「いいえ、知らない方でした。ライアン様のお呼びだと言われて信じてしまいました。」
「そうか…父は誘拐も疑い捜索を指示したため、お前が行方不明だったことを知る者は多い。
だが、うっかり図書室の死角でうたた寝をしていたことになっている。
あの部屋の上が図書室だからな。
発見した騎士たちには口外禁止を言い渡しているから他は誰も知らない。
だから、あの部屋で起こったことは何もなかった。それでいいな?」
「…醜聞を避けるためですものね。わかりました。
ですが、助けて下さった方にお礼を言いたいのですが。」
「いや、直接会わない方がいいだろう。普段、会わない者との接触は憶測を呼ぶ。
あの者は来年結婚するんだ。婚約者に誤解されると困るだろう。」
「…婚約者が…そうですか。既婚者の方でも不思議ではありませんでしたものね。
ではお手紙で…いえ、ご迷惑になりますね。
ライアン様からお伝えいただけますか?『助けていただいて感謝している』と。」
「ああ、伝えておく。今日のことは忘れろ。何もなかったんだ。
犯人は必ず見つける。
それから、すまないが外だけでなく王宮内でも護衛をつける。一人にはなるな。」
「わかりました。」
王太子が部屋を出ていき、ユラは溜息をついた。
婚約者…か。何故か落胆していた。
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