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アニオン王国の公爵令嬢であるユラは、一年間だけ隣国キャロル王国に留学に来た。 
自国で嫌なことがあり、逃亡したのである。

伯母がこの国の王妃で、王宮に部屋を貰って学園に通っていた。
留学も半年が過ぎ、この国にも慣れてきていた。


学園がお休みで許可された庭園を歩いていた時、侍女に声をかけられた。

「ユラ様、王太子殿下がお呼びです。ご案内いたします。」

「そう、よろしくね。あ、でも侍女のミミがここに戻ってくるの。」

ユラ付の侍女ミミが日傘を取りに行ったところだった。

「ミミには会いましたので伝えました。部屋で待っているそうです。」

「そうなの?わかったわ。」

ミミならすぐに戻って付いてきそうなのに。
侍女の案内で進むと、王城の端の資料室近くの応接室だった。
まだ王太子は来ていない。
侍女はソファに座ったユラに紅茶を入れて、扉を開けて言った。

「王太子殿下は間もなく来られると思います。お茶を飲んでお待ちください。」

「わかったわ。ありがとう。」

ミミがいないので部屋に一人になった。さっきの侍女にいてもらえばよかった。
そう思いながら紅茶を飲む。少し変わった味。どこの産地?と思いながらコクコクと飲んだ。
…あれ?体が熱い。何か変?
手が震えて来て、持っていたカップがソーサーの上に落ちてガシャンと響く。
すると、扉がノックされた後、開いた。

「何かありましたか?音がしましたが…」

真っ赤になって震えるユラをみた男が慌てて駆け寄ってきた。

「大丈夫ですか?何があったのです?」

「…紅茶…に…何か…」

「…失礼しますね。」

男がユラに触れると、ユラは敏感に反応し甘い吐息を吐く。

「…おそらく媚薬ですね。立てますか?」

ユラは首を横に振った。
仕方なく男が抱えようとしたが、触れられるのが辛くて首を横に振った。

「…ダメ……今は触らないで?」

ユラの言葉に男は手をグッと握る。

「医者を呼んできます。」

そう言って扉に向かったが、廊下で揉めてる声がした。

(ちょっと来るのが遅いわよ)
(持ち場の交代にもたついたんだ。で?俺たちに犯して欲しい女はどこだ?)
(それが…さっき誰か部屋に入っちゃったの。出てきてないし)
(そいつが今出てきたらヤバいじゃん)
(なら、扉が開かないようにして)
(じゃあこれで…)カタカタ…

しまった!扉を動かすが開かない。

(気づかれた!逃げろ!)

「くそっ!」

扉は開かない。窓もない。医者を呼べない。どうすればいい?
誰か気づいても部屋に二人きりで彼女は媚薬に冒されている。疑われるな…

「すまない。閉じ込められたようです。」

男はユラを見ないようにしていたが、ユラの熱い吐息が聞こえていてチラッと見た。
目が合ったユラは男に言った。

「助けて……おかしく…なる。」

「…触れることになりますが?」

「どうしたら…治まるの?」

「おそらく…性的な快感を感じて満足すれば…」

「お願い…我慢…できない…助けて…触れて?」

ユラの言葉に男の葛藤が理性から欲望を孕んだ感情の方へと振れた。
男はユラをソファの上で後ろから抱きしめる。
その刺激でユラは甘く喘ぐ。

「あ…んん…」

男は首筋に口づけながら、後ろのボタンを外し下着もずらして胸を直接触る。
男の指が両乳首をつまむと、ユラはさらに甘い声をあげた。

「あん。…もっと…」

スカートの裾から手が入り、脚を撫でながら秘部に辿り着く。
下着の上からでも濡れているのがわかると、少しずらして指で触れた。

「んん…ああ…あ…そこ…もっと…ああっ」

「気持ちいい?」

男の声が耳元で聞こえ、ユラは頷きながら強請った。

「中が…熱いの。…何とかして?」

「じゃあ、指、入れるよ?」

何度もユラは頷いた。
そして、指が一本入り頭の後ろを男の肩に乗せて喘ぐ。
ふと視線を感じて後ろを見上げると、こめかみに口づけされた。
すると、ユラは中の指を締め付けてしまった。


 

 



 
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