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後編
しおりを挟むパンパンと大きく手を鳴らす方へ注目が集まった。
そこには王太子、第二王子、第三王子が来ていた。
王太子が静かになったフロアを見渡しながら、声をあげた。
「サラシュ嬢には昨今の風紀の乱れを正すために協力してもらった。
彼女に恨みを抱くのは筋違いであるため、王家が許さない。
夫や婚約者がいるにもかかわらず不貞をしたのは自分たちだ。
各家にも言い分はあるだろう。
『夫、婚約者が不貞をしたから自分も』この場合はお互いさまで話し合いの余地があるはずだ。
女性側だけを責めるのは許されないと思え。
男側だけ、女側だけが不貞をした場合は離婚や婚約破棄を認めるが、慰謝料は常識の範囲内だ。
この国では、妻が不妊であると確定した場合のみ第二夫人が認められている。
男側に原因があれば、親族からの養子を勧めている。
庶子は理由がない限り許されていないぞ。
愛人を持つことが当たり前のような風習は祖父の時代になくなったはずだ。
姦通罪が出来たからな。
しかし、どうやら忘れ去られたようなので姦通罪の罰則を厳しくすることにする。
だが今、姦通罪を適用すると大人数な上、家系が途絶える恐れがある。
よって特例だ。
来月頭までの10日間を不貞の清算期間として、身綺麗にしろ。禍根を残すな。
その後の不貞は姦通罪として取り締まる。 以上だ。」
………あら?私も皆様と一緒に破滅に向かうつもりでぶっちゃけたはずですのに?
王家の協力者として守られてしまいましたわね?
いろんな貴族家の恨みをかったことによって仲良く修道院行きを考えていたのですが……
姦通罪。名ばかりで取り締まることのない罪だと思っていましたが。
確かに実在する罪名ですので、私が悪いはずがありませんわね。
お父様が王子様方と騎士団長とお話なさっているところを見ると、私を守るために動いてくださったようですわね。
サラシュが心の中で現状を確認していると、お父様と第三王子のダンフォート様がこちらへ向かってきた。
「サラシュ。お前は本当に容赦ないな。…あんな男のために捨て身はやめてくれ。」
「申し訳ございません?ボーデン様のぶっちゃけに対抗意識が…おほほ。
ダンフォート殿下、お久しぶりでございます。」
「ああ、うん。笑わせてもらったよ。私の新たな婚約者は冷静に怒るんだな。」
「?新たな婚約者ですか?隣国の王女殿下は?」
「彼女は…不貞による妊娠中だな。もちろん、婚約は解消。で、帰ってきた。
そして、先ほど王家とそなたの公爵家との間で婚約を結ぶことが決まった。」
「あら。ではよろしくお願いいたします。で、よろしくて?」
「ああ。よろしく。…やっぱりいいね、そのあっさりした切り返し。」
ダンフォートはサラシュとボーデンの会話を聞きながらずっと笑っていたのだ。
「…殿下、本当にこの娘でよろしいのでしょうか?振り回されますよ?」
「いいよ。それも楽しそうだ。」
ニッコリ笑い合ったサラシュとダンフォート。意気投合した二人は最早無敵。
王家の後押しもあり、二人を敵に回すととばっちりを受けると噂され王国の平穏時代に貢献したと後々まで語られた。
<終わり>
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