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しおりを挟む双子の妹の方、実際にはセレスティーナが産んだ子供の方を王女として王家に迎え入れたいと王妃様は言った。
最初、窘めていた国王陛下も女の子の顔を見ているとその気になってしまったのだろうか。
ヴェントスと父であるモールメント公爵を伺うように見てきた。
「ヴェントス、お前はどう思う?」
父に問われ、正直に答えた。
「……私としましては、その子が陛下や王妃様の心を慰めることになるのでしたら構いません。
ですが、セレスティーナとは別人です。彼女と違っていても比較することなく大切にしていただけるのであれば何も言うことはありません。」
「もちろんよ。大切にするわ。」
これはもう、決定したと言っていいだろう。国王夫妻の養女になるのか王太子夫妻の養女になるのかはわからないが、確かに王女というのは国として使い道もあるため、いて損はないのだ。
万が一、ジュディの産んだ子供を欲しがっていたら了承することなどできなかったが、この女の子は確かにセレスティーナの子供で、国王夫妻の孫であることに間違いないのだから。
数日後、まだ若かったセレスティーナの葬儀はしめやかに行われた。
そして、セレスティーナの死去に心を痛めた国王夫妻の希望により双子の妹を王女として引き取ったということも国民に広く伝わったという。
中には、双子を引き離すのが可哀想だという者もいたが、突然娘を失った国王夫妻と愛する妻を失ったヴェントスが双子それぞれを育てることで痛み分けのようになったのだろうと噂された。
意味がわからないが、まぁ、好意的に思われている方がいいので否定はしない。
思わぬ形で結婚生活は終わりを告げたが、出産後のセレスティーナとはほとんど関わらないつもりでいたので、大きな違いはなかった。
ただ、あの張り形は王家に返却すべきかどうか、なんてどうでもいいことを悩んだくらいだ。
ジュディとの間に産まれた男の子はルーベンスと名づけてジュディが乳をあげている。
ルーベンスをセレスティーナの産んだ女の子、ルナティーネと双子にすると言ったのは両親だ。
そうなると、自然にジュディが産んだルーベンスが跡継ぎとなるのだが、両親は別に構わないと言った。
対外的には王女の産んだ子供だし、公爵家としてはヴェントスの子供であることが大事なのだ。
王家の血筋を濃く継ぐルナティーネよりも、ジュディの産んだルーベンスの方が跡継ぎに好ましいらしい。
そしてジュディを母の兄の養女にし、ヴェントスと結婚させるつもりだと言った。
「ジュディと結婚?」
「あら。あなた、ジュディをずっと愛人のままにして誰か他の令嬢と再婚するの?ジュディ以外の女性の隣で眠れる?」
母の言葉に、もうジュディ以外の女はいらないと思った。
「いえ、再婚など考えていなかったので。」
「王妃様もおっしゃっていたでしょう?再婚すればまた子供が産まれるからって。公爵家のためには妻がいた方がいいわ。でないと、ずっと再婚話が舞い込んでくるわよ?
ジュディはあなたと一緒に教育を受けていたから公爵家の嫁にしても恥ずかしくないわ。
元々貴族の血筋なのだし。」
ジュディは伯爵家の次男だった父と、伯爵家の次女だった母の子供だ。使用人としても格が上だった。
「さすがに喪が明けないと再婚はできないけど、根回しはしておくわ。それでいいかしら?」
「はい。……ジュディに求婚してきます。」
ジュディを愛人ではなく妻に。そう思っただけで俺は舞い上がりそうだった。
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