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しおりを挟む両親は、ヴェントスの婚約者は今すぐでなくとも構わないが、王女が別の相手と婚約してヴェントスとの婚約が保留でなくなった時のことを考えて、5歳ほど年下の令嬢までを候補に考え始めていた。
だが、しばらく経ったころ、父が言った。
「王女の結婚相手にと目されていた令息が怪我をした。重症で跡継ぎから外れるそうだ。」
「跡継ぎは誰に?」
「弟がいるらしいが、まだ8歳だ。王女の婚約者にはならないだろう。何か変だと思わないか?」
「……ここ1年ほどの間に高位貴族の令息令嬢にいろいろと起こりすぎていますね。」
ヴェントスの婚約者だったアネモナが切りつけられた事件以降、令嬢の強姦事件や暴行事件、薬に嵌って病院行きとなった者もいると聞く。
妊娠した令嬢もいれば、使用人や下位貴族を孕ませて王女の降嫁相手に相応しくなくなった令息もいる。
「狙いは……お前なのだと思う。お前と王女を中心に考えてみろ。」
父の言葉に驚いたが、言われてみればそうかもしれない。
切りつけられたアネモナ、言い寄ってきていたのに妊娠して結婚した侯爵令嬢、豊満な胸が自慢の伯爵令嬢は強姦されて、美人だが傲慢な侯爵令嬢は薬品を顔にかけられて爛れた。
有力なヴェントスの婚約者候補は次々といなくなった。
暴行を受けて顔が歪んだ令息、夜会で下位貴族令嬢に薬を盛られて妊娠させた令息、単なる飴と思っていたのが依存性の強い薬物だったため頭がおかしくなった令息、そして今回重症で跡継ぎから外れた令息。
有力な王女の降嫁先は次々となくなっている。
「まさか、王家が?……いや、王家であれば婚約を保留ではなく王命にした方が早い。ということは、セレスティーナ王女が誰かにやらせている?」
セレスティーナ王女と会話をしたのは1回だけだ。
12歳から公務として奉仕活動をしている王女は、平民から人気の高い王女だと聞いたことがある。
「王家としては、やはりまたモールメント公爵家に王女を降嫁させるのは他家とのことを考えると避けたいのだろう。だが、王女自身がお前との婚約を望んでいたから保留になったのだとしたら?お前しかいなくなれば周りも納得するしかない。」
父も、まさか王女が?と思いたいようだが、それしか考えられないということだ。
「では俺が王女と婚約すればこの騒動は収まると?」
「……これ以上、犠牲者を出さないためにはそうなるだろう。だが、裏どりはし始めている。
王女が動かしたのはある程度手慣れた組織だ。誰かの伝手がないと無理だろう。王女の身近にいる者が仲介しているはずだ。
王宮には我が公爵家の手の者も入っている。王女の近辺を探らせよう。」
「探ったところで、結婚は決定でしょう?」
「……ああ。何を仕出かすかわからない王女を放置はできない。お前が目当てなら婚約すれば落ち着く。
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