3 / 21
3.
しおりを挟む伯爵はすぐに隣国の辺境まで人を遣った。
辺境伯の屋敷近くの街だ。逃げていなければ見つかるだろう。
本当は今すぐにでも自分たちが行きたかったが、伯爵が隣国に行くとなると手続きに手間取る。
貴族と平民でも出国の手続きは違うが、当主か令息令嬢かでまた違う。
当主がお忍びで出国すると問題が発生した場合、国にも迷惑をかけることになる。
なので、ナターシャのことをよく知っている者たちをつけた。
分かれて探せば見つかるはずだ。
それにしても、まだ隣国にいたのか。
2年前、ナターシャは隣国に嫁いだ姉サリーが出産したということで会いに行った。
そして、その帰りに行方不明になった。
隣国は出国して記録があったので、こちらの国でばかり捜索していたのだ。
それに、ナターシャが行方不明直後にサリーと産まれた娘カーラが流行り病で亡くなったという。
ひょっとして、ナターシャも途中で流行り病で倒れたのではないかと探した。
身元不明の遺体がないかまで探した。でも見つからなかった。
攫われて娼館に売られたのかと思い娼館も調べたし、裏ルートで売られる女性がいると聞き、業者の摘発にも協力したが、ナターシャらしき人物は誰も知らなかった。
それでも探し続けてきた。
ナターシャ、どうしてだ?無事だと知らせてくれれば良かったのに。
好きな人ができたのか?
マロウの浮気を知っていたからか?
あんな男だと知らなかった。マロウの父親が真面目だからといって信用するんじゃなかった。
平民として暮らしたいなら、それでもいい。
元気な顔を見せてほしい。
それにしても、マロウはどうしてすぐに知らせなかったんだ。
今まで連絡してこなかったのに、マロウに見つかったからといって連絡するとは限らないだろう?
それどころか、逃げる可能性だってあるんだ。
どうして護衛の一人でも残してこなかったんだ?
子供がいたことで、婿になれないことが頭にきて碌に会話もなく帰ってきたんだろう。
連れて帰るのは無理でも、住んでる場所や一緒にいる者を知ることもしなかった。
短気な男だ。
もっと早く、マロウとの婚約を解消しておくべきだった。
まあ、それでもナターシャの手がかりを見つけてくれたんだ。許そう。
頼むから、まだそこにいてくれ。
隣国の辺境伯領を訪れた伯爵家の使用人たちは、すぐさま手分けしてナターシャの情報を求めた。
すると、大通りの店付近で証言を得られた。
「ええ。ナターシャという女性を探しに来る人がいれば、辺境伯のお屋敷まで連絡を、と。」
「そうそう。びっくりしたわよね。いきなり男がその女性の頬を叩いて怒鳴って去っていったの。
女性は驚いて、何も言う隙はなかったって感じだったわね。」
「辺境伯のお屋敷で侍女をなさってる女性よね?ナターシャじゃなかった気がするけど。」
つまり、ナターシャは名前を変えて、辺境伯のお屋敷で侍女をしているのではないか。
使用人たちは会って確認しなければならないと、辺境伯のお屋敷へと向かった。
しかし、男が叩いて怒鳴って去っていった?マロウのことだろうが、怒りが沸く。
使用人たちは改めてあの男が嫌いになった。
101
お気に入りに追加
721
あなたにおすすめの小説
(完結)婚約者の勇者に忘れられた王女様――行方不明になった勇者は妻と子供を伴い戻って来た
青空一夏
恋愛
私はジョージア王国の王女でレイラ・ジョージア。護衛騎士のアルフィーは私の憧れの男性だった。彼はローガンナ男爵家の三男で到底私とは結婚できる身分ではない。
それでも私は彼にお嫁さんにしてほしいと告白し勇者になってくれるようにお願いした。勇者は望めば王女とも婚姻できるからだ。
彼は私の為に勇者になり私と婚約。その後、魔物討伐に向かった。
ところが彼は行方不明となりおよそ2年後やっと戻って来た。しかし、彼の横には子供を抱いた見知らぬ女性が立っており・・・・・・
ハッピーエンドではない悲恋になるかもしれません。もやもやエンドの追記あり。ちょっとしたざまぁになっています。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる
田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。
お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。
「あの、どちら様でしょうか?」
「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」
「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」
溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。
ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
すべては、あなたの為にした事です。
cyaru
恋愛
父に道具のように扱われ、成り上がるために侯爵家に嫁がされたルシェル。
夫となるレスピナ侯爵家のオレリアンにはブリジットという恋人がいた。
婚約が決まった時から学園では【運命の2人を引き裂く恥知らず】と虐められ、初夜では屈辱を味わう。
翌朝、夫となったオレリアンの母はルシェルに部屋を移れと言う。
与えられた部屋は使用人の部屋。帰ってこない夫。
ルシェルは離縁に向けて動き出す。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
10月1日。番外編含め完結致しました。多くの方に読んで頂き感謝いたします。
返信不要とありましたので、こちらでお礼を。「早々たる→錚々たる」訂正を致しました。
教えて頂きありがとうございました。
お名前をここに記すことは出来ませんが、感謝いたします。(*^-^*)
私の婚約者が、記憶を無くし他の婚約者を作りました。
霙アルカ。
恋愛
男爵令嬢のルルノアには、婚約者がいた。
ルルノアの婚約者、リヴェル・レヴェリアは第一皇子であり、2人の婚約は2人が勝手に結んだものであり、国王も王妃も2人の結婚を決して許さなかった。
リヴェルはルルノアに問うた。
「私が王でなくても、平民でも、暮らしが豊かでなくても、側にいてくれるか?」と。
ルルノアは二つ返事で、「勿論!リヴェルとなら地獄でも行くわ。」と言った。
2人は誰にもバレぬよう家をでた。が、何者かに2人は襲われた。
何とか逃げ切ったルルノアが目を覚まし、リヴェルの元に行くと、リヴェルはルルノアに向けていた優しい笑みを、違う女性にむけていた。
この罰は永遠に
豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」
「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」
「……ふうん」
その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。
なろう様でも公開中です。
【完結】毎日記憶がリセットされる忘却妻は、自称夫の若侯爵に愛されすぎている。
曽根原ツタ
恋愛
見知らぬ屋敷で目覚めたソフィアは、ユハルと名乗る美貌の侯爵に──三年前から契約結婚していると告げられる。さらに……
「結婚後まもなく、風邪を拗らせた君は、記憶を一部喪失し、少々珍しい体質になったんだ。毎日記憶がリセットされる──というね。びっくりだろう?」
自分のことや家族のことはぼんやり覚えているが、ユハルのことは何ひとつ思い出せない。彼は、「義理で世話をしてるだけで、僕は君を愛していない」と言う。
また、ソフィアの担当医師で、腹違いの義姉のステファニーも、ユハルに恋心を寄せており……?
★小説家になろう様でも更新中
★タイトルは模索中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる