裏切りの結末

しゃーりん

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ライザを修道院から出すためには、絶縁を取り消して復籍する必要があった。

再び家族にならなければ、修道院から出すことができないからだ。

しかし、結論から言うと、ライザは実家の籍のままだった。

なぜかはわからないが、朗報だった。面倒な手続きが不要だったのだから。

僕たちはライザのいる修道院へと向かった。
 


ライザの兄と2人で夜通し馬を走らせる。
アデラインがバリーに話したかどうかはわからないが、一刻も早く着きたかった。
幸い、この侯爵領にある修道院は近いのだ。
ライザを乗せて帰る馬車も遅れてやってくる。 


日が昇った頃に修道院に着き、門番に面会者だと告げて中に入った。

修道長に、ライザを迎えに来た。連れて帰るということを告げると、不思議な顔をされた。


「彼女は外部との交流ができない者です。それに家族はいませんので連れ帰れませんよ。」

「そんなはずはありません。私はライザの兄です。連れ帰ります。」

「……彼女の記録では、家族との絶縁により平民。身寄りなし。死亡時のみの連絡先。
 面会者及び手紙や贈り物等、一切やり取りが禁じられていますが。」

「それは誰の指示でしょうか。絶縁の記録はありません。
 ライザは今も伯爵令嬢です。ちゃんと貴族籍にあることを確認してきました。」

「伯爵令嬢?!そ、それは……申し訳ございません。
 私は2年前にここに参りました。
 前の者より平民の中でも下働きから異動することのない者と引き継ぎを受けておりました。
 どこかで不手際が生じたものと思われます。誠に申し訳ございません。」

「連れ帰れますね?荷物をまとめてここに連れてきてください。」

「かしこまりました。お待ちください。」


修道長が出ていき、僕たちは気分が悪くなった。
面会者、手紙、贈り物の禁止と下働きの指示はアデラインが出したものだろう。
通常は平民でも、下働きから見習い、修道女へと相応しい時期に上がっていく。
罪人でもないライザが10年間もそれを強いられていたのだ。心が痛い。



しばらくして扉が開いた。
そこには、生気を失ったような痩せたライザが、先ほどの修道長と共にいた。


「「ライザ!」」


僕たちは駆け寄った。


「……お兄様……ヒュー……」

「ごめん。遅くなった。迎えに来たよ。一緒に帰ろう。」 

「……どこに?」

「お前の家、伯爵家に。」

「でも、絶縁するって……」

「あれは間違いだ。ちゃんと説明する。帰ろう。」


手続きにサインをして、ライザを連れて出た。
馬車はまだ来ていなかった。
とりあえず、ライザは兄と馬に乗り、一刻も早く侯爵領から出ることを選んだ。

途中、馬車に出会い、僕たちは馬車に乗った。ライザに説明が必要だった。


「ライザ、ごめんな。あの女、アデラインの言うことを信じてしまった。」

「……お兄様、やっぱりアデライン様のせいなの?」

「気づいていたのか?私はヒューイットが違和感に気づくまで何もわからなかった。」

「ヒューが?」

「ごめん、ライザ。気づくのに10年もかかってしまった。
 もっと早く気づいてもおかしくなかったのに。
 やっぱり何年経っても僕は判断が遅いんだ。」


僕たちは、アデラインに違和感を覚えた経緯を話をした。

修道院の場所を教えてもらえなかったこと。
アデライン経由で手紙を出していたこと。
10年間手紙を出し続けても返事がなかったこと。
アデラインの実家がライザの寄付金を払ったとヒューイットは聞いていたということ。
ライザが両親への恨み言を言い、絶縁すると言い出したこと。
寄付金がなくてもひどい扱いをされない修道院にいると伯爵家は聞いていたということ。

これらをアデラインに問い詰めると、全てが嘘だったとわかった。 

それで慌てて迎えに来たと伝えた。




 
 
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