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しおりを挟む結婚後の準備のために、ライザが僕の家に来ることになっていた。
前に会ってから3日経っていた。その間にも手紙は送っていた。
ライザは来てくれるだろうか。迎えに行くべきだっただろうか。
そう悩んでいた時、ライザがやってきた。少し痩せた気がする。
「ライザ、来てくれてありがとう。」
「……ええ。この間は感情的になってごめんなさい。」
「いや、どんなことでも思っていることを言ってほしい。全部、受け止める。」
「ありがとう。おば様たちは?」
「応接室で待ってる。」
ライザと両親の元へと向かい、両親も僕が仕出かしたことについてライザに謝った。
それにより、この件は終わったこととして結婚式及びその後の生活について話を進める。
ライザはここに住む。義両親となる2人に泣き言を言えるような立場じゃなかった。
貴族の男に浮気や愛人などよくあること。それで終わりだ。
ライザにその後、どういう心境の変化が起こっているかはわからない。
彼女はあれ以来、ほとんど感情を出さなかくなった。
だが、辛い表情をする時がある。
やはり、僕を見るのが嫌なのだろうか。
そうだとしても、今はまだ仕方がない。誠実に接することしかできない。
結婚からは逃げられない。何があろうと中止にはならない。
一緒に暮らすようになれば、言いたいのを我慢していることを聞き出したい。
今の彼女も、結婚式をなんとか乗り越えようと頑張っているように感じたから。
ライザが結婚式の準備に投げやりになっていないことが救いだった。
しかし、結婚式まであと1週間という時にライザの従兄である次期侯爵バリーがやってきた。
彼は僕の浮気を知っており、ライザからヒューイットに仕返ししたいから協力を頼まれたと言った。
バリーは、僕の浮気をライザが知ってからすぐ、ライザの純潔をもらったと言った。
それから今までに何度もライザを抱いている、と。
息が止まりそうになった。
あのライザが?仕返しに?そこまで僕はライザを追い詰めてしまった?
バリーは既婚者だというのにライザが誘ったというのか。
信じられない。だが、そんな嘘をついてもライザを抱くことになればわかる。
つまり、ライザが純潔でないというのは事実ということだ。
これは僕の罪だ。僕は受け入れなければならない。
バリーは、結婚式を中止しろと言った。
ライザは自分の愛人にする、と。
どうして今頃?もう式の1週間前だ。
ライザに頼まれた時は一度で関係が終わると思ってたからか?
関係を続けるうちに、ライザを手放せなくなったのか?
バリーがどういう考えで愛人という結論に至ったかはわからないが、あり得ない。
僕は断った。バリーが独身ならば考えた。だが、既婚者で子供もいる。
愛人にさせるくらいなら、僕と結婚した方がいい。
バリーの愛人になりたいとライザが思っているのなら彼女は言ったはずだが、結婚式の準備を進めていたということは僕と結婚するいうことだ。
バリーは怒っていたが、言う通りにする気は全くなかった。
ライザがバリーの愛人になって、誰が喜ぶのか。バリーだけだろう?
ライザの体が気に入ったということか?あるいはライザに好意があるのか?
どちらにしろ、あと1週間でライザは僕と結婚する。
結婚後、バリーがライザと密会できることはないだろう。
いや、ライザがバリーとの関係を続けることを望むとは思えない。
純潔を捨てたのは、僕への当てつけのつもりだろうから。
頼める相手がたまたまバリーだけだった。
ライザがバリーに気持ちがあるなんて思いたくもない。
そして、僕はライザにバリーとのことを聞くことをしなかった。
これが、更なる過ちだったと気づくのは結婚式の夜、つまり初夜だった。
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