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しおりを挟むスカーレットの言うことは、ヒューイットの不安をことごとく突き、ライザとの初夜が成功しないだろうと思わせた。
『男は誰でも、妻との初夜の前に閨事を経験している』
そんなことを教えられた覚えはないが、確かに娼婦を抱いて欲を発散したりする者もいる。
つまり、それも事前勉強ということなのだろうか。
ならば、自分も……
「ライザとの初夜のために……こっそり娼婦に教えてもらうことにするよ。
心配してくれてありがとう。助言してくれて助かった。
ライザには、このことは秘密にしてほしい。」
「もちろんです。ですが、娼婦はやめた方がいいと思います。
娼婦は時々病気を持っていますから。毎日不特定多数の男を相手にするのが仕事ですので。
万が一、移されるとライザ様にも移るかも。
それに、娼館っていろんな人が出入りしています。誰に見られるかもわかりません。」
「でも、みんな娼婦で覚えるんじゃ?だったら、どうしたらいいのだろう。」
「私が手伝います。協力させてください。
私は訳あって既に純潔を失っているから普通の結婚はできないのです。縁談もありません。
学園卒業後は誰かの愛人になるつもりだから、それまでの間、あなたの力になりたいの。」
「スカーレット嬢、そんな……本当にいいのか?
そんな君に何の得にもならないようなことをするなんて。」
「いいんです。それなりに経験はあります。
私の経験で、あなたの役に立てるなら喜んで協力したいの。
それに、愛人にしてくれる人がおじさんかもしれない。最後に若い男に抱かれたいの。」
そんなことを明け透けにいうスカーレットに、本当に善意で申し出てくれているのだと感謝した。
同級生の行く末がおじさんの愛人という少し同情した思いもあり、頼むことにしたのだ。
「ありがとう。助かるよ。」
ここが裏切りの始まりだった。
僕はどうして、スカーレットの言うことを信じてしまったのだろうか。
いつも、どんなことでも悩んで、なかなか決断に至らない優柔不断な僕が。
いつもみたいに迷って『一度考えさせてくれ』と言うことができていれば。
そのまま家に帰り、スカーレットに言われたことが自分にとって正しいことなのか悩んだら。
父や友人に相談したりしていれば。
翌日にライザの顔を見た後だったなら。
………僕はスカーレットの申し出を断っていたに違いない。
しかし、スカーレットの申し出を受けてしまった僕は、これからすぐに実践しようと言われ、驚く僕を気にすることなく街へ連れて行き、ある部屋に入ってベッドに座らされた。
「ここは?宿……じゃないよね?」
「うん。借りている部屋。夜以外なら自由に過ごしていいって言われてるの。
さぁ、女の体を教えてあげる。緊張しないで?
これは勉強なんだから。あなたは教えられたことを覚えて実践するの。
じゃあ、まずはキスから。」
「え……キスも?」
戸惑った僕にスカーレットは容赦なかった。
ベッドに僕を押し倒して、上から逃げられないように口を塞いだのだから。
彼女からしたにしろ、僕の紛れもない浮気の瞬間だった。
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