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オリバーはルナセアラのことを少し見誤っていた。

最初は、パトリックが自分に気持ちが向くように誘導した要領がいい妹なのかと思っていた。

だが実際は、思い人であるパトリックが姉と結ばれるまで、失恋前提で自分の気持ちを守りたいだけの妹だったのだ。 

嫉妬心や恨みや妬みを、家族である姉に抱きたくなかった。そういうことだろう。 


パトリックへの思いはその程度か。
 
そう考えることもできるが、ルナセアラも公爵令嬢。
姉からの略奪となると醜聞になるとわかっている。
だからこそ、自制しなければならないと自分に言い聞かせた結果が姉との表面的な関係なのだろう。

ルナセアラの方が姉であるミルフィーナよりも現実的な考え方ができるらしい。

彼女の方が落ち着いていて、素を見せるようになったミルフィーナの方がコロコロと表情や顔色が変わって年下のようだ。


「君はパトリックのどういうところが好きなんだ?」


別にどうでもいいが聞いてみた。


「オリバー殿下はご存知ないかもしれませんが、あの誕生日パーティーは姉と私、2人のパーティーでした。ここ5年、求婚がどうなるかを見届けるために来てくださる人ばかりで、私の誕生日パーティーでもあることはほとんどの人が忘れていました。」


そうだ。確か、1日違いと聞いた。なのに主役は姉、そしてパトリックだったのだろう。


「パトリック様は、毎年私にもプレゼントを用意してくれていました。姉に求婚を断られた後なのに『誕生日おめでとう』って毎年、手渡ししてくれました。」


それは嬉しいだろうな。
 

「姉のついででも、ちゃんと選んでくれたんだろうなって。私がユリの花が好きだって言ったことを覚えていてくれてユリのガラス細工も手作りで贈ってくれました。」


ついでの域を超えているが、作るのが楽しくなったついでだったんだろうな。 


「姉ではなく私が代わりにこの四阿でよくお茶をご一緒しました。姉がどんな言い訳をして来られなくても怒って帰ることなく、一緒にお茶を飲もうかって誘ってくださいました。気を遣ってくださる優しい人だと思いました。」 

 
そうだな。姉の代わりで来たのにその役割を果たせなかったとなれば、ルナセアラが叱りを受けることになるかもしれない。一応、代理でも約束は果たされたとしなければならないのだから。

 
「君はミルフィーナが頼んだ言い訳をそのままパトリックに伝えていたのか?」

「ほとんど、そうですね。下手に違う理由に変えてしまうと辻褄が合わなくなると困るので。」


病気だと言ったのに街で姿を見られる場合もあるからな。

この子は自分を見てもらうために姉を貶めるような発言をするわけでもなく、ひたむきだっただけだから、パトリックも絆されたか。


「前髪が短すぎるとか、頬の出来物とか?」

「……姉からお聞きに?」


ルナセアラは驚いていた。


「ああ。一通り聞いたよ。ミルフィーナは全てが黒歴史だと言った。可愛いだろう?」


ルナセアラは軽く噴き出して笑ってから言った。


「ええ。ここ最近の姉はとても可愛いです。」 


少しずつ、ミルフィーナは家族の前でも素の自分に戻りつつあるのだ。

 
 
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