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しおりを挟むルナセアラはこの婚約が正しいのか、まだどこか悩んでいるようだった。
「ひょっとして、僕が君に求婚したことは迷惑だった?」
「いえ、そんな。……嬉しかったです。」
そうだよな。そんなはにかんだ笑顔を見せられると、嬉しいと言った言葉に嘘はないと思う。
「じゃあ、何が気にかかる?婚約者になったんだ。君の心を暗くする悩みごとがあるなら聞くよ?」
ルナセアラは一瞬で目が潤んだが、涙を流さずにパトリックを見据えて言った。
「……半年前にお会いした時、私が言った話は嘘ではありません。ですが、私は敢えて公爵家の内情をお話ししました。姉が次期公爵になる道もまだある。それをお伝えすることで、パトリック様が最後の求婚を姉にしなくても済むのではないか。そう思ったからです。」
「うん。確かに、君と今ここにいるのはあのことがきっかけだな。」
サファイアの指輪を作ることにしたのだから。
「私は後になって気づきました。私がお伝えしたことは姉を選ばないのであれば、私を選べと言ったのと同じことではないか、と。」
「まあ、そうかもね?」
ルナセアラは、ただパトリックのことを案じてくれていただけなのだろう。
4度も求婚を断られ、それから半年間、姉ミルフィーナへの誘いがないということは、ミルフィーナへの5度目の求婚を悩んでいるのではないか、と。
その後押しになればいいのではないかと思い、姉には次期公爵になる道がまだあるとルナセアラは言いたかっただけなのだ。
「でも、姉の誕生日パーティーはもう注目の的になっていました。パトリック様はエメット公爵家の体面を気遣うあまり、姉か私、どちらかに求婚しなければならなくなったのではないですか?」
「確かにそうだ。5年間も大なり小なり噂されてきた両家なのに、5度目の求婚をしないままで終わるということを不満に思う貴族は多いだろうと思った。
受け入れられるにしても、断られるにしても、5度目の求婚はしなければならなかった。」
「……私は断った方がよかったのでしょうか。」
断れば、ミルフィーナではなくルナセアラでもない、別の令嬢と婚約することができた。
パトリックはそれを望んでいたのではないかとルナセアラは気にしているようだった。
「いや、君が受けてくれてよかったよ。
君が断っていれば、エメット公爵令嬢は2人して男を弄ぶ女だと言われただろう。そして僕は5度も断られるような欠陥のある男だと言われただろう。両家にとってそれは望ましくない。」
「あ……そうですね。」
「僕はね、ギリギリまで悩んでいた。どちらに求婚するか。2人の顔を見て決めたんだ。」
「顔?」
「ああ。ミルフィーナ嬢は安堵して笑顔を見せた。僕はその安堵が不快に感じた。求婚に来るかどうか不安に思っていたんだろう。なのに1年、彼女は何も行動しなかったのだから。」
「確かに、そうですね。」
「そして君は悲しそうに微笑んでいた。僕が姉に求婚することを悲しく思った。違うか?」
ルナセアラは驚いて固まっていた。
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